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銀の働き部屋

管理人銀河の、日記兼テキストサイトです。取り扱うジャンルは主にヤングガンガン連載のWORKING!!になると思います。最近は東方の霖之助小説を書くのにも夢中。どうかよろしくお願いします。リンクはフリーです。感想は常に受付中です!もらえたら泣いて喜びます

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思い描くは温かな・・・ 東方小説 霖之助×霊夢


 





 今回は霊夢×霖之助小説にチャレンジしてみました。
 相変わらず知識が二次創作知識しか無いのでもしかしたらおかしな点があるかもしれません。明らかにこれは東方の設定としてまちがっているよ!というものがありましたら指摘をお願いいたします。

 タイトルは、「思い描くは温かな・・・」です。・・・を付ければなんとかなると思っている今日この頃(ぇ
 ベタな設定ですが、風邪ひき霊夢で。俺、伊波・佐藤さん・霊夢と風邪をひかせるの大好きですね(ぇ
 甘さは・・・微糖かな。ベタベタは全然してないです。

 ああ。そういや、香霖堂なんですがね?
 今日・・・あ、昨日か。アマゾンからメールが届きました。
 どうやら、10月14日から30日までの間に届くそうです。
 ・・・火炎瓶って、何本くらい作ればアマゾンを燃やせるかな(ぇ
 ・・・いや。予約するのが遅すぎた俺が悪いのかもしれんけどさ・・・。それにしたってさあ・・・!!!

 まあいいや(ぇ

 それでは、続きからでお読みください。

 あとがきの後にコメント返信があります!!







 とある、冬の日のことだった。

 香霖堂店主である霖之助は、ストーブのおかげですっかりと暖まった店内で、快適な生活を過ごしていた。
 快適、とはいっても、客でもなんでもない騒がしい常連に邪魔をされることなく、ゆっくりと本や新聞を読むことができる、というだけなのだが、霖之助にとってはこの時間が何よりも貴重なものだった。
 客ならまだしも、この店に訪れる者はやたらと店内を騒がせるだけ騒がし、霖之助の平温な日常を妨害し、何か買い物をするどころか返ってくる当てもなくツケで商品を持っていくような連中ばかりだからだ。
 まあ、ばかりとはいっても・・・紅白と白黒の二人しかいないんだが。この店に頻繁に来るのも、物を泥棒していくのも。

 外の冷え込みはかなりの物で、店内こそ暖気に満ちているが、窓から外を見れば大粒の雪がやや強めな風と共に舞い吹雪いている。
 ・・・こんな大雪では、客もまず来ないだろう。
 あの二人がしっかりと料金を払ってくれれば、もう少し商売をしているという感覚にもなれるものを・・・。と、思わず溜息を吐かずにはいられなかった。

 しかし、こんな珍しい休息の時を溜息ばかりして過ごすわけにもいかない、と、霖之助は新しく手に入れた外の世界の本を1ページ捲った。

 カランカラン。

 入り口に付けている鈴が高らかに鳴り響く。

「いらっしゃい」

 こんな寒い日に珍しい、と思いながら本を閉じ、商売人らしい挨拶をしながら入り口を見る。
 しかし、その来店者を見て霖之助は眉を顰めた。

「・・・やあ霊夢」

 泥棒まがいの二人組。その片割れを見て、思わず声が苦々しくなってしまった。

 全く、こんな寒い日に何をしにきたのか。・・・と全く思わなかったわけではないが、ここ数日降り続く雪で客が少なかったということもあって、実はそれほど霖之助は霊夢の来店を嫌がってはいなかった。
 だからといって、上機嫌で歓迎してもおかしく思われるだろうと思い、とりあえず普段と同じように声を渋らせただけだ。

「・・・お客に対してその言い方はどうなの? 店主として」

 肩や頭にうっすらと積もった雪を、わざわざ店内で払いながら霊夢は言った。
 ああ。懐かしいやり取りだ。
 そういえば、ここ最近霊夢は訪れてこなかったな。と少し懐かしむように霖之助は思っていた。

