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銀の働き部屋

管理人銀河の、日記兼テキストサイトです。取り扱うジャンルは主にヤングガンガン連載のWORKING!!になると思います。最近は東方の霖之助小説を書くのにも夢中。どうかよろしくお願いします。リンクはフリーです。感想は常に受付中です!もらえたら泣いて喜びます

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となり同士の約束 小鳥遊×伊波 ほなみんさんリクエスト小説



 リクエスト小説を更新しようと思います。

 今回の更新するのは、ほなみんさんのリクエスト。小鳥遊×伊波です。
 リクエスト内容は、「小鳥遊×伊波で結婚式もの。オールキャラで甘くしてください。」
 とのことでした。
 
 ・・・いやあ。今回のは、辛かったです。どういう風に辛かったか、というのはあとがきで書かせていただこうと思いますが・・・辛かったです。

 とりあえず、小鳥遊×伊波で結婚式もの。タイトルは、「となり同士の約束」です。甘さは・・・まあ、結婚式の話なんでもはやそういうのでも無いですが、それなりに甘いです。でも激甘でも無い。

 今のうちに注意点なのですが、未来の話なので、俺の考えた設定が多数存在します。ご注意ください。

 それでは、続きからでどうぞ!!











 子どもの時から、夢見てた。

 お父さんが絶対に買ってくれない絵本。お母さんが誰かから貰ったり、幼稚園に置いてあったりした絵本。

 そんな絵本を見て、私は、「そんな世界」があることを初めて知った。

 白雪姫は王子様の口づけで目を覚まし、幸せになった。

 シンデレラはガラスの靴がぴったりとはまり、王子に見染められ幸せになった。

 そう。結婚をして。

 男は狼、男は怖い物。と教育させられた私にとって、結婚とは未知の存在だった。

 恐ろしい男と結婚して、どうなるんだろう。 食べられてしまって終わりじゃないのか?

 もちろん、そんな幼稚な考えは、少し成長して改められたけど。でも・・・それでも。絵本を初めて呼んだ時から、けっこん、という物に興味を抱いていたのは間違いない。

 結婚をすれば、幸せになれる。

 それがたとえ物語でも。素敵な王子様なんかこの世にいなくても。

 結婚が作る幸せに、私は・・・ただただ憧れていた。

 でも、そんな幸せは、私には訪れないということも分かっていた。

 私が、結婚なんかできるわけない。

 私と、結婚してくれる人なんているわけがない。

 そう思っていた。

 でも。この世界にも、いるんだ。

 私だけの、王子様は。




 ・・・あと、30分。
 控室の壁に掛けられた時計を見上げながら、私は心の中でそう呟いた。
 胸に手を当てる。さらさらと手触りのいい生地越しに、鼓動の高鳴りを感じることができた。
 ・・・深、呼吸。
 さっきから、何度繰り返していることだろうか。しかし、それでも胸の鼓動が収まることは無かった。

 緊張、もある。
 でも、最もこの胸を高鳴らせている原因は、きっと・・・不安だ。

「・・・宗太君」

 愛しの人の名を、呼ぶ。
 それだけで、少しだけ安心した気がする。
 しかし、やはり気休めは気休めだ。すぐに、また緊張と不安の波が押し寄せてくる。

 苦しい。

 そう、思った時。

「まひるちゃん?」

 控室の扉が開く音。それと同時に、私の名前を呼ぶ・・・少し懐かしい声。
 私は扉へと振り返った。
 そこには、種島さんがいた。
ファミレスでバイトを一緒にしていた時から、あまり身長は変わってないけど、髪を切って少し大人びた印象になっていた。黒いドレスが似合っていることに、失礼だけども少し驚いた。
 それでも、忘れるはずはない。私は顔をぱあっと明るくさせて、種島さんへ駆け寄った。

「種島さん!!」

「わっ! だめだよ、走っちゃ。ドレスが汚れたり破れたりしちゃったらどうするの!」

「わっ。・・・う、うん大丈夫。それより、来てくれたんだね!」

 少ししゃがんで、久しぶりに会えた種島さんに私は抱きついた。
 小柄な種島さんは、女の私が抱きついただけでも危うくバランスを崩しそうになったけど、笑顔で抱き返してくれた。

「もちろんだよ! 私達、二人のキューピッドだよ!?」

 えっへん! と、小さい体に似合わない大きな胸を張りながら種島さんは答えた。うう。羨ましい・・・。
 でも、そんな種島さんが可愛くて、懐かしくて、私は思わず涙が出てきそうだった。

「わわわっ! 泣いちゃだめ! お化粧取れちゃう!!」

「ご、ごめん・・・。でも、嬉しくて・・・」

 涙を、化粧を崩さないよう慎重に拭いながら、私は笑って返した。
 えへへ。と、照れるように笑う種島さんが、本当に愛おしく思える。

「私が、まひるちゃんどうしてるのかなー、って式場で話してたら、相馬さんがここを教えてくれたんだ。本当はよくないのかもしれないけど、来ちゃった。ごめんね?」

「ううん! 嬉しい。ありがとう、種島さん」

 その話を聞いて、また涙がにじみ出してきた。そんな私を、種島さんは慌てながらなだめてくれた。

「もー。今から泣くようじゃ、まともに今日進行できないよ? それに、私だけじゃないんだよ?」

「え?」

 涙を丁寧にぬぐいながら、種島さんが控室の扉へと手を差し出す。
 すると、すぐに八千代さんと杏子さんが入室してきた。八千代さんは赤いドレス。店長は黒のシックなスーツを纏って。
 そして、その後ろから少しためらうように、松本さんが入室した。長い髪を後ろで膨らむようにまとめている。スタイルの良さもあって、黒いドレスがとても大人びた印象だ。

「八千代さん!! 杏子さん!!」

「久しぶりまひるちゃん! 綺麗ね・・・」

「そんなことないですよ。八千代さんのドレス姿の方が似合ってました! ね、杏子さん」

「ん? あー。どっちもいい、ってことでいいんじゃね?」

「もう杏子さん! 私嬉しいです!!」

 ハートマークを振りまきながら杏子さんにしがみつく八千代さんの姿は、バイト時代から変わらない光景だった。
 一応、旦那さんいるのに・・・いや、諦めているのかな。あの人は。まあ私も、八千代さんと杏子さんがこのように接していない姿は想像できない。

