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銀の働き部屋

管理人銀河の、日記兼テキストサイトです。取り扱うジャンルは主にヤングガンガン連載のWORKING!!になると思います。最近は東方の霖之助小説を書くのにも夢中。どうかよろしくお願いします。リンクはフリーです。感想は常に受付中です!もらえたら泣いて喜びます

普通に・・・  佐藤×松本




 では、小説を更新したいと思いまーす。

 ブログのタイトルに、これからはカップリングとかも書いていこうと思います。時間があったら過去のも直していきまーす。
 
 というわけで、佐藤×松本という、初めてのカップリングにチャレンジです。入院中に書きあげました。
 なんかもう、携帯配信マンガとか、本家のらくがきとかを見る度に、「松本かわいいなあハアハア」とか言っていたので書いてみました(ぇぇ
 甘さは・・・微糖ということにしておきます。いちゃいちゃは全然してないです。
 佐藤さんがなんとなくタラシです。松本はなるべくイメージ通りに書いたつもりなんですが、どうなんだろう・・・。
 携帯配信マンガの後半部分のネタばれがほんの少しあるかもしれないので注意です。 
 ・・・というか、本当にヤングガンガンに載っている分しか見ていない人って、松本の存在を知らないのかな。どうなんだろ。
 何はともあれ、続きからでスタートです。文章能力低めで仕上がっているんだぜ。なのに長いんだぜ。ぐだぐだだぜ(ぇ


 小説、あとがきの更に次に拍手返信がありまーす。









 


 私の名前は松本麻耶。
 どこからどう見ても、ごくごく普通な女子高生。
 容姿、普通。
 家柄、普通。
 身体能力、普通。
 学力、普通。
 バイト先での地位、普通。
 その他、家のお小遣い額、部屋の装飾、流行に対する過敏度などなどなど・・・

 全てにおいて、普通。

 それが私、松本麻耶。

 将来の夢は、優しい旦那さんと結婚をして、子どもを産んで、白い家で犬を飼って暮らすこと。
 これほどはないというほど、普通。

 そう、ここまでの私の人生は、極めて普通の道のりを辿ってきている。
 普通に生きる。それが私の人生のモットーのようなものだ。
 しかし、ここまでの完璧な普通人生をぶち壊す恐れのある障害、それが私のバイト先、ワグナリアの従業員達だ。

 病的な小さい物好き、男嫌い、帯刀、大食い、住居=天井裏などなど・・・

 これほど普通な従業員が少ないファミレスは、全国・・・いや、世界をめぐったとしてもここだけであろう。
 そんなファミレスで、どういうことか私は働いてしまっている。
 すぐにでもこんなファミレス、辞めてしまいたいところであったのだが・・・。その、なんというか。実は何件かバイトの面接に失敗したあとの採用場所であったため、辞めてしまったらまたバイトができるかどうかという保証もないわけで。
それに、チーフなんかは私が皿を割ったりしてしまっても優しかったり、みんな結構気を遣ってくれたりで・・・辞めるタイミングを見失ってしまったというわけで。

 ・・・・・・・・・・・

 べ、別にこのファミレスで働くのを気にいってしまったわけではないわよ!? た、ただ、私は小鳥遊君みたいに殴られたり、音尾マネージャーみたいに斬りかかられたりするわけじゃないし、実害が無いなら耐えられると思ってバイトをしているだけよ!?
 そもそも、こんなに普通な私を落とす他のバイト面接官が悪いのよ! 私は自分がどれほど店に迷惑をかけない普通な人間かをアピールしただけなのに、しかめっ面で私を落として!
 だから、仕方なくこの場所で働いているの!
 絶対に、このバイトの面々と馴れ合ったりなんかしないんだから!

 だって私は、普通に生きて行くんですもの!!



「おーい。松本。隅っこで何ぶつぶつ言ってるんだ。キモいぞ」

キモくなんかありません!!