「お客に対する愛想は修行時代に身に付けたつもりだよ。君が客なら、ね」

 このやりとりは、霖之助と霊夢にとっては挨拶のようなものだった。
 こんなこと、霊夢は何回も言っているし、霖之助もそれに全く同じように何回も返している。
 ただ、言わずにはいられない、というものだろうか。この言葉を交えるから、霖之助と霊夢、なのだ。

「ふーん。そ。・・・最近寒くなったわね」

 店の中に置いている本棚に身を預けながら、霊夢は窓の外を見て言った。
 その寒い中をわざわざ来たのは君だろうに・・・とも思ったが、交流に飢えていた霖之助は大して気にすることはなかった。

「そうだね。僕は君のその格好を見ているだけで寒くなってくるよ」

「あなたが作ったんじゃない?」

「そうだよ? 君の要望に答えて、だ」

「そうだったかしら・・・」

 そんな気の無い返事が聞こえて、懐かしさを覚えながら、呆れたように溜息を一つ。
が、同時に霖之助は違和感を覚えていた。
 いや・・・何がおかしいのか、と尋ねられるとはっきりと答えることはできないのだが、何かがおかしい気がした。そんな漠然とした思いだ。
 そんな根拠の無い違和感の原因を霊夢に尋ねるわけにもいかず、霖之助はそれ以上何も言わなかった。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・?」

 来店したのが客ではなく、霊夢ということ知った時から読みかけの本を読んでいた霖之助だが、霊夢があまりにも何も言わないので思わず霊夢に視線を向けた。
 彼女は、先ほどと全く変わらずにそこにいた。
 本棚に背中を預け、窓の外をぼーっと眺めている。
 ・・・寒空から店内に入ってきたので、体を温めているのだろうか?

 もともと霊夢は・・・少なくとも、魔理沙よりは騒がしい人物ではない。
 そりゃあ、当たり前のように自分用の茶飲みで茶は飲んだり、更には高級な茶葉や茶菓子をツケで持ち帰ったりと、悩みの種の多さは魔理沙とどっこいどっこいではあるが。しかし、それでもだ。ここまで無口で、儚げに景色を見るのが似合う人物でも無い。どちらかといえば図々しく、ふてぶてしくあるのが彼女らしいと霖之助は思う。
 この店に来たら真っ先に茶を淹れに向かい、それから他愛の無い話を僕としばらく交わす。それが、霊夢と霖之助のいる、普段の香霖堂の光景のはずだった。

「・・・霊夢?」

「何? 霖之助さん」

 あまりにも静かな彼女の名を呼んでみる。
 霊夢は、ゆっくりと僕を振り向いてそう答えてみせた。・・・何故か、その目が少し艶っぽい気がする。

「・・・どうかしたのかい? そんなに外は寒かったか?」

「ん? そうね。なかなか堪える雪だったわ。・・・もう少し暖かくできないの?」

「・・・いや、僕が少し汗ばむ、というほどに暖めているつもりだが」

「・・・そう? ・・・言われてみれば、そうね」

 僕の言葉に少し驚くような反応を見せ、酷くまとまっていない言葉で彼女は答えた。
 すると、霊夢が本棚から背中を離し、僕の方へと歩き始めた。
 いや・・・この軌道には覚えがある。これは僕へ向かって歩いているのではない。僕の横を通り、店の奥へ行こうとしている。そして勝手に高級茶葉を取り出して一服。それが普段の博麗霊夢の姿。

 霖之助はただただ、無表情で彼女を視線で追った。
 霊夢は霖之助の横を通り、居住区と繋がる扉を跨ぐ。

 しかし、その瞬間、彼女はほんのわずかな段差に躓いた。

「きゃっ・・・」

 崩れ落ちるように・・・そう。崩れ落ちるように、霊夢は床へと倒れこむ。
 襲い来る衝撃に備え、霊夢は目を強く閉じた。



 しかし、いつまで経っても衝撃は襲ってこない。・・・いや、正しく言えば、衝撃はあった。
 ただし、それは頭部に対してではなく腹部に。しかも、ぶつかったというよりは、支えられたような感触が今も感じられる。

 霊夢はゆっくりと目を開いた。
 そこに映ったのは、さっきまで自らが叩きつけられると思っていた床。
 そして、僅かに視界の端に映ったのは・・・霖之助の袖。そして、彼の腕があるであろう位置は霊夢の腹。

