銀の働き部屋

管理人銀河の、日記兼テキストサイトです。取り扱うジャンルは主にヤングガンガン連載のWORKING!!になると思います。最近は東方の霖之助小説を書くのにも夢中。どうかよろしくお願いします。リンクはフリーです。感想は常に受付中です!もらえたら泣いて喜びます

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二人の距離、幸せな距離  足立×村主  黒麒麟さんリクエスト小説





 少し時間はかかりましたが、黒麒麟さんリクエストの足立×村主小説が完成したので載せようと思います。
 タイトルは、「二人の距離、幸せな距離」です。適当ですごめんなさい。
 甘さはかなりあります。MAXコーヒーくらい甘いです(分かりにくいわ

 リクエスト内容は、『デート中に残りのバンド仲間(佐藤・吉田)と遭遇した二人』です!

 それでは、続きからでどうぞ!!


 そして、小説のあとがきの更に下にコメント返信があります!!







 




「・・・ねえ、村主さん」

「なにかしら。足立君」

 ワグナリアのキッチン。客もたいして来ることのないこのレストランのバイト達は、基本暇なことが多い。
 だから私は、今日もいつもと同じように足立君をからかいに・・・こほん。恋人同士として友好を深めていた。
 私が冷え切った手を彼の頬にくっつけてその反応をうかがった直後、足立君は少し青ざめた顔で私に尋ねてきた。それにしても、いつも顔色悪いけど・・・しっかり食べているのかしら。足立君。

「・・・俺と一緒にいて、楽しい・・・かな?」

 彼は、少し申し訳なさそうに。そして物凄く言いづらそうに私にそう尋ねてきた。

 私は、返事の変わりに冷え切った手を足立君の首にくっつけた。
 すると彼はまるで女の子みたいな甲高い悲鳴を上げてから、その目に涙を浮かべた。
 この涙は、冷たさのあまりに出た涙なのかしら。それとも、返事がもらえなかったから出た涙なのかしら。

「足立君? 女の子に話を振る時、世間一般でその話題は絶対NGとされている言葉なのよ?」

「え!? そ、そうなの?」

 ますます顔を青ざめさせながら足立君は驚いた。
 そして、何かを考えながら空中を仰ぎ見る。きっと、謝ろうとしているのね。

「謝らなくていいわよ。足立君がそんなに気の利く人間じゃないってことくらい、分かっているもの」

 私が言葉を投げかけると、足立君はとことん申し訳なさそうに大きな溜息を吐いた。
 そんな彼が面白くて、私は思わず笑みを浮かべた。もちろん、足立君には分からないくらい小さな微笑みを。
 
「・・・それで、さっきの質問なんだけど」

 私は足立君の耳の裏をゆっくりと撫であげた。
 冷たい手で敏感な部分を触られたせいか、足立君は声にもならないような声を出して、さっきよりは少し顔色をよくしながら、私の顔を見つめた。

「・・・あなたが考えなさい」

「え」

 私はそうとだけ告げると、フロアで適当な仕事をこなすためにキッチンをあとにした。
 振り返りもしなかったから、足立君がどんな顔をしていたか分からない。

 ああ。でも。これだけで。
 たったこれだけで。

 いつの間にか強く握りしめていた手を、ゆっくりと開く。
 自分でも認めるほどの冷たい手は、ほんのりと赤く温まっていた。





「ごめんなさい足立君。重くないかしら?」

「全然平気。でも、女の子には少し重いかもね」

「・・・店で一番女の子っぽい足立君にそんなことを言われるなんて、なんだか情けないわ」

「ぽい、でしょ!? 俺男だからね!?」

 私が買った画材道具を両手からぶら下げながらも、足立君は律義に私にツッコんだ。
 そんな足立君の反応を耳で楽しみながら、私はこの街の中を歩いていた。

 今日は、足立君とのデート。
 ・・・とはいっても、私が画材道具を買いに行くので、荷物持ちを手伝ってほしい、と頼んだだけだから、デートと呼べるのかどうかも怪しいのだけれど。
 まあ、一応恋人同士である私達が二人だけで出かけるのだから、デートと言っても誰も文句は言わないと思う。たぶん。
 それに。
 荷物持ちという面倒くさい仕事を押し付けられているにも関わらず、足立君は嬉しそうに承諾してくれた。
 ・・・だから、これはきっとデートなんだ。
 そう、思うことにする。

「どうかした? 村主さん」

「何でもないわ。さて、もう少しでお昼だし、どこかに寄っていきましょうか。私が奢るわ」

「え!? いや、俺が奢るよ」

「私の買い物に付き合ってもらったんだから、私が払うのは当然じゃない?」

「いや、いやでも! デートの時は男が奢るもんだ! って吉田が・・・」

 その言葉を聞いた瞬間、私は思わず目を見開いた。
 足立君は、「あれ、たしかそういう風に・・・」と、友人に言われた言葉を思い出す作業の真っ最中のようだった。
 ・・・ああ。そうか。
 やっぱり、デートだって思ってくれてたんだ。

「・・・分かったわ。デートだものね。足立君にしっかり払ってもらうわ」

 私がわざとらしく溜息を吐いたふりをすると、足立君は少し戸惑いながらも、やはり嬉しそうに頷いた。
 ・・・お金を払うのが、好きなのかしら。
 だとしたら、進藤君に幾らか分けてあげればいいのに。

「・・・ところで」

「何?」

 ふと疑問に思ったことを、足立君にぶつけてみる。

「吉田、って・・・誰? 私の知っている人?」

 首を傾げながら聞くと、足立君は押し黙ってしまった。
 荷物を持った手で頭を抑えながら、ふうーと深く溜息。
 ・・・何故かしら。異様に腹が立つわ。

「・・・何? 何か言いたいことでもあるの?」

「い、いや。そうじゃなくてさ。あのー・・・吉田っていうのは」

 足立君が言いづらそうに口を開く。
 すると、

「あっるぇー!? 足立じゃねえ!?」

 私の背後から、大きな声が響いてきた。
 その声を聞いた瞬間、足立君が肩をびくっと震わせたのが分かった。
 様子のおかしい足立君が少し気になりながらも、後ろを振り向く。
 そこにいたのは。