 背後から聞こえる抑揚の無い声に、私は目に涙を溜めながら振り返り、そう叫んだ。

「そうか・・・。そうだよな、お前にとって、キッチンの隅でぶつぶつ呪文を唱えるのは普通なことなんだよな。悪かった、松本。元気に、強く生きろよ」

「心の病気の人を見るような眼をやめてもらえませんかね・・・」

 声の主、佐藤さんは私の肩を叩き、まるで泣いているかのように目をもう片方の手の平でおさえていた。もちろん、泣いているわけがない。泣き顔どころか、笑顔すら見たことがないのに。

「確かに今は少し考え事していましたけど、私は普通です。そんな言い方はやめてください」

「えー。だってキモいしー」

「そういう言い方をやめてくださいって言ってるんです!!」

 私が怒り狂うように叫ぶと、フロアの方からチーフがひょっこりと顔を出した。

「麻耶ちゃん? そろそろあがってもいいわよー・・・って、ケンカ?」

「そんなんじゃねえよ。なあ。松本」

「は、はい。何でもありません・・・」

 私は、普段からお世話になっているチーフに余計な迷惑をかけたくなくて、そう答えた。悔しそうな表情が出てしまっていなかったかが心配だった。
 ・・・ついでにもう一つ理由を言うと、なんとなく、佐藤さんから謎の気迫を感じたような気もしたので、控えめに答えたのだが。

「じゃ、じゃあ私はあがりますね。ありがとうございました」

「おつかれー」

「お疲れ様」

 ねぎらいの挨拶・・・一人はねぎらっている感が零な気もするが、を背中で受け止めて、私は携帯電話を取りに休憩室に向かうことにした。
 これで、佐藤さんの言葉責めから逃れることができる。私は安堵の息を漏らした。

 が、

「あ、佐藤君も休憩時間じゃない? 相馬君と代わったら?」

「おう。そうするわ」

「え」

 二人の言葉を聞いて、私は思わず立ち止った。
 そんな私の様子を見て、八千代さんは不思議そうに首を傾げた。
 佐藤さんは・・・

「どうした松本。普通に立ち止まられると普通に休憩室に行けないんだが」

「うるさーい!!!」

 私はもう一度、キッチンで怒りの雄叫びをあげた。




 私は、佐藤さんが苦手だ。

 ついこの間までは、佐藤さんに対する苦手意識は強くなかった。
 確かに佐藤さんは、髪を染めていて、タバコもかなり吸うので素行がいい人物とは言えないかもしれない。しかし、他のはっきりとした変人達と比べるとずっとまともな性格で、私自身もバイトを始めた頃から色々なことで何回も世話になっている人だ。
 苦手になったきっかけはついこの間。種島さんのシフトが無く、佐藤さんが私をからかう標的とした時のことだ。

 佐藤さんは相馬さんと組んで私を様々な言葉で翻弄し、二人の言葉に私は大きく動揺してしまった。
 それからだ。佐藤さんが私に何かと話しかけるようになったのは。
 私は正直、怖い、というイメージがあったため以前から佐藤さんに話しかけることは少なかった。佐藤さんも、そんな私の考えを読みとっていたのか、面倒くさかっただけかは分からないが、私に自分から話しかけるということは殆ど無かった。
 種島さんが佐藤さんにからかわれている所は何回か目撃したことがある。
 その時は、種島さんが精神的に子どもだからあのように怒って抗議しているのだなあと思ったけど、それは違った。
 佐藤さんは、人をからかう達人だ。少なくとも、私はそう思う。
 佐藤さんは常に無表情で、決して言葉巧みなタイプの人間ではないはずなのだが、淡々とその口から出る言葉は人の弱点を的確に突き、神経を逆立てる。だからつい反論してしまうのだが、佐藤さんはその言葉すらをも自らの言葉の材料にし、次々に攻め立ててくる。気づけば、私は顔を真っ赤にして怒ってしまっているわけ。

