銀の働き部屋

管理人銀河の、日記兼テキストサイトです。取り扱うジャンルは主にヤングガンガン連載のWORKING!!になると思います。最近は東方の霖之助小説を書くのにも夢中。どうかよろしくお願いします。リンクはフリーです。感想は常に受付中です!もらえたら泣いて喜びます

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

スポンサー広告 |

惚れたのが、あとの祭 佐藤×八千代


 

 佐藤×八千代小説を更新したいと思います!!
 設定は、今回も前回の小鳥遊×伊波小説と同じく祭です。一応同じ祭、ってつもりで書いてましたけど、別に大したリンクはしてないです。んで、季節を意識しないで書いてたんですが、今回は夏祭りっぽい雰囲気が漂っているので、夏祭りということで。
 タイトルは、「惚れたのが、あとの祭り」です。超適当。10秒で考えた。
 甘さは・・・微糖です。相変わらず全然いちゃいちゃしてないです。いちゃいちゃしたの書くの恥ずかしくて・・・!!
 
 それでは、続きからでどうぞ!!

 んで、小説のあとにコメント返信もあります!!!












 祭の喧騒は、昔から・・・嫌いじゃなかった。

 どこかで祭・・・いや、それに関わらず、バカ騒ぎがあるならダチを誘ってどこにでもいった。
 実際、そういうバカ騒ぎってのは本当に楽しかった。生きてる。って感じがしたしな。
 世の中、生きがいとは何かってのを訴えている学者や思想者は大勢いるんだろうが・・・そんなの、俺ならば2行で答えられる。

 俺の生きがい。
 気の許せる奴と、一緒に過ごすこと。
 轟八千代。俺の大好きな女性の、笑顔が見られること。

 それさえあれば、俺は生きていると実感することができる。

 ・・・少し、話が逸れたか。

 まあ、とにかく。俺は祭は嫌いではない。
 だが、二十歳にもなってしまうと、わざわざ祭を見に行こう、とダチを誘うことは無くなってしまった。
 俺は特段、それを悲しいこととは思わない。
 それが、成長すること。大人になることってのは少し前から気づいていたからだ。

 だから、今の俺の横には誰もいない。
 祭囃子が響き、太鼓の音が大気を揺らすこの場所に、俺は一人だ。

 そのせいだというのは分かっている。一人だからだ、ということくらいは、分かっている。
 それでも、あえて言わせてもらいたい。

 一人で見る祭ってのは、酷く退屈だ。



「・・・帰るか」

 人で溢れかえる、北海道某所の祭。
 山車が通り、神輿が揺れ動き、可憐な装いに身を包んだ踊り子達が舞いを踊る。
 そんな光景を、数十分ほど、人々の往来の激しい道端で眺めていた。
 が、話し相手もいないまま、ずっとここで祭を眺めているのも悲しいな。そう思った瞬間、一気に俺の中で熱が冷めていくのがわかった。

 俺は寄りかかっていた電柱から背中を離し、人が作り出している壁の後ろを歩き始めた。
 タバコでも吸おうかとポケットに手を入れたが、人が多く、子どもも多く走りまわっているこの場所でタバコを吸うのはまずいな、と、ポケットに入れた手を出すことはなく、そのまま歩き続けた。

 今日は、地元の祭が行われている日だった。
 現在の時刻は、夜の7時を少し回ったところ。
 まだ夜はこれから、という時間だが、既に祭は盛り上がりのピークを迎え、俺が祭を見学し始めた30分ほど前より、確実に人は多くなっていた。

 そもそも、俺はここに祭を見に来たわけではない。
 更に言えば、この場所に来る予定すら無かった。
 祭の音が聞こえて、「ああ。今日は祭か」とか思いながら、晩飯を作ろうとした。そしたら、食材が無くなっていることに気付いた。
 眠る気にもならねえし、腹も減っていた。
 出前でもとろうかとも考えたんだが、どうせだったら買い出しの途中で必然と通ることになる通りで行われている祭でも見てこよう。暇つぶしに。