「て、ていうか・・・本当に大丈夫なんですか? 勝手にここまで来ちゃいましたけど・・・」

 不安そうに辺りを見回しながら尋ねるのは松本さん。
 トレードマークの赤縁の眼鏡は今も変わらずで、その奥の瞳があたふたと揺れ動いている。

「大丈夫だよ松本さん! 相馬さんがしばらく誰も来られないようにしてくれたっていうから!」

「そ、それが余計に不安なんだけど・・・。と、というか、私まで来てよかったの? 私、その・・・バイト時代も、そんなにあなたとは親しく・・・」

「そ、そんなことないです! 松本さん、私が宗太君に贈るプレゼントとか一緒に選んでくれたじゃないですか! 今でも、本当に感謝しているんです。来てくれてありがとうございます。松本さん」

 私が当時のことを思い出しながらそう礼を言うと、松本さんは顔を真っ赤にして、何も言わなくなってしまった。たぶん、照れているんだと思う。

「あのね? 葵ちゃんも来ているはずなんだけど・・・どこに行っちゃったのか、見つけられなくて。だから、私達だけ・・・」

「そうなんだ? 迷子になってないといいけど・・・」

「あいついい歳のくせに、落ち着き全く無いからな」

「え? 杏子さん、葵ちゃんによく会っているんですか?」

 ふう。と、呆れたように溜息をつく杏子さんに、私は問いかけた。

「いや。あいつ、よく店来るから。相変わらず馬鹿なことやって帰ってくよ」

 山田さんを接客する時のことを思い出しているのか、面倒くさそうに頭を掻く杏子さんに、私と種島さんは苦笑いを浮かべた。

「八千代さん。その・・・佐藤さんは?」

 私が、おそるおそる、といった調子で聞くと、八千代さんはにこっと笑った。

「ふふ。まひるちゃん? 私も、今は『佐藤』よ?」

 少しだけ照れくさそうに、八千代さんは笑った。
 その顔は、とても・・・とても幸せそうで。私も思わず笑みがこぼれた。

「そう、ですよね。すいません」

「何言ってるの。まひるちゃんも、今は『小鳥遊』でしょ?」

 八千代さんに言われて、思わず、息が漏れた。
 ・・・そうだ。
 そう、だよね。

 私の、今の名前は、「小鳥遊まひる」。
 愛する彼と、同じ名字になった。

 ここは、結婚式場。その、新婦控室。
 巨大な鏡や化粧台が設置されていて、私は十数分前に式の準備を終えたところだった。

 輝くような、純白の生地。
 手でそれをなぞれば、さらさらとした心地よい感触が指に伝わる。

 ずっと、憧れていた。
 絵本の中にしか、無いと思っていた。

 そんな、ウェディングドレスに、私は身を纏っていた。

「・・・改めて、結婚、おめでとう。まひるちゃん」

 八千代さんが、優しい笑みを携えながら言った。

「おめでとう。まひるちゃん」

「ん。おめでとう」

「お、おめでとうございます」

 それに続くように、種島さんも、杏子さんも、松本さんも。私に祝いの言葉を送ってくれる。
 しばらく、息を呑んで何も言えなくなってしまう。
 でも、やっぱりこの言葉は言わなくちゃ。と、私は出来る限りの笑みを浮かべて、こう返した。

「・・・ありがとう、ございます・・・!」

 目からまた涙が溢れてきそうになって、種島さんがハンカチを差し出してくれた。
 私はその厚意をありがたく受け取り、ハンカチで涙をそっと拭った。





「・・・あと、30分か」

 控室の壁にかけられた時計を見上げ、俺は呟いた。
 先ほどから、何をやっても落ち着かない。普段着なれない服はどこか窮屈な気もするから、座っているのも精神を擦り減らすような気がする。
 だからといって立ちあがってみても、心は落ち着かない。それは当然だ。そんなことで落ち着くような状況では無かった。
 ・・・こんなこと、経験無いからな。当たり前だけど。

「・・・まひる、どうしてるかな」

 別の控室で、俺以上に念入りに準備をしているはずの彼女が気になって、俺は一人で呟いた。やはり、俺はよほど精神状態が安定していないのだろう。独り言が多い。
 立ってうろうろしていても仕方ない。と、立ちっぱなしで疲れた足を癒そうと椅子に座ろうとした。

 その時だった。

「たーかなーしくんっ」

 控室の扉が音をたてて開き、そこからひょこっと顔を出したのは・・・俺にとって、懐かしい人だった。

「そ、相馬さん!?」

 慌てて立ち上がり、相馬さんを出迎える。
 相馬さんは、バイト時代はまず見ることがなかった黒のスーツを着込んでおり、その姿が少し新鮮だ、と俺は思っていた。
 俺が出迎えようとすると、相馬さんは「いいよいいよ」と、笑いながら言った。

「お久しぶりです。2年ぶり、ですよね?」

「そうだなー。佐藤君の式以来だから、正確には1年と11カ月8日ぶりだね」

 はっはー。と笑顔を絶やすことなく、相馬さんはそう言った。
 その無駄な細かさ。そして、この胡散臭い笑顔はやはり相馬さんだ。と、俺は逆に安心してしまった。

「そ、それにしても、よく入れましたね? 外に誰かいませんでした?」

「んー? まあ、そういうことは気にしなくていいじゃない」

 先ほどより1オクターブ高く、相馬さんは笑った。
 ああ。深く追求したら色々と憂鬱な気分になりそうだ。と、俺はそれ以上追及しなかった。
 でも、そんなところもやっぱり相馬さんらしい。