「・・・あ。ありがとう霖之助さん。この段差、無くした方がいいんじゃない? 今まで躓かなかったのがおかしい・・・」

 彼女が言い終わる前に、彼女はしっかりと地に足が着くように起こされた。
 すると、目の前に霖之助の顔が現れる。
 その顔は、普段の霖之助とは少し違う・・・真剣そのもの、といった表情だった。

「・・・何? 何か言いたいこと・・・・・!?」

 でもあるの? と続けようとした時、霊夢の額に霖之助の手のひらが押しつけられた。
 あまり力仕事はしてなくとも、少しごつごつとしていて、霊夢のそれよりもずっと大きな手の平は・・・霊夢にとって、かなり冷たく感じられた。
 あら。霖之助さん冷え性だったの? 生姜湯でも飲んだら?
 落ち着くことの無い思考の中、そんな冷やかしが生まれたが、目の前の霖之助の顔が一気に険しくなったのを見たらそんな考えは吹き飛んでしまった。

「・・・いつからだ?」

 表情を全く変えることなく、霖之助は重く呟くように言った。
 その言葉に内心ドキリとした霊夢だったが、出来る限り平静を保ち、

「この店の段差については、あなたが一番詳しいんじゃないの?」

 と、あくまでふてぶてしく、可愛げ無く言って見せた。
 が、霖之助の顔がまた一層険しくなって、冷や汗が額を伝うのを感じた。

「・・・誤魔化せると思っていたのか?」

「・・・霖之助さんなら、あるいは・・・」

 ばつが悪そうに、ぼそぼそと言うと、霖之助は深く息を吐いた。もちろん、呆れてだ。

 何を言うべきか、と霊夢は考える。
 しかし、結論どころかアイディアすら出る間も無く、霊夢の体はふわりと宙に浮かんだ。
 何が起こったのか分からなかったが、真っ直ぐ前を見ると、下からのぞきこむ形で霖之助の顔がさっきよりもすぐ目の前に見えた。

 そうか。抱きかかえられているんだ。
 そして・・・その抱き上げ方は・・・
 確か、霖之助に昔すすめられた童話の中で、こんな持ち上げられ方があった。
 それは・・・確か。
 そうだ。
 お姫様だっこ、というやつだ。

「ちょっ!! 何やってるのよ! スケベ! 変態!!」

「黙れ!!」

 ばたばたと腕の中で騒ぐ霊夢を、霖之助は、かつて彼女が見たことも無いような形相で一喝した。
 そんな霖之助を見てそれ以上の言葉が出るはずもなく、霊夢は何も言わなくなった。
 はあ。とまた息を吐いてから、霖之助は彼女を店の奥へと運んだ。

 彼が普段寝室として使っている部屋まで運び、ゆっくりと霊夢を床に降ろす。ぺたん。と、後方に足を広げるように霊夢は座りこむ。
 そして、手慣れた様子で布団を敷き始める。霊夢は、膝を深く抱えてその様子を黙って見ていた。
 あっという間に布団を敷き終えて、霖之助は霊夢を見る。
 先ほどの形相を見ていたため、霊夢は思わず肩を震わせたが、霖之助の顔はだいぶ穏やかな物へと変わっていた。

「寝てなさい。少なくとも、雪が止むまでは外に出ないほうがいいだろう。店より随分寒いが、立ちっぱなしよりはいいだろう。何か食べたいか?」

 霖之助の問いに、霊夢はただ首を横に振って応えた。
 そうか。と小さく呟くと、霖之助は部屋を出ようとする。

「・・・僕の服が、その箪笥に入っている。着替えておきなさい」

「ま、待って」

 力無い声で霊夢が言うと、霖之助は歩みを止め、彼女へと振り返った。

「・・・怒ってる?」

「ああ。かなりね」

 一見穏やかそうな顔で、霖之助はあっさりとそう言ってのけた。
 その言葉を聞いて、霊夢の胸が僅かに痛んだ。口を開き、続けて何かを言おうとするが・・・次の言葉が出てこない。