 そう考えたのが、今から1時間ほど前。
 そして俺は買い出しを終え、帰り道にこの通りでしばしの間祭を見学していた、ってわけだ。

 何回も言うように、祭は嫌いではない。
 柄でもない、と言われるのも仕方が無いかもしれないが、人が多くにぎやかな場所も嫌いではないし、祭囃子の音をうるさい、と思うほど心も荒んでいない。
 屋台で売っている雑な味付けのたこ焼き・焼きそば・焼き鳥の類などはむしろ大好きだ。

 だが、今までの祭の楽しさは、傍に誰かがいたことが大きかったんだな、と思い知った。
 全く楽しめなかったわけではないが、どんな些細な感情でもぶつける相手がいない、というのはなかなかに堪える。
 辺り一帯が、友人と談笑をしたり、親子で笑いあって祭を見学していたり、恋人同士で愛を語り合っているこの場所だと、なおさらだ。

(吉田でも、誘うべきだったか・・・? いや、もしかしたら彼女と来てるかもしれねえしな。邪魔はできねえか。足立も・・・同じだな)

 バンド仲間の顔が次々に浮かんでくるが、奴らは俺とは違う存在なんだ、と気づき、一気に気分が沈んできた。
 仲間の幸せも祝えない、心の狭い男と思ってもらっても構わない。
 ・・・別にいいだろ。それくらい。

(ま、暇つぶしにはなったな)

 そんなことを考えながら、人混みをかき分けて歩き続ける。
 背が高いおかげで苦しくはないが、流石に少しめんどうくさいな。種島に言ったら怒りそうだ。よし、次会った時に言うか。

 ふと、紺色の浴衣が目についた。
 その浴衣を身に纏った女性は、少しうつむきがちに俺の正面からこちらへと歩いてきている。
 流れるような美しいブロンドの髪を、頭の後ろで結っている。その姿は、誰から見ても可憐で・・・思わず溜息をついてしまうような、美しいものだった。俺が、思わず溜息をついてしまったのだから間違いない。

 何よりその女性を特徴づけるもの。
 それは、腰に帯刀をしている。ということだ。

「・・・八千代」

「ふぇっ?」

 俺と八千代の距離が1mほどまで近づいたところで、俺は少しためらいがちにだが、声をかけた。
 すると、うつむいていた八千代は間抜けな声を出しながら顔を上げ、俺の顔を認識すると、みるみる内に顔色を明るくしていく。

「佐藤君!! 佐藤君も来ていたのね!?」

「・・・ああ。お前も来てたんだな。・・・そんな浴衣まで着て」

 俺が少し目をそむけがちに言うと、八千代は顔を真っ赤に染めて、もじもじと指先をいじりだした。ああもう。全てが可愛いなこいつは。

「へ、変でしょ? 両親が、知り合いの和服屋から頂いたらしいんだけど・・・。折角だから、着て行けって、殆ど無理矢理・・・」

 そういうことか。と思いながら、さっきから何回俺は八千代の浴衣姿を注視しているのだろう。
 はたからみたら、いやらしく見えてしまっているだろうか? 情けなく見えてしまっているだろうか。
 構うもんか。
 こんな可愛い八千代を見られるなら、それくらいの恥くらいいくらでもかぶってやる。

「変ってことは無いだろ。似合ってる」

 俺は何を言っているんだ。と自分で自分をつっこみたいところだが・・・仕方が無い。本能がそう言ってしまったのだから仕方が無い。
 それに、ほら。俺がこう一言言うだけで、こいつはこんなにも顔を明るくさせて喜んでくれる。

「ほ、本当? 良かった・・・。さっきから、人の視線が集まっている気がして、居心地が悪くて・・・」

 ・・・ああ。そりゃあそうだろうな。
 こんなにも美人で可愛らしい八千代がこのような可愛らしい浴衣に身を纏っていれば、男ならば誰でも見てしまう。仕方ない。許す。それは許すぞ周りの男ども。
 ・・・いや、まあ・・・一番見られている原因は、絶対に刀だろうけどな。