「・・・どうして、ここに?」

 当然の疑問を投げかけると、相馬さんは笑顔を絶やさず、

「壮絶なラブストーリーを描きながら、ここまで辿り着いた小鳥遊君が、式の前にどんな顔をしているのかなー。とかが気になって!!」

 ああもう。この人はいつでも楽しそうだ。
 まあ、でも、正直緊張と不安で控室をうろうろとするしかなかった俺からしてみれば、相馬さんの訪問は非常にありがたいものだった。

「・・・ありがとうございます。相馬さん。嬉しいです」

「いやいやー。迷惑じゃないかなーとかは少し思ったんだけど、そう言ってもらえると嬉しいね。・・・それと、俺だけじゃないんだよ?」

 そう言うと、にやにやと笑いながら、相馬さんは控室の入り口へ視線を送った。
 開いた扉の端に、黒いスーツを着込んだ腕が僅かに見えている。

 誰だろう。と、ほんの少しだけ考えたが・・・すぐに気づき、俺は半ば確信しながら、こう声をかけた。

「・・・佐藤さん」

 見えていた腕が、ぴくりと動いた。
 しばらくすると、佐藤さんが俺と視線を合わせようとはせずに入室してきた。
 バイト時代は金色に染めていた髪は、現在は黒に戻っている。そりゃあそうだ。あんな金髪の人間を普通の会社は雇ってはくれない。特に、佐藤さんは安定した職業につかないわけにはいかなかったのだから。
 ・・・まあ、髪が黒くなったのは、2年前会った時からそうだったんだけど。

 相馬さんの隣まで歩み寄ってきたところで、ようやく俺の顔を見てくれた。
 そして、

「よう」

 短く、右手をあげながら適当な挨拶をした。
 こんな、改まった挨拶や場が苦手なのは、いつ会っても変わらない。やはり、佐藤さんなんだ、と認識させられるようで安心する。

「本当は音尾さんも誘ったんだけどね。若い人達だけの方がいいよ、って断られちゃった。まあ、あの人はスピーチの原稿も覚えなきゃいけないから、仕方ないね」

「気持ちだけで嬉しいですよ。・・・佐藤さんも、ありがとうございます」

「ん・・・まあ、相馬が誘ってくれてな。・・・暇だったし」

「なーに言ってるのさ佐藤君!! 『小鳥遊、大丈夫なのか?』とか3分に1度のペースで言ってたくせに・・・いったい!! 痛いよ佐藤君足踏まないで!!」

 堅い革靴を履いているにも関わらずそれが大きく凹み、涙目で訴える相馬さん。やっぱりこれも懐かしい。
 何秒間か相馬さんを踏みつけると、佐藤さんは足を相馬さんの足からどけて、頭を掻きながら俺を見た。

「・・・ん。まあ、その・・・緊張するからな。この時は」

 相馬さんに言われて少し恥ずかしいのだろうが、佐藤さんはそう言ってくれた。
 俺は、佐藤さんが俺のことをそんなに心配してくれていた理由が分かって、笑って返した。

 そうか。佐藤さんも、この経験はあるんだもんな。
 普段は落ち着いていても、正直かしこまった場に対する適応力は皆無と言ってもいい佐藤さんのことだ。きっと俺の何倍も落ち着かない様子でこの控室を歩きまわっていたに違いない。

「いやー。楽しかったなあ。何回も座ったり立ったりを繰り返したり、もう吸うのやめたはずなのに煙草を吸おうとして、持ってないことに気づいて項垂れてを繰り返して・・・の佐藤君! 面白かったね!」

「お・ま・えは何で知ってるんだよ・・・!!!」

 スーツにも関わらず相馬さんの胸ぐらを掴みあげる佐藤さん。しかしその顔は正直怒りよりも羞恥心の方が勝ってしまっており、相馬さんも胸ぐらを掴まれているにも関わらず笑いっぱなしだ。
 しばらくして、舌打ちをしながら手を離す佐藤さん。ああ。本気で怒鳴り付けないところがこの人の優しいところだな。

「えっと、煙草、やめたんですね。知りませんでした」

 俺が尋ねると、佐藤さんは酷くばつが悪そうに、また頭を掻いた。
 それから、少しためらうように口を開く。

「・・・しゃあねえだろ。病気になったら嫌、って泣きつかれたんだから」

 それを誰が言ったのかは言及しなかったが、佐藤さんを知っている人間で、誰の言葉かを分からない人間は恐らくいないだろう。
 俺はまるで相馬さんのような笑みを浮かべて・・・あ、もちろん相馬さんも同じ笑みを浮かべて、佐藤さんを見た。
 お前ら・・・! と佐藤さんは恨めしそうに言ったが、本気で怒ってはいない。なんというか、こう、幸せなオーラが滲み出している気がするくらいだ。