「まさか、そんな熱でこの雪の中訪れてくるとはね。ここまで無事で来られたのが不思議なくらいだ。人気の無い場所で倒れたらどうするつもりだったんだ?」

「・・・ごめんなさい」

 殆ど無意識、と言ってもいいほど・・・霊夢の口から零れた言葉は、当たり前のような謝罪。
 僅かに笑みを浮かべて、霖之助は応えた。

「・・・反省すれば、まあ・・・いいさ」

 そう言ってまた霊夢に背を向ける。

「ま、待って!」

 思わず声が大きくなってしまった。と、霊夢は自分の口をぱっとおさえた。
 しかし、再び振り返った彼の顔はさっきとなんら変わらない。

「・・・えっと、お店に戻る・・・のよね?」

「ああ」

 おずおずと尋ねると、当たり前のように、無表情で霖之助は答える。
 また、胸が痛んだ。

 ・・・そう。だよね。

 そう言おうと思ったが、言葉が出ない。

 霊夢がうつむいていると、霖之助は続けて、

「流石に営業ができる事態じゃないからね。店の前の板を『閉店』へ裏返しに行くんだよ」

 当たり前のように、そう言ってのけた。

「へ?」

 思わず間抜けな声が出てしまって、霊夢と霖之助の間に流れる時間が止まった。少なくとも、霊夢はそんな錯覚を覚えた。
 そして、霖之助の言葉をようやく全て理解すると、顔を真っ赤に染め上げた。

「あ、い、行ってらっしゃい!!」

「・・・ああ。ちゃんと寝てるように」

 一度首を傾げてからそう言い、霖之助へ店へと戻って行った。
 残された霊夢は、しばらく呆然としてから、敷かれた布団へと目をやった。
 ・・・霖之助らしい、きっちりとズレ無く敷かれた布団だった。

 ・・・まあ、まずは服だ。そう思いながら、霊夢は箪笥へ向かうため立ち上がった。立ち上がった瞬間に襲ってきた立ち眩みに体がぐらつくが、何とか堪えた。
 霊夢の服は、大雪の中ここに辿り着くまでにかなり濡れてしまっている。正直、風邪の悪寒も相まって、寒くて仕方が無かった。
 箪笥に近寄り、開くと、普段霖之助がきている物と全く同じ服が何枚かきっちりと畳みこまれていた。
 ・・・別に、新鮮味は無い。前にも、勝手にここから服を借りて来たことがある。
 霖之助に依頼して仕上げてもらった巫女服を脱ぎ、霖之助の服を一枚取り出した。
 霊夢と体格の全く違う霖之助の服は、広げただけで霊夢の体を包み込んでしまうように大きかった。独特な服の構造に少し苦戦しながらも、霖之助の服に身を包む。
 当然ぶかぶかで、肌と服の隙間に冷気が流れ込んではくるが、巫女服と比べればだいぶマシだった。二つの意味で。濡れているか否かという点と、布の多さという意味で。

丁寧に敷かれた布団へと歩み寄り、そのすぐ横で膝をつく。
 掛け布団を捲り、布団の中へ入る。布団の中は温かく、妙な安心感に包まれたような気がした。
 
 何でだろう。

 ・・・。

 ああ。そうか。

 霖之助さんの匂いがするからだ。



 霖之助の匂いのする服を身に纏い、霖之助の匂いのする布団にすっぽりと包まり、霊夢は今朝のことを思い出していた。
 いや、正しくは・・・昨日の夜からのことだ。



 昨日の夜から、少し体調が悪いかな。というのは気づいていた。
 でも、少し喉がいがいがするだけで、咳もそんなに大したことはなかった。
 だから、もったいないけど緑茶でうがいをして、足をしっかりと暖めてからその日は寝た。

 次の日の朝、昨日のことは全て無駄だったと思い、使ってしまった緑茶が本当に心の底からもったいないと思った。

 頭痛。喉の痛み。咳。関節痛。それら全ての症状が霊夢に襲いかかる。
 典型的な、風邪。病気になるのも随分久しぶりだったが、この感覚ははっきりと覚えていた。全く嫌な記憶だ。と霊夢は忌々しく思った。
 風邪をひいているというのに・・・いや、こんな天気だからこそ風邪になったのかもしれないが、外は大雪。風も吹いていて、もう少し時間が経てば吹雪いてくるかもしれない。
 もちろん、この神社も相当な冷え込みを見せていて、風邪であることも相まって猛烈な寒気が霊夢を襲う。