「・・・来い」

「え?」

 俺とこうして話している間にも、周りの人々の視線は八千代・・・いや、正しくは八千代の腰に差さっている刀へと注がれている。
 このままでは、下手をしたら警察を呼ばれてしまうかもしれない。まだ呼ばれていないのは、祭の催し事とでも思われているからだろうか。
 俺は八千代を人気の少ない場所へと連れて行こうと、そう声をかけ、歩き始めた。

 が、

「ま、待って佐藤君!」

 そんな悲痛な声が聞こえて、俺は瞬時に振り向く。その速さたるやプロボクサーも真っ青。な気がする。
 八千代は普段着慣れていない浴衣を着ているということもあって、歩行速度が普段以上に遅いようだ。それに、人混みにも巻き込まれてしまって、手を上げて俺に助けを求めていた。

「・・・大丈夫か」

 八千代の傍へと歩みより、俺はそう声をかけた。
 目に少し涙を溜めこみながら、八千代は俺を見上げた。本当、人混みが苦手なんだな、こいつ。

「佐藤君、歩くの速い・・・」

「・・・悪かった。じゃ、ゆっくり・・・」

 八千代が、手を俺に差し伸べていた。



 うん。

 なにこれ。

「・・・飴なら、もってねえけど」

「そうじゃなくて。手、繋ぎましょう?」

 ・・・・・・・・・・・

 ・・・いやあ。

 無理だろう。

「馬鹿なこと言ってんな。行くぞ」

 俺は半分青ざめながら無理矢理歩き出そうとするが、八千代が俺の服をつまみ、それを制止する。

「だって、人怖いし・・・。手を繋げば、絶対にはぐれないでしょ?」

 にこっ。と、祭の明かりにも負けないほど眩しい笑顔を浮かべる八千代を見て、俺は色々と呼吸が苦しくなってきた。あれ。何だろう。胃も痛いぞ? なにこれびょうき?
 こんな笑顔の八千代の頼みを無碍にすることが、俺なんぞにできるわけもなく。
 俺は、顔が赤くなっているのがばれないよう、極力八千代を見ないように、八千代の手を握った。

 八千代の手の柔らかい感触、そして温もりが、俺の手の平全体に広がる。
 俺達の関係は、周りの人々からはどう見えているのだろうか。
 ただの友達、と思っている奴は何人いるのだろうか。

 手を握ったあと、八千代に目を向ける。すると、八千代も少し恥ずかしいのか、少し頬を朱に染めながら首をかしげた。
 そんな八千代と、はっきりと繋がっている手を見るだけで頭が沸騰するような異様な高揚感に俺は見舞われて、何も考えず、半ば八千代を引っ張るように歩き始めた。

 ああ。畜生。

 祭見に来て、よかった。





「・・・ここなら、人も少ないだろ」

 石の階段を登り終えた俺は、辺りを見回してからそう呟いた。
 八千代は、浴衣を着ているため何回も階段に躓きかけていたが、その度に俺が支えてやると、いちいち礼を言ってきて気恥ずかしかった。

 俺が八千代を連れてきた場所、それは神社だ。
 本来、階段の下の通りで行われている祭はこの神社を奉るために行われているもののはずだ。確か。なにせ祭の由来を聞いたのなんか、小学生辺りの頃なので詳しくは覚えていない。
 この神社は、祭のそもそもの由来であるにも関わらず、人気は全く無く、明かりも灯ってはいなかった。ただ、祭の明かりがこの神社まで届いていて、真っ暗で何も見えないということもない。
 もちろん、関係者がここにきて参拝や準備などは行っていたのだろうが・・・
 まあ、人々の目的はあくまで祭、であって、この神社ではないのだから当然か。