 そんな苦手な人が、今、私の真後ろからついてきている。
 とはいっても、私が最初に休憩室に向かい始めたので当たり前のことなのだが。
 
 なんか、気まずい。

 とか思っているうちに、休憩室に着いた。私は扉を開けて中に入る。
 休憩室の中には、椅子に座ってコーヒーを飲んでいる相馬さんがいた。

「相馬。俺と交代だ」

 私を軽く押しのけるように佐藤さんが休憩室に入り、相馬さんに声をかける。
 相馬さんは私たちに微笑みながら、

「うん。そうだね。松本さんはもう上がり?」

 と、極めて穏やかな声で言った。

「は、はい。お疲れ様でした」

「おつかれー」

 相馬さんはそう言いながら立ち上がり、休憩室を出て行った。

 ・・・正直、私は相馬さんも苦手だ。
 何よりも、くさやの件をバラしてしまったのは相馬さんだし、ことあるごとに佐藤さんと組んで私をからかってくる。
 佐藤さん単体でも手ごわいが、そこに相馬さんの演技力が加わると、彼らは無敵のからかい戦士に進化してしまう。
 事実、私も何度騙されたことか・・・!!

「おい。松本。普通に何しに来たんだお前」

 いつの間にか椅子に座っている佐藤さんの声が聞こえて、私は改めて顔に青筋が浮かぶのを感じたが、もう今日のバイトも終わりなのだから耐え、テーブルの上の携帯電話を乱暴に取った。

「・・・じゃあ、今度こそお疲れ様でした」

「待てよ」

 背を向けて更衣室へ向かおうとする私を、佐藤さんが止めた。
 今度は何!? と私は苛立ちを隠さない顔で振り返った。

「コーヒー、飲むか?」

 テーブルの上で、中身の注がれたコーヒーカップを滑らすように私の方へ動かすと、佐藤さんは静かにそう言った。

 私は、表情を苛立ちから戸惑いへと変化させた。
 そんな私を見ても、佐藤さんは何も言わない。きっと、本当に単純な気遣いなんだろう。私がいらないと言っても、佐藤さんはそのコーヒーを自分で飲むであろうし、すぐに帰ってもよかったのだが・・・。

 ・・・・他人の純粋な気遣いを無碍にできるほど私は精神的に強い人間ではないわけで。

「・・・いただきます」

 椅子に座り、ありがたくコーヒーを頂戴することにした。




「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 き、気まずい。

 先ほどから数分間。聞こえてくるのはお互いがコーヒーを啜る音のみ。
 休憩室の窓は開いていて、そこからは車の音や虫の声が絶えず聞こえてくるのだが、そんな雑音程度ではこの場を乗り切ることはできない。
 私はこのように無駄な時間が流れている時に話題を振れるタイプの人間ではないし、それはきっと佐藤さんも同じであろう。
 この気まずい時間をどう過ごそうかと考え続けているが、何も浮かばない。
 コーヒーを早く飲んで帰ろうと思っても、熱々のコーヒーを飲み干すのには時間がかかるわけで。

 どうしようもない時間がしばらく続く。

「松本」

「はい?」

 予想していなかった、佐藤さんからの声かけ。
 ・・・いや、きっと話題を出すのではなく、この暇な時間を使って私をまたからかおうとしているに違いない。
 しかし、今なら大丈夫。コーヒーを飲んだことで、だいぶ精神的にも落ち着いてきた。今ならどんなにからかわれても、精神を乱すことなく耐えることができる。

 私は少し不敵な笑みを浮かべながら、佐藤さんの言葉を待った。

「お前さ。自分のこと普通って言ってるじゃん? ・・・お前の普通の基準って、何から来てるんだ?」

 ・・・・・ん?