 今日は、たっぷりと布団をかけて、お茶を飲み、ゆっくりと体を休ませよう。
 そう思っていた。

 ・・・そう、最初は。

 でも、霊夢が今いる場所は博麗神社では無い。魔法の森の入り口にある、この香霖堂の寝室だ。

 何故。

 何故、彼女はここにいるのか。

 それは・・・



「霊夢?」

「え?」

 考え事をしていると、自分を呼ぶ声。
 声が聞こえてきた方向を振り向くと、そこには、桶を持って佇む本来のこの寝室・・・いや、この家の主がいた。

「ああ。すまない、起こしてしまったか?」

「いいの。まだ寝てなかったから・・・うっ」

 上体を起こしながらそう答えると突然頭痛が襲ってきて、霊夢はうめいて目を閉じた。 
 霖之助はすぐに霊夢の傍へと座って、「寝てなさい」と、口にはしなかったが手で指示した。
 霊夢は大人しく横になる。頭痛は、さきほどの痛みを契機に短い間隔で霊夢の頭を締め付ける。
 喉の痛みも強くなってきて、霊夢は少し咳こんだ。

「・・・無理をするからだ」

 水の入った桶の中で布を絞り、それを霊夢の頭に乗せてやる。
 ひんやりとした感触が額から伝わってきて、霊夢は心地よい感触に心が落ち着くのを感じた。

「・・・もう少ししたら粥を作ろう。それから薬を飲むといい。人間用の風邪薬なら予備が幾つかある」

「・・・何で人間用の薬が?」

「まあ、いつかこんな日も来るかな・・・とは思っていたからね。君も魔理沙も一人暮らしだし」

 霊夢の額の布を取り、桶の中で洗い直しながら霖之助は答えた。
 そう。とだけ、霊夢はそっけなく答えたが、一応前から私達のことを気遣ってくれていたんだ、と嬉しい気持ちが湧きあがってくるのは止められなかった。

「・・・何をにやにやしてるんだ」

「し、してないわよ」

 濡らした布を霊夢の額に置きながら霖之助は問うが、霊夢はもともと赤くなっている顔をもう少し染め上げて否定した。
 ならいいけど。と、溜息混じりに言って、霖之助はその場に座り直した。

 しばしの間流れる、沈黙。

 激しい頭痛と顔の熱っぽさであまり思考のまとまらない霊夢だが、何か言わなきゃ、という考えだけはずっと頭の中に思い浮かべていた。
 霖之助は、何も言わない。目を閉じ、何かを考え込んでいるようだった。

 どうしよう。

「何で来た?」

「え?」

 もう何を言うべきなのかさっぱり分からない、というほど頭が混乱した時、霖之助のそんな言葉が聞こえてきて、霊夢は霖之助の顔を見た。
 霖之助は目を開き、真っ直ぐに霊夢を見つめていた。その目はただ見ているのではなく、相手の真意を探ろうとしているんだ、と、霊夢はすぐに気づいた。

「それだけの症状だ。博麗神社からここまでは空を飛べばそんなに距離も無い。家を出る前からきっと体調は悪かったんだろ? そんな無理をしてまでここに来る理由は何だ? まさか、お茶を取りに来た、とでも言うのか?」

 霖之助の琥珀色の瞳が、霊夢を見据えている。
 じっと見ていると吸い込まれそうだ。と、霊夢はこんな状況でそんなことを考えてしまうほど、朦朧としていた。

 しかし、黙っていても大丈夫、と勘違いするほどは朦朧としていない。

「・・・なんとなく、来たの」

 霊夢のその言葉を聞き、霖之助の眉毛がぴくっ、と動いた。
 彼は手を額に当て、目を閉じる。そしてしばらくしてから、かなり憤りを込めた溜息を吐いた。

「なんとなく、でそんな無理をしたのか」

「・・・うん」

「もしここに辿り着くまでに倒れたりしたらどうするつもりだったんだ」

「死にはしないわ」

「そういう問題か!!」

 突然大きく、鋭くなったその声に、思わず霊夢は目を閉じた。
 それからゆっくりと目を開き、霖之助を見る。
 その顔には、怒りが浮かんでいた。未だかつて見たことがない、霖之助の怒り。
 危機迫ったようなその顔を見ると、霊夢の胸の罪悪感がより一層強まった気がした。