「チーフ・・・というか、八千代さんは?」

 別に佐藤さんをからかうつもりで聞いたわけではないが、佐藤さんは一瞬むっとした表情を浮かべてから、俺の問いに対してすぐに口を開いた。

「たぶん、伊波のとこだろ。なあ相馬」

「そうだねー。でも佐藤君? 伊波、じゃないでしょ? ねえ、小鳥遊君」

 相変わらず不敵な笑みを崩すこと無く、相馬さんは佐藤さんにそう言った。
 すると佐藤さんは、俺をしばらく見てから・・・うっすらとだが、確かに笑った。

「ああ。そうだったな。あいつも『小鳥遊』だったな」

 そう言われると、俺は・・・なんというか、恥ずかしくなってしまって、恐らくは赤いだろう頬をぽりぽりと書いた。

「・・・ま。改めて、結婚おめでとさん。小鳥遊」

「おめでとう。小鳥遊君」

 二人の祝いの言葉を聞いて、俺は、現在置かれている自分の状況を改めて理解したような気がした。
 
 そう。俺とまひるは、今日・・・結婚式を挙げる。
 もちろん、もう籍は入れているのだが。それでも二人でこの日待っていた。
 
 俺は真っ白なタキシードに身を纏い、今頃まひるはウェディングドレスを着こんでいるはずだ。

「・・・ありがとうございます」

 俺が笑いながら礼を言うと、二人も笑って応えてくれた。






「まひる? そろそろ時間よ」

 結婚式まで、残り10分。
 お母さんが控室まで迎えに来てくれた。私程着飾ってはいないけれど、お母さんのこんな豪華な装いを私は初めて見ると思う。

 種島さん達は、私を励ましたあとすぐに式場へと戻っていった。
 ほんの数分間だけだったけど、種島さん達との会話は、私の緊張をすっかり解きほぐしてくれていた。

「・・・やっぱり綺麗ねー。昔の私そっくり!」

「もう。何言ってるのよ」

「まあ、私そっくりってのは冗談として・・・。きっと、お父さんも喜ぶわー」

 お父さん、という言葉を聞いて、私は苦笑を浮かべてしまった。

「そ、そうかな・・・。結婚だってなかなか許してくれなかったし、結婚式にも来ないって言ってたし・・・」

 そう。お父さんは私と宗太君の結婚を、壮絶なる説得の末認めてはくれたものの、やっぱりそうそうに全て認められるものではないらしく、宗太君の家族とも殆ど接しなかったりで・・・正直、恥ずかしい。
 宗太君の家族は全然気にしないでくれているけど、それでも失礼には違いない。いい加減、大人になってほしいというか・・・。

「ふふ。お父さんはあんなこと言ってたけど、きっと来てるわよ。だって、まひるの人生の一大イベントだもの」

 私のドレスのチェックをしながら、お母さんはそう言ってくれた。
 正直、私はお父さんが来ようが来まいがあまり気にしないけど・・・。
 ・・・でも。やっぱり、少しさびしい気もする。

「・・・さっ。行きましょう。宗太さんが待ってるわ」

 愛しの彼の名前を聞くと、それだけで安心したような気がする。
 私はゆっくり頷くと、お母さんに手を引かれて、控室を後にした。

 もう少しで、結婚式が始まる。
 子どものころから、ずっと憧れていた、結婚式。
 その場に、今から私が立とうとしている。

 色んな人に、支えられて。
 色んな人に、愛されて。
 私は、今から・・・

「・・・お母さん」

「なーに? まひる」

「・・・ありがとう」

 ただ、笑顔を浮かべて。その一言を伝えた。
 こんな厄介な病気を持っていても、変わることなく、私とずっと接してくれてきたお母さんに。
 大好きな、お母さんに。

「・・・ばかね。お礼を言いたいのは私よ」

 お母さんが、私を抱きしめた。
 最後に抱きしめられたのは、もう覚えてもいないほど昔のことだけど・・・この温かさが、とても懐かしい気がして、私はまた涙が溢れそうになった。

「だめよまひる。泣くのは、式が始まってから。愛する人の横で泣くのが、結婚式なのよ?」

 私の鼻をちょん、と押してお母さんが言った。
 その言葉の意味をすぐに理解して、私は涙を堪えた。
 今日貯めに貯めた涙は、式場で流そう。
 そう、彼の横で。

「さ。まひる」

 お母さんの差しだした手をしっかりと握って、私は式場へと向けて歩き出した。




「宗太。そろそろ時間だぞ」

 控室の入り口から聞こえる声に、俺は振り返った。
 そこにいたのは、俺の家族・・・まあ、より簡単に言えば姉達と妹だ。
 普段より着飾ってはいるが、あまり新鮮な感情が湧いてこない。と言うのも、一枝姐さんはスーツだし、泉姐さんは黒いドレスを着ていて・・・正直、普段見ている姿とあまり変わらないと思うからだ。

「ああ。今行く」

 まあ、そんなことは思っても言わないし、言う程大したことじゃないとも思っている。
 俺が服装の最終チェックを始めると、梢姉さんが俺にひっついてきた。

「宗太ぁ~。本当に結婚しちゃうんだね~。お姉ちゃん寂しい~」

「わ! 強く抱きつくな! 服が・・・って梢姉さんもう酒飲んでるのか!?」

 そう叱りつけても俺に抱きつくのを止めない梢姉さんを、なずなが引きはがす。
 背は、俺を追い越してちょっとしたら成長が止まったが、年相応に色々とたくましく育ってくれた。

「お兄ちゃん、怒らないであげて。梢おねえちゃん、お兄ちゃんがますます家に帰ってこなくなるって寂しがっているだけなんだよ」

 まだくだを巻いている梢姉さんを抱えながら、なずなは笑顔でそう言った。
 そう言われると、何も言えなくなってしまう。

 俺とまひるは、現在同棲中だ。まあ、これからは夫婦として一緒に暮らすことになるのだが・・・。同棲が始まってから、梢姉さんは俺を酷く気遣っている、というなずなの話だった。
 まあ、そうなずなから聞いてもすぐに信じることはできなかった。だけど、落ち着いて考えてみたら、梢姉さんからのメールは多くなっていたし、その内容も俺とまひるの安否を気遣う物が多かった。いや、まあ残りのメールは全てくだらない物ばかりだったけど。見事なまでに両極端なメールだ。

「・・・私も、寂しくないわけじゃないけど。でも、私が頑張らないと小鳥遊家は崩壊しちゃうもんね! 私、お兄ちゃんの代わりに頑張るね!!」

 笑顔を浮かべて、なずなは握り拳を作り意気込んだ。
 本当に、たくましく育ってくれた。俺には目からあふれ出る涙を止める術が無い。

「宗ちゃん。結婚、しちゃうのね・・・」

「泉姉さんまで何言うんだよ。・・・まだ介護が必要?」

 目から涙をしくしくと流しながら言う泉姉さんに、俺は少しからかうように言った。
 泉姉さんは・・・なんと、立っている。家の中で立つのにさえ俺の力が必要だった泉姉さんが、だ。
 俺が同棲を始める少し前から、梢姉さんに頼んでこっそりと体を鍛えていたらしい。なんでも、俺にいつまでも頼るわけにはいかないから、とのことだ。努力の甲斐あって、泉姉さんも一般生活ならなんとか過ごせるくらいまで体が鍛えられたようだ。

「う、ううん。介護はいらないけど・・・宗ちゃんがいない我が家なんて寂しくて寂しくて・・・。癇癪持ちの一枝姉さんに酔っ払いの梢ちゃん・・・。なずなちゃんしか希望が・・・」