「・・・赤井君?」

「はい?」

 記憶を辿り彼の名前を呼ぶと、赤井君はそのような間抜けな声を出した。耳にひっかけているドラムスティックが、ぴょこ、と小さく揺れた。
 彼は、私に名前を呼ばれてからしばらく考え込む。
 ・・・見えないけど、足立君が凄く困っている気がする。振り返って見ておいた方がいい気がするわ。面白そうだもの。

「あかい・・・ああ!! 赤いね! いやー、いい色でしょ!? いきなり足立の彼女にあだ名つけてもらえるなんて! 佐藤! お前もなんかつけてもらえって!」

 髪を触りながら、早口でまくしたてるように言うと、赤井君は少し後ろから歩いてきた金髪の男の人に声をかけた。早口すぎて、あまり聞き取れなかったのだけど。
 金髪の男の人・・・大きい。進藤君以上に背の高いその人はゆっくりと歩いてきて、私の目の前まで来ると横の赤井君の頭を叩いた。

「いってえ! 何するんだよ佐藤! お前最近、俺を叩くのがライフワークになってね!?」

「いいなあそのライフワーク。バイトより楽そうだ。お前が金を出すなら、な」

 面倒くさそうに赤井君に言うと、金髪の男の人はポケットから煙草を取り出して、慣れた動きで煙草を一本取り出して口にくわえた。
 金髪。
 煙草。
 足立君や赤井君は絶対に着そうにない、雑誌で見るような少し着崩したファッション。
 鋭く・・・見えなくもない、目つき。

 もしかして、ヤンキー・・・という人種なのかしら。

「・・・あ。煙草、吸って大丈夫?」

 ・・・そんなことも無いみたい。

「はい。外ですし、気にしないでください」

「ありがと」

 煙草に火を点けながら礼を言うと、金髪の人は煙草の煙を吸い込み、吐きだした。・・・当たり前のように、私にかからないように横側に。更に言えば、後ろから来る歩行者までをもしっかりと確認して。

「あー・・・村主さん。よし・・・ごほん。髪の赤いのは会ってるよね。こっちの金髪の人は、佐藤。俺と吉田の友達。・・・というか、バンド仲間」

「よろしく」

 煙草を指で挟みながら、佐藤君は頭を軽く下げた。
 ・・・見た目は悪そうだけど、凄い、いい人な気がする。少なくとも、妃より何倍も。
 ・・・あと、直感なんだけど。
 足立君と同じくらい、苦労してそうな気がする。

「よろしくお願いします。足立君の・・・恋人、でいいのかしら。足立君?」

 首を傾げながら足立君に尋ねると、大方の予想通り、足立君は酷く驚いていた。

「え!? い、いや・・・そりゃ、いいんじゃない?」

「・・・そ。足立君は、私が恋人でも友達でもどっちでもいいと思ってるわけね。分かったわ。荷物、重たくないかしら?」

「佐藤! 俺の彼女の村主さん!」

 私が言葉を言い切るか否か、というタイミングで足立君は少し青ざめた顔で、私を紹介した。
 ・・・自分でそう言うように誘導したのはいいものの。
 ・・・言われると、少し恥ずかしい。

「・・・ああ。この子が。・・・本当に、彼女できたんだな」

 佐藤君は少し沈んだ声で言って、溜息を吐いた。
溜息の理由が分からずに、私は首を傾げた。

「二人共、遊ぶって言ってたのこの辺りだったんだ」

「おお。ゲーセンでも行こうと思ってさ! 俺のドラマニテクニック、村主ちゃんにも見せてあげたいなあ。あと、佐藤のギタフリテクニックも! 足立もやってみろよ! 楽しいぜ!」

 赤井君が興奮しながら・・・と言っても、私が見る限りこの人はいつも興奮しっぱなしな気がするのだけど。興奮しながら足立君に言った。
 
「だから、恥ずかしいからやだって。大体俺ベースだし・・・」

「それもそうかー。ベースのゲームって、何でねえんだろうな? 佐藤」

「知らん」

「何だよつれねえなー。音ゲー大好きなくせに。凄いんだぜ村主ちゃん! こいつ、直立不動で一番難易度高いステージクリアできるんだぜ!」

 煙草の煙を吐き出しながら無愛想に応える佐藤君。
 そんな佐藤さんを嘆きつつも、手を激しく動かし、ゲームの楽しさを伝えようとする赤井君。
 そして、そんな二人を見ながら明るく笑う、足立君。

 ・・・私、なんだかおいてけぼりね。

「あ。んでさ足立。俺らこれから飯にする予定だったんだけど、良かったらお前らも一緒にどうよ? いいよな佐藤!」

「・・・いや、俺は構わないけど」

 佐藤君は少しためらったように言って、私に一瞬だけ目を向ける。
 ・・・ああ、気遣ってくれているんだ。と、私はすぐに理解した。

「・・・どうする? 村主さん?」

 おそるおそる、という表現がぴったりな様子で、足立君が私に問いかける。
 私の答えによって、お昼に起こる出来事は大きく変わるのだろう。

 考えた。少しだけ。

 そして、

「一緒に食べましょう」

 淡々と私が言うと、足立君は笑った。
 その笑みがどういう意味のものなのか分からなかった。でも、きっと足立君は赤井君や佐藤君と一緒に、ご飯を食べたかったのだと思う。
 ・・・念のため言っておくけど、私は嫉妬はしていない。もちろん、彼女を置き去りに友達とばかり話されても嫌だけど、足立君はそんな人じゃないってことくらい分かるもの。
 私にだって、友達はいる。そして、その友達と食事をする時だってある。
 その時は、本当に・・・楽しいもの。

「よっしゃ! じゃあどこで食う? いっそのこと足立の職場とか!? あ、村主ちゃんの店でもあんのか!」

 それとも佐藤の!? と赤井君が言うと、佐藤君が素早く赤井君を叩いた。
 ・・・流石、お友達ね。うちのお店だと誰かしら。佐藤君的なポジションは。
 ・・・東田君? いや、東田君よりは何倍も人情味がありそう・・・。
 考えても意味のないことだと気づいて、そこで私は考えるのをやめた。