「き、基準?」

「ああ。なんかお前、私は全てが普通って言っているだろ。たとえば、試験とかは?」

 ・・・・?
 ダメだ、いつもと感覚が違うから、スムーズに言葉が出てこない。
 これは・・・私をからかおうとしているのだろうか。いや、それにしてはなんだか違和感がある。
 とりあえず、質問には答えることにした。

「・・・平均点より少し上を取るように、頑張っています・・・」

「平均点ピッタシじゃねえんだ」

「へ、平均点丁度を目指すより、その少し上を目指す方が、結果的に平均点に近づくから・・・」

「へえ。意外と考えているんだな」

 佐藤さんは淡々と言葉を発しては、コーヒーを一口ずつ啜っている。
 私は、言葉をひとつひとつ交わすたびに、どんどん混乱の渦に巻き込まれているような感覚に陥った。
 な、何? 特に私の答えに文句を付けるわけでもなく、普通に会話が成り立っている?
 普通に言葉が成り立っていることに違和感を覚えるのもおかしいのだが、私と佐藤さんの関係は、それほどまでに希薄なものだ。からかいの言葉が存在しないだけで、私にとっては気味が悪い。
 先ほどよりも一層逃げ出したい気持ちが増している中、佐藤さんは私に問いかけを続ける。

「家柄も普通とか言ってたよな。それは?」

「ええ? えっと、父親の収入と、日本の家庭の平均収入を比較してます。あとは家系図に有名な人がいないかどうかの確認で・・・」

「よくそこまでやんなあ」

 佐藤さんは、またコーヒーを啜る。
 よくそこまでやんなあ、のあとにきっとからかいの言葉が飛び出す!と確信した私はしばらく待つ。
 しかし、佐藤さんはコーヒーカップをテーブルの上に置いて、何かを考えるように黙ったまま口を開かない。

 ・・・どうしよう。泣きたい。

「容姿は?」

「へ?」

 佐藤さんが、短く言葉を発した。その言葉をよく聞き取ることができず、私は間抜けな声を出した。

「容姿の普通ってのはどういう基準?」

 ・・・私は、言葉に詰まった。
 確かに、改めて考えてみると説明が難しい。人を見て、ちょっとあの人普通すぎるねー。という友達の言葉を聞いたことは何回もあるが、容姿の普通の正確な基準・・・と考えてみると、全く見当がつかない。
 佐藤さんをちらりと見る。佐藤さんは瞬きも殆どせずに私を見つめている。
 まずい。答えを待っている。
 私は何かいい表現が無いかと考えるが、思い浮かばない。有名人に例えたとしても、その人が普通か、可愛いか、醜いかの判断なんて人それぞれで明確な答えにはならない。

 どうしよう。

「あの・・・・」

「ん?」

 私は困り果てた声色で、佐藤さんに問いかけた。

「私の容姿、普通・・・ですよね?」

 少しだけ、顔に赤みがさしてしまったかもしれない。でも、こうでもしないと時間が永遠に流れてしまいそうに私は思っていた。
 佐藤さんは、顔をぴくりとも変化させずに、私を見つめている。

 何て・・・言われるのだろう。その言葉によっては、私は大きく傷つくかもしれない、と今更ながらに思った。
 普通、言われれば助かるけど、もし・・・普通以下と言われてしまったら、私でも少しは傷つく。
 そう言われたところですぐに改善することはできないし、それに・・・

男の人に、そう言われて傷つかない女などいるのだろうか。

私は、半ば自分の問いかけに後悔し始めていた。
 
 佐藤さんが、口を動かすのが見えた。


「いや、お前は可愛いだろ」






 ・・・はい?