「ほら八千代。人が少なくなるまで、ここで時間潰すぞ」

「ええ。ありがとう、佐藤君」

 俺の大好きな笑顔で礼を言う八千代。その笑顔が見られただけで、異様な幸福感が胸に満ちてきた。
 気づいたら、まだ手が繋ぎっぱなしだった。
 はっきりと繋がっている手を見ていると急激に恥ずかしさが再沸してきて、ゆっくりと俺は繋いだ手を離した。
 すると、八千代も少し申し訳なさそうに、ゆっくりと手を離し、手を下ろした。

 ほんのわずかな時間、気まずい空気が流れる。

「あー・・・。賽銭箱の前にでも座るか」

 そう声をかけると、八千代はこくんと頷いた。
 俺は賽銭箱の前まで歩き、その前の階段に腰を下ろした。
 八千代も、浴衣姿だったので少し大変そうだったが、ゆっくりと腰を下ろし、俺の隣に並んで座った。

「・・・まあ、祭もそろそろ終わりだろ。あと1時間もしない内に、人はだいぶ減るはずだ。そしたら送るよ。俺の家近いし」

「うん。ありがとうね。佐藤君」

 八千代に礼を言われて気恥ずかしくなった、それと二人きりという空間に負けそうになってしまって、俺はタバコを取り出し、火を点けて口にくわえた。
 これだけで気が静まるとは思えなかっが、ないよりはマシだろう。もちろん、煙を吐き出す時は八千代にかからぬように八千代とは反対側に吐いた。

「・・・一人でなんて、珍しいな。店長でも誘ってるもんだとばかり思ってた」

 素朴な疑問を投げかけると、八千代は明らかに悲しそうな表情を浮かべて、俯いてしまった。
 悪いことを聞いただろうか? と思い、何か言おうとすると、その前に八千代が口を開いた。

「杏子さん、今日お仕事が入っちゃったらしくて・・・。もちろん、誘ったんだけど・・・」

 心の底から悲しそうに話す八千代を見て、やはり、悪いことを聞いてしまった。と俺は後悔したが、所詮あとの祭。やべー。俺今超上手いこと言ってる。

「・・・まあ、たこ焼きとか焼き鳥とか買ってけば、きっと喜んでくれるだろ。あまり気にすんなよ」

 俺は精いっぱいの励ましを送ったが、八千代の表情が晴れる様子は無い。
 まあ、当然か。八千代にとっては、店長の存在が全てなんだ。俺ではない。だから、俺の言葉で気が晴れることなんかあるはずもない。

 胸が痛い。

 が、ここで俺が黙るわけには。
それだけは、絶対にできねえ。

「いじいじすんな」

 どんよりと表情を曇らせている八千代の頭に、蝿が死ぬかどうかも怪しいほどのかる~いチョップをくらわせる。
 いたっ。と小さく言うと、八千代は大して痛くもないだろうに、頭をすりすりとさすった。

「いつもお前は些細なことを気にしすぎなんだよ。もう少し自信持て」

「で、でも・・・私、自分に自信が持てるところなんて無いもの」

 頭を擦っていた手を膝の上に置くと、八千代は目に涙を溜めこみ、今にも泣きだしてしまいそうな震えた声を絞り出した。そんな八千代を、俺はただじっと見つめた。
 八千代は俺の顔に一瞬目をやると、またうつむいて話し始めた。

「今日だって、本当はこんな格好で来たくなかったけれど、親を悲しませたくなかったから結局来て。でも、やっぱり人混みは苦手で・・・恥ずかしくて。だから、佐藤君に会えた時、凄く嬉しかった。でも、やっぱり佐藤君は優しいから、また佐藤君に迷惑かけて・・・気を遣わせて・・・」

 八千代は・・・泣いていた。
 店長がいないこともあって、精神が不安定なんだろうな。と、俺は推測した。なに、珍しいことではない。前にも何度かあったしな。こういうこと。
 俺は、自分でも驚くほど冷静だった。目の前で八千代が泣きぐずっているのに、表情一つ変えなかった。
 何故だろうか。

 呆れていたからだ。

「とうっ」

「いたいっ!」

 八千代の頭に、今度は蝿くらいなら殺せそうな力で再びチョップをくらわせる。八千代は同じように声を出すと、困惑した様子で俺を見つめた。もちろん、目には大量の涙を浮かべながら。