「・・・すまない。つい声が大きくなってしまった。頭に響かなかったか?」

 しかし霖之助は、はっとしたように目を見開くと、頭をおさえて細かく振った。
 それから、霊夢にそう謝ったのだった。

 自分の怒りも相当なものだろうに、それでも霊夢を気遣う霖之助に、霊夢は思わず笑みが零れそうだった。
 しかし、怒られた直後に笑いでもしたら流石にまずい。と、それを堪える。胸に溢れる幸福感も隠して。

「・・・この際、君がこの幻想郷においてどういう存在であるか、とか。自分の立場を分かっているのか・・・とか。色々と言いたいが、あまり長話も聞きたくはないだろう」

「もちろん」

「・・・だから、とりあえずこれだけ言おう」

 口と眉をひきつらせてから、一度咳払いをして、霖之助は言った。
 ・・・優しく、諭すような瞳で。

「・・・僕は、君が意味の無い無理をして苦しむ姿は見たくない。お茶は持っていかれるし、ロクな話を持ってきた試しの無い君だけど。・・・それでも、僕の大事な友人なんだ。大切な人なんだ。・・・こんな無理をしないでくれ」

 普段の彼らしくないよわよわしい声で、霖之助はそう伝えた。
 霊夢は、霖之助を見る。
 普段は無表情で、でもどこか常に自信に満ちているような彼の顔には、悲しみが浮かんでいた。
 もちろん、それは今にも泣きだしそう、といったものではない。しかし、普段の霖之助を観察していても、まずお目にかかることはできないであろう、そんな顔だ。だからこそ、分かる。彼が悲しんでいるということを。心配しているということ。

 霊夢を。

 彼の言葉が、霊夢には純粋に嬉しかった。・・・霖之助さんがここまで言ってくれているのに私は何を考えているんだ。と思わなかったわけではないが、それでも、嬉しかった。
 本当に。
 本当に。

(嬉しい・・・!!)

 思わず、涙が零れてしまいそうだった。顔に赤味が増していくのが自分でも分かる。
 霖之助がうつむいたまま動かなくてよかった、と、不謹慎なことを考えてしまう程だ。
 ・・・しかし、自分ばかり喜んではいられない。と、霊夢は口を開いた。

「霖之助さん」

 か細い、途切れてしまいそうな声で霊夢は彼の名を呼んだ。・・・いや、彼女はこのような声を出すつもりは無かった。喉の炎症が思っている以上に悪化しているらしく、これ以上の声量が出せなかったのだ。
 そんな声でも、霖之助はしっかりと聞きとったようで、彼は顔を上げて霊夢を見た。
 その顔はまだ、「いつもの霖之助」を取り戻せてはいなかった。普段は凛としているその瞳に力は無く、霊夢の喉の不調を察したのか更に心配そうに彼女を見つめている。

「・・・あのね? 確かに、ここに来たのに・・・そんな大きな理由は無いの。お茶は十分にあったし、薬もあった。でも・・・ここに来たい、って思ったのは事実なの」

 喉の痛みに耐えながら、言葉を一つ一つ紡ぎだしていく。
 霖之助はただ黙ってその言葉を聞くことしかできなかった。呆然としている、と言っても過言ではないかもしれない。少なくとも、口を開き、普段よりも少しだけ見開いた潤んだ目で話を聞く霖之助の姿を、未だかつて誰も、この場にいる霊夢以外見たことはなかったのだ。