「俺から見ればお前は可愛いよ」

 眉毛一つ動かさず、佐藤さんは淡々と言う。
 そんな佐藤さんとは正反対に、私の顔の熱はものすごい勢いで高まってきた。口も、震える。
 暑い。いや、熱い。今までの人生で味わったことのないような、不思議な感覚に汗が流れ始めているのを感じる。

「メガネ、取ってみ?」

「え・・・?」

「いいから」

 静かな、しかし、耳の中によく響く声で佐藤さんが言ったのを聞いて、私は指示通りに赤縁のメガネを外す。
 そのせいで、私の視界はぼやけてしまって、佐藤さんの様子をうかがうことができない。
 佐藤さんから次の指示が出るまでは何もできないので、私はただただメガネを外したまま、赤い顔をやや下に向けながら待っていた。

「うん。やっぱ可愛いな」

 耳に突然聞こえた言葉に、私は頭が破裂してしまうのではないか、と思ってしまうほど顔の熱が更に高まるのをはっきりと感じた。
 もう、限界だ。

 私はメガネを瞬時にかけ、半分ほど残っていたコーヒーを一気に飲み干した。
 口の中が火傷してしまったかもしれないが、この場に留まっているよりはマシだった。

 顔はまだ赤い。しかも、まだまだ元には戻りそうにない。

「お、おちゅ、お疲れ様でしたあっ!」

 ろれつも回らない口でそう言い・・・いや、叫び、私は椅子から立ちあがった。
 速足で休憩室の扉へと向かい、ドアノブに手をかけた。

「松本」

 ・・・!!
 今度は、何?
 振り向くこともできず、私の体は硬直していた。
 緊張のしすぎで、体が思うように動かない。口も、開けない。
 なのに、聴覚だけはしっかり働いているこの体が憎たらしく思えた。

「コンタクトにしたらどうだ? 似合うと思うけど」

 その言葉が耳に届いた瞬間、もはや恥ずかしく思う過程などぶっとばして、涙が出てきてしまいそうだった。
 顔の熱はもはや体全体まで及び、足も震えてきた。
 ドアノブを掴む手に全ての力を込めるが、なかなか手首が回らない。
 何秒かするとやっとドアノブが回って、扉が開いた。
 すぐにでも駆け出したい気分だったが、何かが心の中にひっかかる。
 足が、動かない。
 体の熱はひかないし、あと何秒かしたら目からは涙が零れてしまう。

 でも

 今までに体験したことが無いほどの勇気を振り絞って、私は振り返った。

 佐藤さんとしっかり目が合う。佐藤さんの表情は何一つ変わった所はない。

 深呼吸。
 ほんの少し心が落ち着いたような気がした瞬間、声を振り絞り、叫んだ。

「私は、普通です!!!」

 目からは涙が零れていたと思う。
 顔は赤いままだと思う。
 余計に、変な女と思われてしまうかもしれない。

 でも、

 自分の今までの生き方を裏切ることはやっぱりすぐにはできなかった。

「お疲れ様でした!!」

 最後にもう一度叫んでから、私は休憩室の扉を乱暴に閉めた。
 そして、一歩一歩床を踏みしめるように、更衣室へと向かって歩き出した。





「・・・やっぱ変な奴だな」

 佐藤は、テーブルの上のコーヒーを手に取り、残っている分を静かに飲み干した。
 濃いめに作ったコーヒーの苦みが口の中に広がる。昔はまずいと思ったコーヒーだが、今は飲むと心が落ち着くものとなっていた。
 コーヒーカップを置き、天井を眺める。

 何秒か経ったころ、佐藤は呟いた。

「・・・いや、俺も十分、変か」

 それから視線を通常の高さに戻し、顔を手で抑えた。それも、出来る限る強い力で。
 自分の暴走を、戒めるために。





 更衣室に、逃げ込むように入った私は、扉に背を付けて何回も深呼吸を繰り返した。
 体中の熱は未だにひいておらず、あまりにも深く呼吸を繰り返したため、胸が苦しい。

「何なのよ・・・! 何なのよあの人は・・・!」

 少し前・・・私のシフトが終わるまでは、いつもと変わらなかった。いつものように私は佐藤さんにからかわれ、おもちゃにされていた。
 なのに、休憩室で突然のあの会話。私の頭と体が状況についていけないのも無理は無い。