「いじいじすんな」

「でも・・・」

 溜息を一つ、つく。

「なあ。八千代。俺は店長じゃねえ。だから、お前を一発で慰められるような言葉も持ってねえ。だから、ぐだぐだと長く言うぞ」

 八千代が反応すらできないほどの早口で捲し立て、俺は深呼吸をする。
 そして、口を開いた。

「俺はお前のいいところを山ほど知ってる。だから、それを言ってやる。まず、接客が上手い。流石チーフってだけあって、どんな客もお前に接客されるだけで夢心地だ。そしてお前は笑顔が最高に綺麗だ。お前の笑顔を見るだけで、どんな悩みも吹っ飛びそうになる。あと、本当に人に気遣いができるよな。お前一人で店が回っている、と言っても過言ではない。家事も・・・話を聞く限り完璧だし、声もすげえよく通る。髪もすげえ綺麗だし、ついでに言うとお前ほど浴衣が似合う人間を見たことがねえ。あと・・・」

「さ、ささ佐藤君っ!!」

 俺が一旦息継ぎをして、更に言葉を並べようとすると、顔をかつてないほど真っ赤に染め上げ、口もわなわなと震わせた八千代が、俺の名前を呼んだ。

「・・・あと、昔の髪型もすげえ似合ってた。もうお前と接していて、お前に嫌なイメージを抱いた覚えが無い。それから」

「きゃあああ!! も、もうやめて佐藤君っ!!」

 八千代は今にも爆発しそうなほどに顔を赤くし、慌てて俺の言葉を大声で遮った。
 言われた通り、俺は話すのをやめて、八千代をじーっと見つめる。
 よほど恥ずかしかったのか。下を向いて、八千代は何回も何回も深呼吸を繰り返していた。
 正常に戻るには時間がかかりそうだ。と思った俺は、また口を開く。

「な? 俺だけでも、こんだけお前のいい所を挙げられるんだ。それはな、お前にそれだけの魅力があるってことなんだよ。そして、断言する。こう思っているのは俺だけじゃない。小鳥遊も相馬も種島も伊波も山田も松本も。ついでに音尾のおっさんも。そして何より、店長もだ。みんながみんな、お前のいい所を知っている。そして、お前もあいつらのいい所を知っている。だろ?」

 俺が極力ゆっくり、諭すように言うと、少しは顔の熱もおさまったのか、八千代は深く一度頷いた。

「取り柄がないとか言うな。お前がそんなこと言ったら、俺らが馬鹿みたいじゃねえか」

 更に言うと、八千代はまた頷いた。熱は、だいぶ引いたらしいな。

「・・・あー。それとさ。一人で来るのが嫌だったら・・・俺に、試しに連絡してみてくれりゃ、良かったじゃん?」

 この言葉は八千代の顔を見ながら言うことはできず、俺は顔を正面に運び、いまいちはっきりさせずに言った。
 え。と八千代が小さく声を漏らしたのが聞こえた。
 緊張しているのがばれないように、小さく、深呼吸。なんじゃそりゃ。

「・・・俺達、友達だろ?」

 胸が痛むことはない。
 だって、事実だから。
 俺と八千代の、大事な今の関係だから。

「・・・うん」

 涙の跡は消えていないが、普段のあの笑顔を浮かべて、八千代は答えた。
 良かった。俺は心の底から安堵して、火を点けっぱなしだったタバコをくわえようとしたが、もうすっかり灰になってしまっていて、携帯灰皿を取り出した。