「それは少し気まずいし、他のチェーン店にしようよ」

「・・・そうだな。じゃ、俺の車で行くか。一番近い場所でもちょっと遠いしな。ここまで車持ってくるから、待っててくれ」

「おーう。佐藤、行ってらー」

 ぶんぶんとゆるみきったシャツの袖を振りながら言う赤井君を、佐藤君はそのシャツの襟を掴んで引き摺り始めた。

「ぐえ! 佐藤! 何すんのさ! のびるのびる! ますますのびちゃう!」

「・・・少しは空気読め、馬鹿」

 首がしまって苦しいのか、余裕の無い声で赤井君が叫ぶ。それに対して佐藤君が何かを言ったようだが、その小さな声は流石に聞きとることができなかった。

 取り残された、私と足立君。とはいっても、すぐにあの二人は戻ってくるのだろうけれど。
 足立君は騒ぎながら歩いて行く二人を見て、苦笑を浮かべていた。

「・・・本当、面白い人ね。赤井君は」

「・・・ま、まあね。退屈はしないよ」

 ・・・赤井君の話をすると、必ず足立君が申し訳なさそうな表情を浮かべるのは何故なのかしら。

「佐藤君は・・・無口な人だけど、とてもいい人ね」

「そうだね。ああ見えていい奴なんだ。本人は、そう言うと怒るけどね」

 照れてるんだよ。と朗らかに笑いながら言う足立君。
 ・・・やっぱり、友達を褒められるのは嬉しいものよね。

「・・・誘われてたの?」

「え?」

 少し間をおいてからそう尋ねると、足立君は意外そうな声を出した。

「足立君最初に、『遊ぶって言ってたの、この辺』とかなんとか、言っていたわよ? ということは、あの二人が今日どこかで遊ぶ予定だった、ってことは知っていたわけよね?」

「・・・うん。そうだけど」

 どこまでも不思議そうに、足立君は首を傾げた。

「ということは、足立君も誘われていたわけでしょ? ・・・何で、断ったの?」

「・・・何でって」

 足立君は両手の荷物を少しだけ持ち上げて、当たり前のようにこう言ってみせた。

「村主さんと約束したのが先だったから、だよ」

 何かいけなかったかな? と足立君はまた首を傾げた。
 そんな足立君を、ただただ、見つめた。
 しばらく見つめていると、足立君は照れたように目線を逸らし、頬をぽりぽりと掻き始めた。

 ・・・ああ、もう。

「・・・よく、恥ずかしげもなく・・・」

「え? 何?」

「何でもないわよ」

 私はなるべく感情を表に出さないように言った。
 足立君は、自分が何か変なことを言ったか・・・と考え始めたようだ。
 ・・・何も、変なことなんか言っていないのに。
 おかしいのは、私のほうなのに。

 しばらく待っていると、助手席に赤井君を乗せた佐藤君の車が、私達の前に停まった。





「さあー!! ご飯も一通り食べたことだし! 『お年頃! 青年少女のウフフトーク大会!!』でも始めようかね!!」

 食べ終わった食事の食器を店員が運んで行ったのを見届けた瞬間、赤井君は大きな声でそんなことを言い始めた。

「うるせえ」

「ほっ! 一日に何発も叩かれてたまるかげぼおっ!!

 素早くチョップを繰り出す佐藤君。そしてそのチョップを両手で器用に受け止める赤井君。そして直後もう片方の手で鳩尾を殴られる赤井君。なにこれおもしろい。

「ふっ。流石・・・佐藤。俺から教えることはもう・・・何も・・・ない」

 がくっ。とその場に項垂れる赤井君。そんな赤井君の頬に佐藤君の鋭い平手打ちが飛んだ。
 快音が響き渡ると同時に赤井君が跳ね起きる。

いってえなにこれ予想外!! 少しはノれよ!! しぃぃぃしょおおおおおお!! とか夕日の前で俺を抱えながら言えよ!!

俺の真っ赤に燃えた手でお前を張り倒せと轟き叫んだんでな。俺の心が」

「うっわぁーいノリがいいのか悪いのかわっかんねー! ふ。ならば、流派!! 東方不敗は!!」

「悪い。そこは忘れた

「やっぱお前ノリ悪い!!」

 うわーん!! と冗談抜きで涙を流しながら叫ぶ赤井君。
 店の中は空いているとはいえ、ここまで大騒ぎできるのはもはや一つの才能かしら。
 佐藤君は、赤井君を鬱陶しく思っているように見えるけど、赤井君の一つ一つの行動にしっかり言葉なり拳なりでツッコミを入れている。凄いコンビネーション。
 私の隣に座る足立君に目をやる。
 足立君は、苦笑を浮かべながらも、そんな二人の掛け合いを楽しそうに見つめていた。

 ・・・そうか。

 気の許せる友達といる時、足立君はこんな顔をするんだ。

「ん? どうかした? 村主さん」

「なんでもないわ。・・・仲、いいんですね」

 私の視線に気づいた足立君に、気遣い無用の声をかけ、私は赤井君と佐藤君へそう声をかける。
 すると、赤井君は「そーお!?」と嬉しそうに笑い、佐藤君はどこか不機嫌そうに眉をひそめた。

「いやー! 俺ら仲いいってさ! これからもよろしくな佐藤!」

「なあ。足立。俺今本探しているんだよ。『友達との縁の切り方』って本なんだけど、どこに売っているか知らね?」

「なっ! 佐藤、お前そんな悩みを・・・俺でよかったら相談に乗るぜ!!」

 赤井君が目に涙を溜めながら佐藤君の肩を掴み、叫ぶ。すると佐藤君はテーブルに置かれている胡椒を紙ナプキンに振りかけ、赤井君の顔面にそれを叩きつけた。

「ブゴッホお!! なにこれ辛い!! ちなみにこれは「からい」とも「つらい」の両方の読み方が成立する! 足立! これって夢!?」

「現実だよ」

「だよなあ!? めっちゃ鼻と目に・・・ぶえっしょい!!」

 ・・・本当。見ていて飽きない。
 正直、最初はそこまで乗り気じゃなかったお食事会だけど。この光景を見ただけで、来てよかった、と純粋に思えてきた。

「あー。ごめんね村主さん。・・・赤井、うるさいでしょ?」

 私に耳打ちするかのように謝る足立君に、私は首を横に振って答えた。
 すると足立君は意外そうに目を見開いた。

「とっても楽しいわ。赤井君も佐藤君も」

「お。面白いってよ佐藤! よし! 一発芸だ!」

「よーし見せてやろう。人の頭に直に刺して作る爪楊枝タワーだ」

「ぎっやー!! 痛い痛い!! 刺さってる! 血が出てる! あ、でも血が出ても髪が赤いから分かんない! 足立! この髪便利!!