「・・・可愛くなんか・・・ないわよ・・・!」

 松本は、更衣室に設置されている鏡の前にゆっくりと歩みより、映った自分の顔を見つめた。
 やはり、顔が赤い。のぼせてしまったかのように顔全体が朱色に染まり、頬はまるで腫れているかのように真っ赤だ。
 こんな顔で佐藤さんと接していたのかと考えると、ますます恥ずかしい気持ちに襲われたが、今はなるべく考えないように首を振った。
 改めて、自分の顔を見る。

 ・・・・。
 しかし、長年連れ添ってきた自分の顔を見たところで、可愛いかどうかなど分からない。
 自分で普段から鏡を見る度に、可愛い、と呟くほどナルシストではない。
 だからといって、自分をもっと美しく見せるために特別な工夫をしているわけでもない。休日に出かける際に化粧を軽くする程度だ。

 だからこそ、私は普通だと思っていた。
 美しいとも、醜いとも思わない。だから、普通だと。
 なのに、

『いや、お前は可愛いだろ』

「!!」

 佐藤さんの言葉が脳内でリプレイされ、私は顔にみるみる熱が集まるのを再び感じた。

 どうかしている。私も、佐藤さんも。

 なんで、突然あんなことを言い出したのだろうか。
 新しいからかい方だろうか。それにしたって、性質が悪すぎる。

 あんな言い方は、反則だ。

 男の人に、可愛いと面と向かって言われたことなんか無かったのに。
 それどころか、男の人と二人きりで話をしたことすらあまり無いのに。

『コンタクトにしたらどうだ? 似合うと思うけど』

 再び、脳内で佐藤さんの言葉が再生された。
 やはり、顔の熱は高まる。
 私は、鏡の前でメガネを外してみた。

 佐藤さんの顔は見えなくても、これだけ近くならば自分の顔くらい見ることができる。
 やはり鏡に映るのは、何千回と自ら目にしてきた己の顔。
 今日まで、何の特徴も無いと思っていた、私。

「・・・コンタクトか・・・」

 考えたことがないわけではなかった。
 コンタクトをするのが普通じゃないと思ったことはない。でも、メガネの方がより凡人に見えると思って私はメガネをかけていた。
 思えば、そんな軽い理由だった。
 でも・・・

「・・・買おうかな。コンタクト」

 ボソっと呟く。顔には、自然と微笑みが浮かんでいた。
 ・・・・・・・・・・
 しかし、数秒後にハッと我にかえって首を激しく振った。

「何言ってるのよ私! どうせからかっているだけよ。そうよ、きっとそう」

 言葉に出して、自分を説得する。
 まじめに捉えたところで恥をかくだけだ。どうせ、コンタクトで来たりなんかしたらまんまとしてきたと馬鹿にされる。

「・・・そうに、決まってるわ」

 自分で言葉に出してそう考えると、悲しい気持ちが押し寄せてくるのがはっきりとわかった。
 何故、ここまで悲しい気分になってくるのか。それは考えなくてもすぐに分かった。

 私は、嬉しかったんだ。
 可愛いと言われて、嬉しかった。
 普通じゃないと言われたのに、嬉しかった。
私は、そんな自分が分からくなってきた。あれだけ普通にこだわっていたのに、男の人に少しそんなことを言われて浮かれている自分が。

「・・・どうしちゃったんだろ。私」

 何分も鏡を見つめながら、私は考えた。
 なかなか考えがまとまらず、考え込んでいると佐藤さんの言葉が脳内に蘇る。その度に顔を赤くする。
 そんなことを、繰り返しながら。

 どれくらい考えても。何回考えても。

 顔の熱は、ひきそうにはなかった。






 数日後。

「よお、松本。今日は・・・」

 従業員専用通路からキッチンへと入ってきた松本を見て、佐藤は言葉を失った。
 松本は、メガネをかけていなかった。普段は厚めのメガネの奥に隠れてしまっている瞳が露出している。
 とはいっても、堂々としたいでたちではなく、どこか恥ずかしそうにキッチンに入り、佐藤の横を歩いて通り過ぎようとしている。

「・・・コンタクト、か」

 唖然としたように佐藤が言うと、松本はその場で止まった。

「ね、値引き中だったので試しに買っただけですからね」

 松本はますます恥ずかしそうに、佐藤と視線を合わせずにそう言った。

(・・・なんだ。これがツンデレってやつか?)