「・・・今朝ね? 急に思ったの。『香霖堂に行きたい』って」

「・・・どうして」

 久々に口を開いた霖之助の声は、呆然としたその表情とは裏腹に、落ち着いた声だった。

 彼の言葉を聞いて、霊夢は笑った。




『あーあ。風邪ひくのなんか、いつぶりだろう。・・・このまま寝てよう』

 今朝、布団から上体を起こしながら霊夢はぼやいていた。
 口では随分な余裕のある言い方をしているが、頭痛はするわ、喉は痛いわ、咳は出るわ、体の節々はいたいわで散々な体調であった。このような無駄に声の大きな独り言を言わずはいられないほどの。
 すぐに、再び布団に横になる。そしてこんなことを呟いた。

『・・・一人で寝てるのなんて、嫌だなあ』

 先ほどの独り言よりはずっと小さな声であったが、むしろ霊夢にとっては、風邪による体調不良よりもそのことの方が大事だった。
 こんな言葉が出てしまうのは、仕方のないことだ。誰だって、そうだ。
 霊夢は博麗の巫女として、この博麗神社に一人で暮らしている。だから、一人でいること自体に普段から悲しみを覚えているわけではないし、もちろん、一人で寝ることだって悲しいと思ったことは無い。
 いや、悲しみどころか・・・何も思わない。思えない。霊夢にとっては、「それ」が当たり前のことなのだから。

 しかし、「それ」と「これ」では話が違う。

 多くの人は、体調がすぐれない時に一人で過ごすことをいいこととは思わない。ましてや、霊夢は博霊の巫女である前に、一人の少女だ。
 布団を深くかぶり、冷え込む空気に耐えながら、彼女は考える。
 そして、すぐに・・・後々考え直したら、彼女自身でさえ馬鹿らしいと思う、こんなことを呟いた。

『・・・香霖堂に、行こっかな』

 そんな、馬鹿な考え。
 念のため言うと、霊夢は風邪をひいてはいるが、視力は普段となんら変わらず正常だ。つまり、外に降りしきるこの大雪が見えていないというわけではない。

 そんなことを呟くと。誰かの声が聞こえた気がした。
 そう。いつも仏頂面で、霊夢のことを客として扱うことなど滅多にない、眼鏡をかけた店主の声が。

 雪が降っているぞ。

『飛べば、大した距離じゃないわ』

 服も濡れるぞ。

『代わりくらい貸してくれるわよ。というか、借りるわよ。勝手に』

 倒れたりしても知らないぞ。

『死にはしないわよ。・・・たぶん』

 ・・・。

 なんで、香霖堂なんだ。

『・・・だって』





 霊夢は、笑った。
 そして、目の前で呆けた顔を浮かべている霖之助に向かって、今朝思った、この言葉を伝えた。

「霖之助さんなら、看病してくれるって思ったから」

 その言葉を聞き、霖之助は目を見開いた。
 そう伝えた霊夢は、高熱で苦しいだろうに、照れくさく笑っていた。

 霖之助は、うっすらと笑みを浮かべた。
 それと同時にこう思った。
 
 ああ。

 この、大馬鹿め。

「大馬鹿め」

 思うだけではとてもとても飽き足りず、霖之助は霊夢に一言叱咤した。

「ごめんなさい」

 えへへ。と、まるで反省してなさそうに笑う霊夢。
 しかし、霖之助はそれ以上彼女を叱りつけることはなかった。
 ・・・叱る気など、湧いてこなかった。

「・・・そんな理由で来られたんじゃ、何もしないわけにはいかないな」

 霖之助は、やれやれ、といった調子で言いながら立ち上がり、台所へと向かい始めた。
 部屋を出る直前に振り返ると、

「今日一日だけだ。・・・治ったら、帰るんだぞ」

 厳しく一言、そう告げた。
 まあ、その顔はとてもとても怒っているようには見えず、霊夢は、

「はーい。ありがとう」

 そう、笑顔で返すのだった。
 ふっ、と小さな笑みを浮かべてから、霖之助は部屋を出た。恐らくは、お粥を作るために。

 取り残された霊夢。

 頭は痛い。

 喉も痛い。

 間接も痛い。


 でも。

「あったかい」

 そんなことも忘れて、霊夢は胸いっぱいに広がる幸せな気分に酔いしれるのだった。




 
 