「そうか」

 私からしてみれば物凄い惨劇が繰り広げられているのだけれど、足立君は落ち着いた様子でそう答えた。

 ・・・足立君は、こんな面白い人達に囲まれているのに、何であんなにおどおどした性格なのかしら。と、私は疑問に感じた。
 この人達と一緒に過ごすだけで、とても明るい性格になれそう。私ですら、そう感じるような二人の掛け合いだったから。

「いやー。それにしてもさ。足立もやるよな! こんな可愛い彼女を作るなんて! なあ佐藤!」

「・・・まあ、な」

 頭を紙ナプキンで拭きながら・・・ああ。赤いわ。紙ナプキンが赤い。赤井君は言い、佐藤君は私に一度視線を送り、それを逸らしてから答えた。
 足立君を横目で見る。その表情は、困惑しているように見えた。

「まあ、足立にずっと彼女がいなかったわけじゃないけどさ! 正直、足立がそんなにモテるのは意外だよな佐藤!」

「・・・まあ。というか、何故お前は俺に毎回意見を求めるんだ」

「独り身のお前に、俺達のトークがどう聞こえているか気になってぎゃあああ目がああああ!!」

 胡椒を直接目に振りかけられた赤井君がその場で悶え苦しむ。

「どうだ。目が痛くて、何も見えないだろう? これが・・・・・・『バルス』だ」

「違う!! 天空の城みたいな神秘が零だもの! 粉だもの!!

 大泣き・・・精神的ではなく、物理的に大泣きしながら叫ぶ赤井君。というか、この店の人はそろそろ苦情の一つでも言いに来た方がいいと思うのだけれど。
 無残な赤井君を見かねたのか、足立君が佐藤君に声をかけた。

「佐藤。あまりやりすぎるなよ。店の人に迷惑だ」

「・・・すまん。足立」

「足立、お前、悪意が無いから一番辛辣だわ。ねえ村主ちゃん。俺を慰めて。今慰められたら好きになっちゃうと思うけど

「とっても面白いから、がんばって?」

「うわあこれが胸キュン!! でもごめん! 俺にはユイちゃんがいるんだ!!」

 顔を赤らめながら、「きゃっ!」と喜ぶ赤井君に、佐藤君と足立君の冷たい視線が飛ぶ。
 でも私は、そういう気分にはなれなかった。
 とことん、面白い人だな。と感心しっぱなしだったから。

「・・・で、話戻すけど。どういう経緯で付き合うことになったの!?」

 髪と同じくらい赤い目を輝かせながら投げかけられた質問に、足立君が明らかに動揺したのが視界の端に映った。
 足立君は私に何度も視線を送りながら、何を言えばいいのか考えているようだった。

「え、いや・・・そんなのは、あとで幾らでも話すから」

 青ざめながら答える足立君を見て、思わず溜息が漏れる。

「そう。足立君は、私と付き合うことになった経緯を話したくないのね。そうよね。ろくでもない経緯だものね」

「ち、違う! そうじゃないよ村主さん!」

「おうおう。とっとと話せよ幸せお寿司

「お寿司!? 屋をせめてつけようよ! いや、屋付いてても間違いだけど! 寿司ネタになっちゃから屋付けないと!」

「じゃあ、幸せガリ

「ランク下がったぞ!?」

 普段仕事場では絶対に見れないであろう切れの良さで二人にツッコむ足立君。
 こういう、足立君の新しい一面を見れたことも、今日の収穫ね。

 一通りツッコみを終え、息を荒くしながらも、足立君は私と付き合うことになった経緯を思い出していた。

「経緯・・・・・・・・・。・・・村主さんが、笑った・・・から?」

 自分の記憶を辿った結果、そこに行き着いたのか、足立君は首を傾げながらそう答えた。

 ああ。

 そういえば、そうだったわね。

「え!? まあ、聞きました佐藤!? 彼女の笑顔に癒されて、好きになっちゃったのですって!!」

「ええ。聞きましたわよ。リア充爆発しろっ☆

「爆発しないよ!? っていうか、リア充って何!?」

「リア充とは何か。か。リア充とは・・・爆発しなければならない者。だ」

「ち、違う!! リア充の意味は知らないけれど絶対に本来の意味じゃない!!」

 声はひたすらに沈んでいるのに、どこか生き生きした様子で答える佐藤君に、足立君は全力でツッコミを入れる。

 そんな彼らを見ながら。私は足立君と付き合うことになった経緯を思い出していた。

 私が笑ったら、足立君は最初、もの凄く動揺していた。
 でも、足立君は私の笑顔を受け入れてくれた。

 多分。その頃からだろう。

 私が、足立君に少しずつ惹かれるようになったのは。

 私が氷を背中に入れると、本当に面白くリアクションを取ってくれる足立君。
 冷たさに耐えながら、私の体を気遣ってくれる足立君。
 いつもいつもおどおどしていて、空気もあまり読めなくて、とっさの反応が最低で。

 ・・・何で、惚れたのかしら。

「でも、村主ちゃん全然笑わないよなあ。ね! 笑ってみてよ!!」

「ばっ・・・!! やめろ! よし・・・赤井!!」

「何でー!? はっはーん。なるほど。彼女の笑顔は俺だけのもの、ってわけか。どう思いますか? 解説の佐藤さん」

「そうですねえ。死ねば、いいんじゃないですかね

「どうした佐藤いつものことながら!! 何でお前は恋愛が絡むと壊れちゃうの!?」

 私の、笑顔。
 ・・・。

 そうか。

 そうなのかも、しれない。

「ええ」

 私が呟くと、大笑いしていた赤井君も、死んだ目で嫌味を並べていた佐藤君も、顔を紫色にしながら大声でツッコんでいた足立君も、ぴたっと静まり返った。
 少しテーブルに乗り出していた足立君の袖を、きゅっと握る。