 そんなことを考えた佐藤だが、松本をしばらく見つめてから一言。

「やっぱそっちの方が可愛いな」

 その言葉を聞いて、松本は顔を以前のように赤くした。
 しかし、今回は前回のように大きな動揺も見せずに、佐藤と視線を合わせた。
 そして、

「ありがとうございます」

 微笑みながら、そうお礼を言った。

 その顔は、佐藤ですら思わず見惚れるほど、美しいものだった。

(・・・どこが、普通だよ)

 佐藤はそんなことを心の中で呟いた。





 松本麻耶は、可愛いと言われて嬉しく思ったことを、自分が生きてきた道に反すると感じた。
 しかし、落ち着いて考えてみれば、それは変なことなんかではない。
 そもそも、佐藤一人が可愛いといったところで、その人の容姿の良さが全て決まるわけではない。あくまで、佐藤の感想なのだから。

 ましてや、可愛いと言われて悩むなんてことは間違っている。

 嬉しいと思うのが、当たり前。嬉しいと思う方が、普通なのだ。

 松本麻耶は、女の子なのだから。

 女の子が、男の人に可愛いと言われて喜ぶのは、普通なこと。

 そのことに松本麻耶が気付いたかどうかは分からない。

 でも、松本は少し変わった。

 一人の男の言葉で少し変わった。

 ・・・・まあ、要はこういうことだ。

 松本麻耶、18歳は、普通に恋に落ちた。

 極めて普通に、ね。








 あとがき

 松本のおっぱいが大好きだああああああああああああああ!!!(ぇぇぇ
 はい。とりあえず水着最高、と言う言葉を辞世の句にしたいと思います(待

 それは冗談として、こんな感じです。イメージとしては、佐藤さんは別に松本に惚れてるわけじゃなくて、松本が普通普通うるさいので少し苛立って、容姿の可愛さを指摘した、というイメージです。俺の中では。
 松本は魅力のあるキャラクターなのに、男性の相方がいなくてさみしいなあと思い書いてみました。どうでしょうか。あんがいこういうのも悪くないなあと思うのですが。
 松本はツンデレを標準装備していると思うんだ(何
 次はどんなのを書きたいかなあ。誕生日ネタとかも書いてみたいけど、本編でやりそうだしなあいつか。難しいな。
 思いついたらチャレンジしてみます。実家にいるうちにもう一つくらい書きたいな・・・。





 拍手返信

>相川さんへ
 また会えましたねー!お久しぶりです。いつも拝見してくれて本当にありがたいです!
 残念ながらキングダムハーツもペルソナも未プレイなのでネタは分かりませんが、女の子っぽい男って腹が立つよね!(アビスのイオンとか
 じ、自転車で岩手・・・?奇跡的な天運があれば会えますよきっと。まず顔知りませんけどね(ぁ

 これからもよろしくお願いします!では~


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コメント

このコメントは管理人のみ閲覧できます
2009-08-24 Mon 15:12 | | [ 編集 ]
この延長戦で松本さんと佐藤さんと八千代の三角関係的なものが読みたいです!


松本さんが可愛すぎる。
2009-08-24 Mon 22:24 | URL | 蛍火メイ [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2009-08-28 Fri 20:24 | | [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2009-09-12 Sat 00:37 | | [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2009-09-12 Sat 20:36 | | [ 編集 ]

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