 あとがき

 どうだったでしょうかー。
 とりあえず、霊夢に俺が抱いているイメージが、「ふてぶてしい」とか「ずうずうしい」といったイメージだったので、できる限りはそういう性格で書いたつもりです。
 でも、普段はそういう態度の女性が、風邪とかで弱っている、ってのもそそられると思うんだ(ぇ
 霖之助は口うるさいけど、性根は重度のお人好し。というのが俺のジャスティス。風邪の女の子を本気で怒ることなんかできません。
 終わり方が普段と比べるとさっぱりしてます。いや、本当はもっと長くするつもりだったんですが、これ以上書くとグダグダしてきそうだなあ、と思ってさっぱり終わらせてみました。

 今の段階だと、魔理霖を書くつもりが全く無いんですが、俺の中では魔理霖は大本命も大本命です。でも、あまりにもガチすぎてあまり書く気が起きないという。
「どうせ魔理沙とくっつくんだから、他の女の子とのカップリング考える方がよくね?」みたいなそんな感じ(ぇ
 でもピクシブで魔理霖絵を見るのは大好き。萌え死ぬ。胸がキュンキュンする。

 それでは。さあ、リクエスト小説も書くぞー。



 ↓にコメント返信です!!













 コメント返信です! 文字を反転させてお読みください!!




>幸樹さんへ

 初めまして! コメントありがとうございます!
 WORKING!!大好きです。もう、愛していると言っても過言ではありません。男女の恋愛が大好きな俺からしてみれば、WORKING!!は神漫画と言わざるを得ません。
 小説読んでくださってありがとうございます。これからは少し東方小説が多くなるかもしれませんが、WORKING!!への愛は当然持ち続けて小説を書いていこうと思います。



>千亜希さんへ

 体育祭かー。運動音痴の俺は良い思い出が一つも無いです。でも綱引きはみんなで盛り上がって楽しかったなあ。
 うーん。体育祭とかそういう公共の場で、そういう曲が流れると俺らみたいなオタクは嬉しいですけど、普通の生徒はしらけてるんだろうなあ。とか考えてイマイチ喜べないですね。なんか紅白にアニメソングが流れる気分。ミュージックステーションでけいおんの曲が紹介される気分。そんで会場で華麗にスルーされた時の気分。ボカロ曲はそこまで聞き入っているわけじゃないですが、好きな物は本当に大好きですよ? 裏表ラバーズとかダブルラリアットとか。
 香霖堂、買えてないよ。買えてないよ。買えてないですよ・・・!! ちくしょう・・・!!!(ぇ
 とらのあなもメロンブックスもアニメイトも無いですよ・・・。ふふふ・・・。俺はどんなに遅く届こうとアマゾンに頼るしかないのさ・・・ふふふ・・・。
 東方の曲は、何曲かはもちろん大好きなんですが、あまりにもアレンジが膨大すぎて・・・。ナイト・オブ・ナイツとか、U.Nオーエンは彼女なのかとかがやっぱり大好きです。お嫁にしなさいも好き。

 
 


 コメントいつも感謝です!これからも頑張ります!!
 
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東方小説 | コメント:1 | トラックバック:0 |
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コメント

よっしゃゃゃゃゃ!霊夢きたー!!(´∀`)あのツンデレデレのかわいい女の子は破壊力抜群です!風邪だって!?看病だって!?そんな甘いシチュもう大好きです!さすがは霊夢です。霊夢ならたしかに雪の中好きな人に会いにくるかもしれません。ていうか来ます。というか書いてくださってありがとうございますもうものすごくうれしいです!!
あと話は変わり私の学校ではとにかくオタクが多いんです。じっさいクラスの男子もworkingを見て(わたしが教えたわけではありません)面白いと言ってたり、学校の選挙のときつくられた冊子の表紙は初音ミク、中をみたらメモの欄のイラストはもちメリカだったりするくらいなんです。なので一部の人だけが知らなくてあとはみんな知ってる感じだったんですよ(笑)
あ、あとピクシブで銀河さんのイラスト見ました。かわいいくて私は好きです。絵の才能あると思います!またコメントします!!
2010-10-03 Sun 16:44 | URL | 千亜希 [ 編集 ]

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