「おい泉。自分を棚に上げるな。やっと歩けるようになっても、部屋の掃除も一人じゃできないんだからな」

 腕を組みながら泉姉さんを叱りつけるのは、一枝姉さんだ。泉姉さんが立って移動できるようになっても、二人の相性の悪さは変わらない。

「・・・あー。宗太。私から言いたいことは一つだけだ」

「・・・なに?」

 何を言われ、何をされるのか、と身構えてしまう。
 しかし、一枝姉さんは普段と変わらぬ凛々しい眼差しで、こう言い放った。

「まひるさんを、泣かせるな。あんないい子を、悲しませるな」

 俺は、目を見開いた。
 しかし、その言葉はすぐに胸の奥まで染み入ってくるようで、俺は深く、一度頷いた。

「・・・まあ、万が一にも離婚なんてことになったら、死ぬほどの慰謝料を絞り取ってやる」

 ははは、と笑う一枝姉さんだったが、間違いなく本気で言っているということは、この場にいる全員が理解できて、俺は冷や汗をかいた。

「・・・そろそろ行くぞ。まひるさんが待っているだろう」

 一枝姉さんは振り返り、一枝姉さんに続いて、梢姉さんも泉姉さんも、そしてなずなも控室から出て行こうとする。

「待って」

 俺が呼び止めると4人は振り返った。
 呼び止めたのには、もちろん理由があった。

 俺は、伝えたかった。

「・・・今まで、姉さん達には本当に苦労をかけさせられました」

 俺の言葉を聞くと、姉さん達は顔をしかませたり涙目になったり、それぞれが反応した。

「でも、みんな働いて、父さんと母さんの代わりに家を支えてくれた。俺がいなくなったら家事をまともにできる人もいないのに、何も言わずに、見送ってくれた」

 姉さん達は、何も言わなかった。泉姉さんは、目にいっぱいの涙をためていた。

「なずなも。いつも俺のことを励ましてくれた。俺を助けるため、っていつも言いながら、立派に成長してくれた。お前がいるから、俺は安心してまひると結婚できるんだ」

 なずなを見つめながら言うと、なずなは少し照れるように笑った。

「・・・本当に、今まで・・・ありがとうございました」

 頭を下げ、感謝。まだ、これくらいじゃ足りないくらいだけど。少しでも。俺のこの気持ちを少しでも多く伝えたい。
 俺の、愛する家族へと。

「・・・馬鹿だな。そんなことわざわざ言わなくてもいいのに」

「そうよ~。弟の幸せは私達の幸せよ? ねえ、泉姉!」

「うん・・・!! 私こそありがとう。宗ちゃん・・・!!」

「お礼を言いたいのは私の方だよ。お兄ちゃん。今までありがとう」

 一枝姉さんは微笑み、梢姉さんは朗らかに笑い、泉姉さんは泣きじゃくり、なずなは笑顔で俺に礼を言ってくれた。

 そんな素晴らしい家族に向かって微笑みかけてから、俺は会場へと向かった。




 先に新郎新婦の入場口前に着いたのは、小鳥遊一家であった。
 入場口前には数人の式場のスタッフがいて、まひるも来たら、式の最終手順を確認する、とのことだ。

 まひるがやって来たのは、ほんの数分後だった。

 その姿を見た誰もが、息を呑んで見とれてしまった。

 真っ白なウェディングドレスに身を纏ったまひるの姿は、間違いなく、彼女が生きてきた生涯の中で、最も美しいものだった。

 宗太も当然、半ば呆然とした様子でまひるを見つめている。
 まひるはというと、照れてしまっていて宗太の顔をまともに見ようともしない。

「ほらまひる。宗太さんと何か話しなさいな」

「きゃ!」

 まひるの母がまひるの背中を押す。まひるは小さな悲鳴をあげながら、宗太のすぐ傍へとよろめきながら近づいた。
 そこで初めて、まひるは宗太の顔を見た。
 お互い、顔が赤くなる。何を話せば分からない、といった様子なのは誰から見ても明らかだ。

「・・・あ、その。まひる」

「な、何!?」

 宗太が一言声をかけただけで、まひるは上ずった声で返事をした。
 そんながちがちに緊張した彼女に、宗太は微笑んだ。

「綺麗だよ」

 たった一言。短くそう伝えると、まひるはぱあっと顔を明るくさせた。

「あ、ありがとう。宗太君! 宗太君もかっこいいよ!」

 満面の笑みを浮かべて言うまひるに、宗太も笑った。
 そんな二人を微笑ましく見つめる家族。

「・・・じゃあ、私達は式場に入っているからな。しっかり手順を確認するんだぞ」

「じゃあ私も行くわね? まひる、緊張して失敗しないようにね~」

 そんな家族は、にやにやと笑いながら式場へ行ってしまった。

「それじゃあ、式が始まるまで時間も無いですし、手順の最終確認をしましょう」

 スタッフの言葉に、二人は頷いた。




「それでは、入場まであと15分程になります。もう少々お待ちください。5分前になりましたらまた来ます」

 スタッフが笑顔を浮かべながら言うのに頷いて応えると、スタッフはまだ作業があるのか、どこかへ行ってしまった。
 
 残されたのは、真っ白な正装に身を纏った、新郎新婦。
 二人で隣り合って立っていたが、しばらくの間沈黙が流れる。
 こんな時になって、改めて何を言えばいいのかどちらも分かりかねているのだ。

「あ・・・えっと、まひr」

『ジャーン!!!!』

 本当に・・・本当に、突然の出来事であった。
 まひるに何か話しかけようと宗太が口を開いた瞬間、新郎新婦入場口の横に置いてあった二つの巨大な壺の中から、二人の人間が現れた。

 その正体とは。

「ふふふ。桐生と!!」

「葵!!」

参っ上!!!!

帰れお前らああああああああああああ!!!