「私の笑顔は、足立君だけのものよ」

 足立君の目を見つめながら、私は答えた。
 何秒間か、沈黙が訪れた。赤井君が絶対に訪れないように頑張っていた、沈黙が。
 足立君の顔色が、紫色から赤色へ変わっていく。

「・・・熱々だな」

 佐藤君が煙草を取り出し、火を点けながらそう呟いた。
 そして赤井君は、目をキラキラ輝かせながら、面白そうに私と足立君を見つめている。

「え・・・あ。その、えっと・・・」

 ゆっくりと腰を下ろしながら、足立君はますます顔を赤くさせながら言葉を探し始めた。

 私は、そんな足立君から目を逸らし、すっかりぬるくなったコーヒーをゆっくり啜る。

 ・・・というか、正直、見れなかった。

 今、足立君を見てしまったら、私はどうにかなってしまいそうな気がしたから。

「・・・ごめんなさい」

 私は席から立ち上がり、トイレへ向かった。
 この、火照った頬を冷ますために。
 この、熱く警鐘を鳴らしっぱなしの心臓を静めるために。

 もちろん、足立君。そして、赤井君と佐藤君の顔を見ることなんか・・・できるはずもなかった。





「・・・いい子じゃねえか」

「ああ! ま、ユイちゃんほどじゃねえけどな!

 煙草の煙を天井へ吐きだしながら、佐藤は言う。
 それに賛同するかのように、吉田も笑顔で言った。

 言われている足立といえば、手を後頭部へ置きながら、テーブルへ突っ伏していた。
 恐らくは、その真っ赤になってしまった顔を隠すために。

「・・・ま、どういう経緯で付き合うことになったのか。詳細は、後で聞くけどよ」

 佐藤は煙草の灰を、灰皿へ落とす。
 それからもう一度、煙草を吸う。煙を肺へ運ばせ、再び吐きだす。
 そして、足立を見据えながらこう言った。

「・・・あの子、お前のこと、大好きなんだな」

 佐藤には、はっきりと見えていた。
 トイレへ向かう村主の顔に、確かな赤みが差していたのを。
 足立へ声をかける佐藤の顔には、ほんのわずかな笑みが浮かんでいた。
 友人の幸せを喜ぶ。そんな、笑みが。
 人の恋愛話を聞けば、死ねや爆発しろや世界滅びろとか、色々と言いはするものの。
 結局、こういう人間だった。佐藤潤という人間は。

「ああ。んで、お前はどうなんだよ! 足立!」

 このこの! と指で足立のつむじを突きながら、吉田は尋ねた。
 足立は、しばらくは突っ伏したままだった。
 何秒、経っただろうか。
 ようやく顔を上げる。大方の予想通り、その顔は真っ赤であったが、ゆっくりと口を開き、絞り出すようにこう言った。

「・・・大好き、だよ」

 言うと、吉田はますます目を輝かせ頷き、佐藤は静かに一回頷いた。

「結婚式には呼んでくれ。ありったけの妬み爆弾を作って行くから

「な、何の話だよ! ていうか妬み爆弾って何!?」

「俺も、知らん。でも、なんとなくわかることは・・・粘着質だと思う

「ど、どうコメントすればいいんだ!? これは話膨らませなきゃ駄目!?」

 佐藤のボケにツッコんでいる内に、真っ赤だった足立の顔もだいぶ肌色を取り戻していた。

「あーあ。見せつけられちゃったなー」

 言いながら、ソファーに背中を預ける吉田。
 そのまま、何かを考えるように、「うーん」と唸り声を上げ続ける。
 そして。

「よし。俺達は車へ帰ろうぜ佐藤」

「ん?」

「は?」

 吉田が佐藤を見ながら、言う。
 そんな言葉が予想外だったのか、佐藤は何も言わなかった。そして足立も、突然の提案に素っ頓狂な声が口から漏れてしまった。
 足立からは見えないよう、吉田はウィンクで合図を送る。

気持ち悪っ

ひどっ!!

 眉を顰めながら言う佐藤であったが、小さく笑みを浮かべると煙草の火を消し、立ち上がった。

「・・・ほい。これ俺と吉田の分」

 財布を取り出し、その中から千円札を二枚取り出し、足立に渡す。
 足立は状況を飲み込めないまま、そのお金を受け取った。

「え!佐藤奢ってくれるの!? 超嬉しいんですけど!

「後で払えよ。ハンバーグ定食+ドリンクバーで870円」

「うっわーい!! このA型めー!!

 涙を溜めながら言い、吉田も立ち上がった。
 そこで、状況をようやく理解できた足立が慌てて二人を制止する。

「ま、待て! 何でだよ! 村主さんが帰ってきてから一緒に出ようよ!」

 その顔は、必死、という言葉がぴったりな表情で、思わず吉田は笑ってしまった。

「いいっていいって。彼女に何か言ってやれよ。んじゃ!」

 のほほんとした声でそう言うと、佐藤と吉田はすぐにレジへ向かってしまった。
 その後ろ姿に何か声をかけようとしたが、言葉が出なくて、結局、佐藤と吉田は足立の視界から去ってしまった。

「・・・何か、って・・・」

 はあ。と溜息をついてテーブルへ再び突っ伏してしまう足立。
 そんな、時だった。

「・・・佐藤君と、赤井君は?」

 『彼女』の声が聞こえて、足立は体を大きく震わせた。





 私が体の熱を静めてから席へ戻ると、そこにいたのは、テーブルへ突っ伏している足立君だけだった。
 きょろきょろとあたりを見回すけれど、佐藤君と赤井君の姿は見えない。
 仕方が無いので、足立君に声をかけることにする。