「・・・ま、俺もお前に誘いのメールも送らなかったからおあいこだな」

 携帯灰皿を開き、その中にタバコを落とす。
 とりあえず、言いたいことは言えたな。と、タバコをもう一本取り出そうとする。

「ねえ、佐藤君」

「あ?」

 突然名前を呼ばれて、ぶっきらぼうに俺は答えた。

「私も、佐藤君のいいところいっぱい知ってるわよ?」


 あ。

 まずい気がする。


「いや、八千代。あれはさ」

「佐藤君だって、凄い周りに気遣いができているわ? ぽぷらちゃんだって、きっと佐藤君にはいつも感謝しているわよ。いつだってまじめに仕事しているし、佐藤君がいるからキッチンのことは私達も心配しなくて済むのよ? 私のノロケも、いつも嫌な顔一つせず聞いてくれるし、いつだって私を見てくれている。だから、さっきあんなに私のことをほめられたのよね?」

「・・・おい、八千代」

 熱い。熱い。熱い。
 顔が熱い。むしろ全身が熱い。なるほど、八千代もさっきこんな感じだったのか。いや、確実に俺の方が熱い。断言できる。
 恥ずかしさのあまり名前を呼ぶだけで精いっぱいだったが、やはり八千代は口を閉じることはなかった。因果応報ってやつか。自業自得でも可? てゆーか満身創痍? だって痛いもの。頭も胃も。

「ぽぷらちゃんのことを車で送ってあげたこともあるし、杏子さんにもいつも料理を作ってくれて。そして何より・・・」

 もうどうにでもしてくれ、と半ばあきらめ気味に聞いていると、八千代は言葉を切り、俺を見た。
 俺も、赤い顔がばれないようにと祈りながら、八千代と視線を合わせる。
 目線が合ったことを確認すると、八千代は再び口を開いた。

「私の、友達。初めての、友達」

 俺の大好きな笑顔を浮かべながら、本当に、本当に嬉しそうに・・・八千代はそう言った。
 思わず俺は目を見開いたが、すぐに正面を向き、タバコに火を点け口にくわえる。
 そして、月明かりに照らされ白く輝く煙を吐き出しながら、答えた。

「ああ。もちろんだ」

 気恥ずかしくて、八千代の顔を見ることはできない。
 でも、分かる。どんな顔をしているのかは。

 タバコをまたくわえた瞬間、空が赤く輝いた。
 直後、巨大な爆音が境内に響き渡る。

「花火!」

「ああ。花火だ」

 俺が口を開く前に、八千代が喜びに満ち溢れた様子で叫んだ。
 それに賛同し、俺も空に咲き誇る花火に思わず目を奪われた。

「綺麗・・・! 佐藤君! 大きいわ!」

「そういや、今年から花火やるとかチラシに書いていた気もするな。なかなか立派なもんだ」

 俺と八千代が話している間にも、空には次々と花火が打ち上げられ、真っ黒な空に色とりどりの模様をつける。
 花火の音は大きかったが、八千代の声はしっかりと聞きとることができた。そしてそれは、たぶん八千代も一緒だ。
 ・・・こういうのを、なんていうんだっけな。ああそうだ。カクテルパーティー現象だか効果ってやつだ。確か。

「・・・私、祭に来てよかった」

「そうか」

「佐藤君にも会えたし、こうやって、佐藤君と花火を見ることもできた」

「・・・そうだな」

「佐藤君は、祭に来てよかった?」

 八千代が、俺に顔を向けて尋ねる。
 俺は、タバコを吸いながら、ぼんやりと思考を巡らせた。


 そもそも、祭を見るために出かけたわけではない。
 あくまで、買い出しがメイン。祭は、それのおまけ。暇つぶしでしかなかった。
 そして、その祭の内容自体も、一人で見ていたこともあってイマイチに感じられた。正直、家でもっと有意義に時間をつぶすことだってできただろう。

 が。

 答えは一つ。

「ああ。久々に、いい祭だった」

 八千代と目を合わせながら、俺はそう答えた。出来る限り、穏やかな声で。
 花火の明かりの照らされながら、八千代は満面の笑みを浮かべた。

(・・・あー)

 再び空に目を向ける。
 花火といえばこれ。というような円形の花火が、空一面を覆い尽くし、この神社を照らしている。

 タバコの煙を、また吐きだす。
 煙は様々な色で染まり、どこか芸術的に見えた。

(来年も、また見れるかな)