 こんな大声でツッコむのも何年ぶりだろうか、という程の大声で宗太が怒鳴った。
 壺から半身のみを出してポーズを決めているのは、桐生と葵の兄妹であった。もう、物凄いいい顔である。言いかえると物凄いどや顔である。

「ふふふ。葵。小鳥遊君もまひるさんも驚愕に顔を染めているぞ」

「ええ。やりました。作戦大成功です」

「よし。お前ら座れ。俺が殴る前に座れ

 誰から見ても分かる程、宗太の顔は怒りに満ちていて、注視してみれば周囲から謎のオーラが発されている。ような気もする。
 そんな宗太とは対照的に酷くご機嫌な兄妹を見て、まひるはただただ苦笑を浮かべていた。

「えっと、その。どうしたの? 葵さん」

「ふふふ。きっと式を控えて、お二人が『なあばす』になっているだろうと思いまして。そこで二人を元気づけてあげようと計画したわけです」

「その通り! しかし、当然のこととはいえ、まひるさん美しい。まるで女神。いや、天女・・・ああもう。そんな言葉では形容することは不可能だ! 小鳥遊君もそう思うだろう!?」

帰れ

 親指をぐっと下に向け、宗太は吐き捨てるように言い放った。
 しかし、この男がそんな言葉でくじけるはずも無い。悲しきかな。そんなことは宗太自身が最も身に染みている。
 
「はっはっは! 俺達の予想通りだぞ葵! 小鳥遊君は、すっかり『なあばす』のようだ!」

「ええ。葵達が来る価値もあったってもんです!!」

「よし。いいや座らなくて。殴る。今すぐ殴る

 拳を握りしめ、それを振りあげ今にも降ろしそうになるのを、まひるが必死に止める。
 とても、懐かしい光景だった。少なくとも、ワグナリアでバイトをしていた時以降は、まず見ることのできなかった光景。

「はあ・・・はあ・・・!! ていうか、何でこんなところに隠れてるんだ! 相馬さんや佐藤さんと一緒に控室に来ればよかっただろ!?」

「そうだよ。葵さんも、控室に来てくれればもう少しゆっくりお話できたのに」

「ん? 何だ、それ。控室?」

「もー。何を言ってるんですか! 控室なんか行ったら怒られちゃいます!」

「壺の中に隠れる方が何十倍と怒られるわ・・・!! というか怒るよ。俺が」

 とりあえず怒りに身を任せ二人をぶん殴りかねない宗太を制止しながら、まひるは控室に種島や八千代が来てくれたことを説明した。それに続いて宗太も控室に相馬と佐藤が来たことを話した。
 すると、教科書に乗せられる程の「悲しみ」の表情を浮かべ、二人は立ちつくしていた。もう、後ろに「がーん」という文字が見える。

「ひ、酷いです!! 葵が壺の中でひっそりと待っている間にみなさんで楽しくお話をしているなんて! 仲間はずれですか!! 葵はずれですか!」

「そうだぞ小鳥遊君! それでも友達か!! 親友か! 最低だぞ!!」

「まひる。放してくれ。俺はこの二人に制裁を加えなければならない

「お、落ち着いて宗太君!!」

 青筋を顔に何本も浮かべながら宗太は二人に滲みよるが、まひるがそれを許そうとはしない。男嫌いが緩和し始めたころからまひるの筋力はだいぶ衰えたが、それでも宗太と拮抗するほどの筋力はまだ有しているらしい。
 しばらくは全身に力を入れ憤っていた宗太だが、しばらくすると頭も冷えたようで、体から力を抜いた。

「・・・ま、まあ。挨拶に来てくれたことには感謝するよ。ありがとう、二人とも」

「おお。遠慮するな宗太君。もっと褒めろ。もっと褒めろ」

「ところで、引出物は何ですか!? お皿ですか!? 二人のラブラブ写真の印刷されたお皿ですか!?」

もう帰れお前ら本当に!!

 式場の出入り口を全身全霊の力を込めて指差すと、もうやりたいことをやって満足したのか、桐生と葵は仲良く式場へと向かっていってしまった。ていうか、もう式自体は始まっている頃だと思うんだが。何なんだ。あの二人は。

「宗太さん、まひるさん! あと数分で入場になります! 準備を!」

「あ、はい!」

 スタッフが駆け寄ってきて、宗太とまひるにそう声をかける。
 いよいよ、という程、式の本番が目の前に迫っている。
 しかし、なんだかんだであの馬鹿兄妹に怒鳴ったせいで緊張が解けたのか、思っていたよりは落ち着けていた。

 スタッフが二人の服装の最終チェックを終えると、いよいよ周囲にも緊迫した空気が流れ始めた。

 宗太は、真横に立っているまひるに目を向けた。

 ・・・おおむねの予想通り、まひるはがちがちに緊張していた。息は荒く、手は震え、目もどこか焦点が合わさっていない。あの兄妹が来ていなかったら、今頃倒れていたかもしれない。そう考えると、あの兄妹にはあとでやはり感謝しておくべきだな。と宗太は思っていた。・・・そして、やっぱり嫌だな。とも。

「・・・まひる」

「は、はい!! こ、このたびはこのような席に皆様お忙しい中集まっていただき・・・」

「早い早い。いや、ていうかそれを言うのはまひるじゃないよ」

「あ!! そ、そうか! えっと・・・じゃあ・・・。あ。わ、私と宗太君の出会いは、私が17歳の時・・・」

「いや。それもビデオかなんかでやるから。ん? やるのか? ていうかまだ入場していないから」

 もう、殆ど正気を保てていないらしい。
 宗太は小さな笑みを浮かべながら、溜息をついた。

「・・・まひる。何も言わなくていい。ただ、聞いててくれ」

 式場へ入るための扉を見つめながら、まひるに声をかける。
 まひるは宗太の顔を一度見上げ、それからぎこちない様子で一度頷いた。

「・・・俺、正直、今でも夢なんじゃないかなって思ってる。だって、まひると初めて会った時のことははっきりと覚えてるけど・・・今思い返してみても、この女と結婚する、なんて。想像もつかなかったから。たぶん、それはまひるも同じだと思う。そうだろ?」