「・・・佐藤君と、赤井君は?」

 すると、足立君は大きく体を震わせた。
 ・・・なんか、失礼。

「むっ!? 村主さん! お、おかえり」

 顔を上げる足立君。その顔は、紫色に見えた。こういう時の足立君は相当追い詰められている、と相場が決まっている。

「・・・なにかあったの?」

「い、いや。あの二人は先に車へ戻ってるって」

「・・・そう」

 そっけなく答えると、足立君はひたすら慌てながら、「俺達も出なきゃ!!」とか、「お金は、俺が出すから!」などと言っている。

 店を先に出る、と言ったのが佐藤君か赤井君かは分からなかったけれど。

 ・・・ありがとう。

「もう少ししてからで、いいんじゃない?」

 言いながら私は、自分の席・・・つまり、足立君の隣にゆっくりと腰を下ろした。
 すると、足立君は予想していなかったのか何も言わずにただ私を見た。

「・・・私と話すの、嫌?」

 首を傾げながら尋ねると、激しく首を横に振って足立君は答えてくれた。
 そう。と頷いて、残っていたコーヒーを飲み干す。底に沈んだ砂糖がやたらに甘かった。

「・・・さっき、言ったこと。本当だからね」

 コーヒーも飲んで、心を更に静めたところでそう切り出す。
 すると、足立君は紫色の顔の赤味をやや強くしながら、頬をぽりぽりと書いて、言葉を探している。

 どんなことを、言われるのだろう。
 正直、不安だった。

 今は多少慣れてくれたとはいえ、始めて私の笑顔を見た時は、あんなにも動揺していた。
 だから、迷惑と思っているかもしれない。あんなことを言われても。
 否定が怖くて、カップを握る手に力が入った。

 私は答えを求めている。でも同時に、答えを聞きたくないとも思っていた。
 矛盾した考えが、頭の中で交差している。分かりやすく言えば、こんがらがっていた。

 何秒、経ったのだろうか。もしかしたら、数分かもしれない。


 足立君が、ゆっくりと口を開いた。


「嬉しいよ」


 恥ずかしそうに、短い言葉が彼の口から紡ぎだされる。
 思わず、足立君の顔に顔を向けた。

 数十㎝にも満たない距離にある、足立君の顔には少しだけ赤味が差していた。
 でも、確かな笑顔を浮かべながら、彼は言ってくれた。

 『嬉しいよ』と。

「俺、最初は・・・村主さんのこと、よく分からない人だと思っていた。あまり、考えが表情に出ないし、何を話せばいいかも分からなかったし」

 話す言葉を一つ一つ探しながら、足立君は言う。
 何も言わずに、足立君の顔を見つめる。
 その言葉を、一言一句聞き逃さないために。

「でも、仲良くなってから・・・俺、村主さんのこと、もっとよく知りたいと思ったんだ。初めて笑顔を見た時も、驚きながら、村主さんのことが頭から離れなくなっていた。今思えば、あの時に、きっともう好きになってたんだ」

 好き、という言葉が聞こえた瞬間、心臓が大きく高鳴った。

「・・・その後、色々と失礼なことを言ってしまって。村主さんのお見舞いに行って。そして、告白して。付き合うことになって。あの時、不安もあったけど、俺はすっごく嬉しかったんだよ。村主さんに、否定されなくて」

 目を、見開いた。

 否定されるのが怖かったのは、足立君も一緒だったんだ。
 私は、今になって初めて、そんな当たり前のことに気がついた。

「・・・だから、今日村主さんにああ言って貰えて・・・凄く、嬉しかった」

 話し終わり、笑顔を浮かべる。
 その顔は、最初は赤味が少し差しているだけだったのに、真っ赤に染まっていた。

 ・・・恥ずかしいなら、そんなこと言わなければいいのに。

 でも、そんな彼をみっともないとは思わなかった。

 何故なら。

 私も同じくらい、顔が真っ赤なのが分かっていたから。

「・・・馬鹿」

 小さく呟いて、彼の肩に頭を寄せた。
 少しだけ足立君が方を震わせたのが分かったけど、彼はやっぱり、私を否定することはなかった。
 大きくて、温かい肩が心地よくて、私は思わず目を閉じた。
 顔は赤くて、熱いままだったけど。心は落ち着いていた。

「・・・ねえ。足立君」

「何?」

 見えないけど、きっと私と同じ・・・いえ、彼ならきっと私以上ね。顔を真っ赤にしながら、彼は聞き返した。

 ゆっくりと、深呼吸。

 それから、口を開いた。

「告白のあと、もう一つ、大きな出来事あったじゃない?」

「え?」

「・・・私の家に、あなたが来た時」

 そこまで言わせないでよ。と恨みながら言う。
 足立君はしばらく考え込んでいたようだが、理解したのか、頭に感じる彼の熱が高まったのが分かった。

「・・・もう、一度」

 言おうとしたが、恥ずかしさのあまり言葉が出てこない。
 
 伝えたい。

 もう一度・・・してほしい。と。

 でも、言えない。

 恥ずかしさで死んでしまうのではないか。と思い始めた時、足立君が私の顔を触った。

 急のことに驚いて、思わず目を開ける。
 すると、足立君の手が私の顔を彼の顔へと向けさせた。

 近い。

 距離は、恐らく30センチも無い。
 予想通り、真っ赤な彼の顔がすぐ目の前にあった。

 ああ。

 分かって、くれたんだ。


 足立君の顔がゆっくりと近づいてくる。

 その顔がぼやけてしまうほど近づいた時、私は目を閉じた。

 それは、きっと彼も同じだったと思う。


 そして。


 私と、足立君は・・・・・・









「悪い。待たせた?」

「いや。別に」

 車のドアが空いた、と思ったら、どこまでも申し訳なさそうに言う足立の声が聞こえて、佐藤は正直にそう答えた。

 佐藤と吉田が店を出てから、15分ほどが経過していたが、佐藤は吉田と色々と話をしていたので、そんな時間はあっという間だった。
 正直、もう少し待つつもりであったので、別に、という佐藤の言葉には一切の偽りは無い。

「お帰りー。村主ちゃんも!」

「・・・ただいま?」

 首を傾げながらそう言う村主を見て、足立は笑った。

「で? どんな話したの?」

 興味津津、といった様子で吉田は言う。
 その言葉に深い意味はそれほど含まれていなかったのだろうが、言われた足立は顔を真っ赤にして窓の外を見始めてしまった。
 あれ。と思いながら村主にも目を向けると、俯いてしまっている。