 浴衣を着た八千代と、この場所で。
 




 俺と八千代。
 二人で過ごす祭は、時が経つのも惜しいほど、楽しかった。

 生きてた。
 俺は、この祭に来ている間・・・最高に、生き生きとしていた。
 だって、生きがいだもんな。

 気の許せる奴と一緒に過ごすこと。
 八千代の、笑顔。
 この二つさえあれば、俺は生きていける。

 うん。

 やっぱ、祭は誰かと見るのが一番だわな。

 というわけで。

 俺は祭が大好き、です。









 あとがき

 いかがだったでしょうか。八千代に、浴衣着せてみました。小説だと伝わらないのが非常に残念です。
 佐藤さんは、やっぱり八千代の初めてのお友達なので、お友達なので(待、八千代のいい遊び相手になってほしいよなあ。とか考えながらこういうのを書いてみました。
 佐藤さんの独白なので非常に書きやすかったです。そして、佐藤さんを混乱させるのは楽しい。
 祭っていいですよね。俺大好きです。なんで祭で食べる焼き鳥はあんなに美味いのだろうか。
 夏に帰って、地元の祭に行くのが少し楽しみ。
 そんなわけで、あまりあとがきらしいこと書いてないけど、銀河でした。










 コメント返信です!!
 文字を反転させてお読みください!!


>シノ丸さんへ

 どうも初めまして!! 替え歌の感想、ありがとうございます!!
 裏表ラバーズは本当に大好きな曲なので、楽しんで作ることができました。替え歌っていいですよね。
 陰から応援せんといて! 堂々と応援したって! 喜ぶから! 恥ずかしくなるくらい喜ぶから!(ぇ
 小鳥遊×伊波小説も頑張ります!! まだ何も考えてないけどな!!!!(待
 コメントありがとうございました。これからもよろしくお願いします!!




 コメント感謝感謝です!! それでは!!
スポンサーサイト
佐藤×八千代 | コメント:2 | トラックバック:0 |
<<なずなが欲しい。  ※20000Hitに向けての企画説明有り ※コメント返信追加!! | ホーム | ・・・ごぱっ。>>

コメント

こんばんは♪
さとやち更新待ってましたー!
2人とも大好きです^^
手を繋いだり、お互い褒めあうさとやち…可愛いですね!
浴衣姿の八千代さん…絶対可愛い…!!
そんな八千代さんを見かけたら、女の私もじっと見ちゃいますよ!
許して下さい佐藤さん(笑)
佐藤さん、来年も八千代さんとお祭り行けるといいですね…今度は自分から誘って!積極的に!
頑張れ佐藤さん!

DVD、春菜さん出たんですね!^^
松本のカットまで…!
キャラクターコメンタリーも楽しそうですね。
榊さん…!ぜひオマケで猫組メンバー見たいなぁと思ってるんですが、無理ですよねきっと…。
猫組もちらっとで良いから出ればいいのに…。
特にミリっち…普通に客として映れば良いのにと思ってます。
常にマフラーで制服姿の変なお客さん(笑)
DVD、私は金欠で買えないんですよ…すごく欲しいんですけど。
全巻揃えられなくても、せめて4巻の山田登場回を買いたいんですけどね…;(ドラマCDも山田ですし)
羨ましいです…!

つい長々と語ってしまいましたが、この辺で。
更新楽しみに待ってます^^
2010-06-04 Fri 20:42 | URL | 澪 [ 編集 ]
こんばんはー。


佐藤さん可愛いよ佐藤さん。なにこれ。そして八千代さんの浴衣とか絶対似合う。特に浴衣に刀は絶対合う(そこか


友達、ってのがさみしいような嬉しいような………とりあえず何だかんだと毎年一緒にお祭り行けばいいと思います!



DVDは買うだけ買ってまだ見れてないです………コメンタリーさとやち。友人に感想だけ聞いたので早く聞きたいです。



2010-06-05 Sat 23:16 | URL | 蛍火メイ [ 編集 ]

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

| ホーム |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。