 まひるも、思い返していた。宗太と初めて出会った日のこと。
 ワグナリアの裏でシフトボードを見つめ、種島と話を交わしていた宗太を、当時のまひるは全力で殴った。
 その時の第一印象は・・・宗太は「暴力女」、であったし。まひるは、「男」という認識しか無かった。何をどう間違えても、結婚まで辿り着くなんてあり得ない。そんな二人の関係のスタートだった。

「・・・でも、何故か俺がまひるの担当になって。そりゃあ、何発も何発もぶん殴られて。何回もバイト止めようかと思ったし、まひるのことも、大嫌いなままだと思ってた」

 そこで宗太は、はっきりと笑いを零した。当時の様子を思い出したからだ。

「不思議なもんだよな。気づいたら、好きになってた。俺はまひるを。そして、まひるも俺を好きになってた。お互いの気持ちを知った時のお互いの顔は、たぶん一生覚えてるんだろうな」

 懐かしむように笑って、宗太はまひるを見た。
 まひるも、笑っていた。今も昔も、赤面症は治っておらず、まひるの顔は真っ赤だった。

「それで付き合って。どんどんどんどん好きになって。・・・そして、結婚することになった。信じられないよな。昔の俺達に言っても、絶対に信じてくれない」

「・・・そうだね。本当に、信じられない」

 宗太が話を始めてから、初めてまひるが口を開いた。
 そこで、お互いに顔を見合わせる。そして、また笑った。

「・・・でも、俺達は今、ここにいる。最高の家族、仲間達に祝福されるために。ここにいる」

「うん」

「夢じゃないんだ。何回頬をつねっても。何回目を閉じても、全然覚めないんだ」

「・・・うん」

「・・・まひる」

「なに? 宗太君」

 ゆっくり、一度深呼吸。
 それから、宗太は体ごとまひるに向き直る。その顔は、普段の彼らしく無いほど、真っ赤だった。
 まひるも、宗太の方を向く。その顔も、やはり赤かった。

「幸せになろう。二人で、一緒に」

「うん」

「幸せにする。もう、一人で寂しい思いはさせない。まひるの子どもの時の人生分も、俺と一緒に過ごそう」

「うん」

「いつまでも、俺は横にいる。まひるの横に。だから、まひるも俺の横にいてくれ」

「もちろん」

「・・・愛してるよ。まひる」

「私も。・・・愛してる」

 二人で、笑い合う。となり同士で。

 宗太もまひるも、願っていた。
 子どもが生まれても。
 その子どもが大人になっても。
 おじいちゃん、おばあちゃんになっても。
 いつまでも、こうして二人で笑い合えることを。

「もう間もなく、入場です!」
 
 スタッフの声に、二人は頷いた。

 そう。これは、始まり。

 小鳥遊宗太。そして、小鳥遊まひる。
 二人の人生の、スタート地点。

 そして。式場への扉が・・・開かれた。





 そこで、まひるは目を覚ました。
 目に映るのは、真っ白な天井だけ。決して、人で溢れた式場なんかでは無い。無数に鳴り響く拍手の音は・・・聞こえない。

 ・・・夢?

 覚醒しきってない意識のまま、まひるはベッドから体を起こした。

 やけに広いベッドの上には、まひるしかいない。まひるの枕の横には、もうひとつ枕が置かれていた。

 ・・・ああ。

 やっぱり。夢だったんだ。

 頭の中でそういう結論に行き着くと、まひるはくすっと微笑んだ。意識もだいぶ覚醒してきて、冷静に現実を受け入れ始める。
 自分がどこにいるのか。どういう状況なのか。

 広いベッドから足を降ろしゆっくりと立ち上がる。
 寝室のドアへ歩み寄り、そのドアを開けた。

 その向こうには。

「あ。おはようまひる。よく寝てたから、ご飯作っておいたよ。一緒に食べよう」

 エプロンを付け、フライパン片手にまひるを見て挨拶をする、宗太の姿があった。
 そう。まひるの夫である、宗太の姿が。
 
「・・・どうかした? もしかして風邪気味とか?」

 宗太が心配そうに尋ねるが、まひるは首をゆっくりと横に振った。
 そして、こう返すのだった。

「ううん。なんでも無いわ。・・・あなた」

 あの日と同じ笑顔を浮かべて。



 この笑顔は、きっと、いつまで経っても消えることは無い。

 子どもが生まれても。

 その子どもが大人になっても。

 おじいちゃん、おばあちゃんになっても。

 だって、

 彼と彼女は、いつだって、となり同士なのだから。



 
 









 あとがき

 ほなみんさん。いかがでしたでしょうか。俺の技術ではこれが限界です。

 えー。この小説を書くにあたってどういうことが辛かったのかと言いますと、小鳥遊と伊波以外のキャラの設定です。
 佐藤さんと八千代さんは結婚しているのか? とか。山田と桐生の関係はどうなったのか? とか。そういう店のメンバーの人間関係がどう発展しているのか、というのを考えるのにかなり悩みました。ていうか、山田と桐生が本当に兄妹なのかも俺少しだけ疑っているんですのでね(ぇ
 いや。九分九厘兄妹でしょうけど、まだはっきりと口にはされてませんからね。そういうのが本当に不安なのです。
 山田はこの時は多分、山田ではなく本当の名字を明かしているころだと思うので、一人称は山田ではなく、葵にさせていただきました。そして、小鳥遊と伊波が結婚しているのならばその前に佐藤さんと八千代さんも結婚してるな。と思ったので、二人は夫婦という設定。陽平さんと梢さんの関係とかはもう全く想像つかなかったので言及無しです。
 ちなみに、伊波と小鳥遊の一人称視点がメインなのであえて書かなかったのですが、俺の妄想だと、伊波の髪はバイト時代より少し伸びている設定です(ぇ
 結婚指輪に関しても何か書こうと思ったのですが、本当に結婚式に参加したのも小学校低学年くらいの昔で、どういったものなのかよく分からなかったのであえて書きませんでした。なんかすいません。
 終わらせ方は最初に考えていたので、結婚式部分が書けてから完成までは早かったです。結婚式で超時間かかってしまったんですが。