「・・・馬鹿」

 吉田にすら聞こえるか聞こえないか、という声で呟きながら、吉田の足を佐藤がつねる。
 いてて! と声を出しながらも、彼なりに空気を頑張って読んで、それ以上は尋ねなかった。

 佐藤は、誰かが見たところでそうであろうとは思えないほど小さな笑みを浮かべると、車のハンドルを握り、アクセルを踏み込んだ。







「じゃあな。今日はありがとう。佐藤」

「おう」

「じゃあな! 足立! そして村主ちゃん!」

「ええ。ありがとう。佐藤君。赤井君」

 車の扉越しに、私達はそう言葉を交わした。
 私と足立君は、足立君の車が置かれている駐車場で佐藤君の車から降りていた。
 赤井君が他に行きたい所がある、というので、佐藤は吉田を車で運ぶためにここで別れることになったのだ。
 足立君は、付き合おうか? と佐藤君に尋ねたが、佐藤君は足立君を一睨みしてそれを拒否した。本当、優しい人だと思った。

 挨拶を交わすと、佐藤君は早々と車を再び発進させた。急に動かしたせいで、赤井君が慣性の法則に従って倒れ、頭をどこかへ打ち付けているのが見て分かった。最後の最後まで面白くて、私は思わず笑いが零れそうだった。いや、零さなかったけれども。

 佐藤君の車は駐車場を出ると、すぐに見えなくなった。

 それを目視で確認してから、足立君は私へ体を向けた。

「買い物、もう無いかな?」

 落ち着いた様子・・・少なくとも、さっきのファミレスよりはずっとずっとずっと、落ち着いた様子で足立君は尋ねてくれた。
 私は言葉は発せず、こくんと一回頷いて答えた。

「じゃあ、帰ろうか。家まで送るね」

 そう言いながら、自分の車まで歩き出す足立君。
 そんな足立君のあとをついていかず、私はその場で立ち尽くしていた。
 すぐにそんな私に気づいて、足立君が振り返り、不安そうな表情を浮かべる。彼に、とてもよく似合ったその表情を。

「・・・どうか、した?」

 どこまでも不安そうに尋ねる足立君が少しおかしかった。
 でも、笑ったらあまりにも可哀想だと思ったから。私はなるべく表情を変化させないように、と気をつけながら口を開いた。

「足立君。前に私に聞いたわよね?」

 私が言うと、足立君は記憶を辿っているのか、どこか力のこもってない目で空を仰ぎ見た。
 ・・・これだから、男は。

「・・・『俺といて楽しい?』とか、聞いてたでしょ?」

 そう言うと、足立君はひどくばつが悪そうな表情を浮かべ、顔を青ざめさせていた。
 ・・・青ざめるほど、失礼な質問とも思っていないのだけれども。

「・・・あの質問に、あの時、答えなかったのは・・・分からなかったからなの」

 私が言うと、足立君は目を少しだけ見開いた。でも、何も言わず、ただ私の言葉を聞いてくれた。

「私、足立君と付き合うことになって、嬉しかったわ。でも、今まで男性と付き合ったことなんかなかったし、足立君が、どれくらい私のことを好きなのかも分からなかった。恋人らしいこともほとんどしてない。そんなことを考えていたら・・・私は、足立君といることが楽しいことなのかどうか、分からなくなった」

 しっかり、話すことができたと思う。
 ゆっくり、言いたいことを一つ一つ口に出す。足立君は、黙って・・・少し悲しそうな顔で私の話を聞いてくれた。
 その顔が、何に対する悲しみを表しているのか分からなかった。
 でも、私は言葉を続けた。

「だから、あの時、足立君の質問には答えられなかった。・・・でも、今日、足立君とお話をして、分かったの」

 正直、この表情を浮かべるのは怖かった。
 最初の、彼の青ざめた顔が忘れられなかったから。
 でも、ここで浮かべずいつ浮かべればいいのか。その答えを私は見つけられなかったから。
 だから。

「私、足立君といると楽しい。・・・ううん、幸せよ」

 『笑顔』を浮かべて、私は答えた。

 あの時の問いに対する、答えを。


 足立君は、私の笑顔を見て驚いたようだった。

 でも、以前みたいに青ざめながらでは無い。
 頬を赤くし、放心したように、私のことを見ていた。

 少なくとも、私の笑顔を否定はされなかったようで、私は安堵のため息を漏らした。

「・・・俺もだよ」

 顔は赤いまま、足立君は微笑みながら口を開いた。

「ああ質問したのは、自分に自身が無かったから。村主さんが、俺のどこが好きで付き合ってくれているのか分からなかったから。・・・それで、村主さんに、『自分で考えろ』って言われて、凄い考えた。・・・それでも、俺には分からなかった」

 話しながら足立君は私に近づいてきて、言葉を一旦終わらす頃には、私と足立君との距離は1mも無くなっていた。

「・・・でも、考える必要なんか無いんだよね? 俺は、村主さんじゃないから、村主さんの考えを全部理解することなんてできない。だから、村主さんが俺をどう思っているかじゃなくて、俺が村主さんをどう思っているか、ってことは・・・これからしっかり言いたい。そう、思っていたんだ。村主さんに、先に言われちゃったから意味無いけど・・・」

 ははは。と乾いた笑いを浮かべる足立君は、どこか普段の彼と違って見えた。
 抱えていた悩みが、全て無くなったような。そんな、すっきりとした表情だった。

「・・・俺は、村主さんと一緒にいて楽しいし、幸せ。・・・村主さんと、同じだよ」

 足立君が言い終わった瞬間、思わず彼に抱きついた。
 急なことに足立君は驚いたみたいだけど、私の頭をすぐに撫でてくれた。
 こうして抱きついてみると、足立君の体は凄く大きいということが分かって、少し嬉しかった。まあ、嬉しいと思う以前に、顔が真っ赤で熱くて恥ずかしくて、ほとんど何も考えられないんだけど。

「・・・村主さんも。これから何か俺に言いたいことがあったら、すぐに言ってね。俺も、すぐに言えるよう頑張るから」

 足立君の言葉に、彼の胸で何回も頷いた。

 ああ。

 もう、どうしよう。

「足立君」

「何? 村主さん」

 顔を上げて、足立君の顔を見る。
 私の顔はきっと真っ赤なのだろうけど、彼の顔も負けじと真っ赤だった。

「大好き」

「!! ・・・お、俺も」

 足立君も、私の背中に手を回して抱きしめてくれた。

 ああ。

 もう、どうしよう。

 ここまで好きになると、思わなかった。











「・・・なー佐藤」

「何だよ馬鹿」

「うっわー。愛無いなあそのあだ名。村主ちゃん見習えよ」

 佐藤の車の助手席に座り、窓の外を眺めていた吉田は悲しそうに言う。
 が、佐藤はノーリアクション。当然だ。この程度の言葉、返事をする意味など無い。

「・・・足立と村主ちゃん、これからも仲良くやれればいいな」

「・・・ああ。たぶん、大丈夫だろ。なるよ」

「何に?」

 吉田が佐藤を見ると、少し気恥ずかしそうに佐藤は頭を掻いた。
 そして、数秒置いてからぼそっと、一言。

「・・・幸せ、に」

 この直後、大爆笑した吉田を佐藤が車をわざわざ止めてまでぼこぼこにぶん殴ったのは・・・言うまでも無い。















 あとがき

 黒麒麟さん、いかがだったでしょうか!
 こんな感じに書きました。吉田をアホキャラにしすぎた感が凄いですが、どうかお許しを。あとパロディも少し多めですが、お許しを。

 足立と村主は、一見どういう関係かわかりにくいけど、心の中ではお互いが大好き。というのが理想なのでこういう風に書きました。もう、どんなカップルよりもラブラブでいいと思うよこの二人は。
 ちゅー(古っ)らしき表現があります。しているところを書かないのは恥ずかしいからです(待 死ぬほど恥ずかしいからです。
 佐藤さんも、口では足立に色々言うけど心では二人の仲を応援している、というのが理想です。というか、たぶんそうです。

 若干尻すぼみな小説になってしまった気がしなくもないですが、愛はこめました!
 リクエストありがとうございました! これからも銀の働き部屋をよろしくお願いいたします!

 では!!!










 コメント返信です!!

 文字を反転させてお読みください!!




>通りすがりさんへ

 どうも初めまして!! コメントありがとうございます!!

 COOLではなくKOOLなのは、わざと書いてます! ひぐらしのなく頃にという作品のパロディです! 指摘ありがとうございます! 分かりにくいパロディで申し訳ありませんでした!
 まあ、佐藤さんはこの時かなりテンパっていることを表現したかったので、パロディでなくともイイ気がしますね。



>千亜希さんへ


 いつもコメントありがとうございます!!
 生徒会役員共買いましたか!! 下ネタ平気ですか!! ひゃっほう!!(何
 会長可愛いですね。だが俺はやはりムツミが好き。可愛い。ムツミは正義。超可愛い。
 アニメ見てると結構オリジナルのネタが多くて嬉しいですねー。
 HOTDは毒島先輩が好きですか。可愛いですよね毒島先輩。あの人にやんわりと叱られたい。もしくは叱りたい!!!(変態か
 アニメの5話の戦闘シーンがはっちゃけすぎてて爆笑しましたw なんですかね、あの超人軍団w
 DVD・・・あ。最新刊予約しなければ!!(ぇ



>赤髪の探偵さんへ

 いつもコメント感謝です!!
 ムゲフロ超面白いです! 今はアークゲイン&アインストハーケンと決着をつけたところまで進みました! 途中で勇者の印が欲しくて金稼ぎまくってたから全然進んでない。そして気付いたらハーケンとKOS-MOSとのレベル差が凄いことになってきた。
 早くクリアしてエクシードもプレイしたいです! アホセルを見たいです!!!
 神夜はアクセサリとか付けたらSPが999になりました。愛使い放題です。
 実家、雑記でも書いてある通り岩手県です。冬は雪が酷くて・・・。
 俺らの成人式もそんなんかな。折角来てくれてるんだから話くらいは聞きたい。でも友人に話しかけられたらきっと話しちゃうだろうなあ

 


 いつもコメント本当に感謝です!!元気が出ます!
 これからもよろしくお願いします! では!!


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コメント

とうとうゲーマーズに行きました!!
ああここって素晴らしい(天国)とおもいましたね。というかまさか友達とテキトーに歩いていたらあったんですよ!!
テンションが上がりましたね
友達とおそろいで佐藤さんのお守り買いました!!
よくよく考えて見ればここは伊波と小鳥遊か佐藤さんと八千代さんを買うべきだったんでしょうね(笑)

そしてまさかヘタリアを知ってたとは!私もマンガ持ってます!

長々と語ってしまいすいませんまたコメントします!ありがとうございました!
2010-08-09 Mon 02:27 | URL | 千亜希 [ 編集 ]
沖縄の海で水着着て泳ぐのは内地の観光客だけなんです。県民は良くてプールか、暑いので出かけません!(我が家だけかもしれない)


佐藤さんが良い人すぎます!
ってかもう、熱々な二人が見れたのでおなかいっぱいです。ええ、本当ご馳走様でした。
2010-08-09 Mon 13:45 | URL | 蛍火メイ [ 編集 ]
こんにちは~。

うちのトコではは、僕も大好きですよ。サイトの方では今幕末の頃の話を描いていて、それも面白いので、見てみてください。
秋田もいいですけど、大阪もかわいいですよ。特に福島との絡みは最高です。余談ですけど、神戸は現在の派手な方よりも、昔の素朴だった頃の方がかわいいと思うのは僕だけでしょうか?

小説も読みました。ラブラブな二人に思わずにやけてしまいました。現実でこんな会話をしてるカップルには爆発してほしいのに、2次元だと素直に応援したくなるのは不思議です。
2010-08-10 Tue 09:45 | URL | 赤髪の探偵 [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2010-08-10 Tue 20:04 | | [ 編集 ]

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