 でも、俺が一番よくしている妄想、小鳥遊と伊波の結婚をこうやってなんとか小説にすることができたので良かったです。ほなみんさん、リクエストありがとうございました。
 この小説はほなみんさんへ贈る小説でありますので、もし何かサイトなどを運営していたりしましたらお持ち帰りするなりなんなりご自由に扱いください。


 さて。これで、リクエスト企画の小説を全て更新したことになります!!
 リクエストをしてくださった方々、応募して下さった方々、そもそも20000ヒットするまでこのブログを訪れてくれた方々。本当にありがとうございました!!
 現在、27000ヒットなので・・・そこまで遠くない内にもしかしたら30000になるかもですね。その時は、今回と同じようにリクエスト企画をできればいいなあと思っています。まあ、今度やる時は4つは流石にきついので2つくらいになると思われますが。
 なんというか、一つの企画をやりおおせた充実感で胸がいっぱい。涙が出てきそう。

 えー。なんか講義中に東方小説考えてたら一つもうほぼ完成したので、近い内に更新することになると思います。WORKING!!のも書きたいけど、なにせネタが・・・!!

 それでは!
 
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小鳥遊×伊波 | コメント:5 | トラックバック:0 |
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コメント

銀河さん、流石です。最高です!
まひるの私だけの王子様発言は萌えました。
佐藤さんも幸せそうで何よりですね。更には泉姉さんが立った(笑)
一枝姉さんも流石のコメントです。まひるは良い娘ですからね。
なにせ、葵と桐生のうざいこと(笑)
そして桐生と宗太は、いつから親友になったのか(笑)
伊波父も認めたのなら、ことりちゃんになってまで説教した甲斐がありましたね(笑)
伊波母に早く孫が抱きたいとせっつかれる新婚生活が、容易に想像出来ますね。
みんなに祝福されて幸せになる。これぞ、たかいなですね!
願わくば、2人に多くの幸せがあらんことを。
たかいなは永遠です!
銀河さん、本当に素晴らしい小説ありがとうございました。
これからも、身体に気をつけて頑張って下さい。
2010-10-20 Wed 20:04 | URL | ほなみん [ 編集 ]
リクエスト小説もついにラストですね。
今回もとても面白かったです。もう完全に映像が脳内に浮かび、声もアニメのキャストでばっちり聞こえました。
原作見る限りまだまだこの未来には程遠い二人ですが、いつかこうなってくれることを夢見てます。やっぱり、伊波には幸せになって欲しいですから。

葵と桐生に関しては確実な証拠はまだありませんが、顔立ち、相馬さんの行動、山田の桐生の名前に対する反応、ウザさから考えて兄妹に間違いないと直感が告げています。なので、この小説の二人のノリは絶対未来の姿と考えています。原作でもし、兄妹そろったらこれくらいウザいんだろうなぁ……。

リクエスト企画をもし、またやってくださるのでしたら、今度もまた応募します。次こそは当選するように祈りを込めながら。

それでは、次回作も楽しみにしてます。
2010-10-20 Wed 22:58 | URL | 赤髪の探偵 [ 編集 ]
どうも!朝一番にDSで読ませていただきました咲乱那散です!!(は

今回のたかいな小説ですが…結果として、物凄く良かったです!!
まず、最初にまひるちゃんの男嫌いがピックアップされてたのが(表現として)よかったと思いまs(何様)。
まひるちゃんも普通の女の子なんですよね。そう思うと、男性恐怖症というのはとても辛かったと思います。
早速ワグナリアメンバーキターーー(°∀°)ーーーー! ぽぷらちゃんのショートカットは意外でしたね。でもなかなかいいかも。さり気無くさとやち発言が出てたのがもぉ、ファンとしては…! 杏子さん+八千代さんも健在でした/// 杏子さんと榊さんも進展してそうですね…! あと、なんだかんだで結婚式に来てあげる麻耶ちゃんも可愛いし優しいです。
キッチンコンビも健在でなにより。佐藤さん黒髪?それもかっこいいに決まってる!(キリッ 煙草の件は、八千代さん物凄い泣きついたんでしょうね、きっと。
小鳥遊君が家族にお礼を言うシーンもうるっとしました← 小鳥遊君はいつもあんな態度をしつつも、きっと家族が大好きなんだと思います。因みにこの後、泣いてる泉姉さんを一枝姉さんが慰めてあげると思う← 
山田(兄)まで登場とは…! 抜かりないですね。因みに、桐生+葵=うざさ2.5倍増しだと思います。それを制裁する小鳥遊君を止めるまひるちゃんの表情が容易に想像できますw
そして最後のたかいなは、ホントに見てる方も幸せになるような感じでした。小説でも行っていた通りに、今までのまひるちゃんの悲しみ(いや…苦痛?)分、それ以上の幸せを二人でつくっていくんだとおもいます。…いいなぁ、あたしもこんな幸せなお嫁さんになりたいです。
最後の『現在のたかいな』みたいなの(←)もとてもよかったです。

因みに、ラストの『もう間もなく、入場です!」のところのかぎかっこが無いです。

リクエスト小説、お疲れ様でした!
ところで、またキリ番企画をされるようですね。
あたしがこのブログを見つけたのがリクエスト小説2作目をうpされた頃だったので、今回の企画は参加できなかったんですよね…OTL
なので、もし次の企画があるなら、是非とも参加させて頂きたいと思います!
でわでわ、これからも頑張ってください!応援してます!

P.S.
このコメント、1つめがエラーで投稿できなかったようなので2つめなのですが…。
もしも1つめもちゃんと投稿できてたらごめんなさい;
長文・乱文失礼しましたっ!
2010-10-22 Fri 00:03 | URL | 咲乱那散 [ 編集 ]
漢検終わったー!!
もうしばらくは勉強したくないです。でもあと2週間くらいで期末テストだ・・・(泣
小説読みました。
伊波ちゃんがかわいいですすごくかわいいです
萌えってすごいですね゜+。(*′∇`)。+゜
勉強のストレスやイライラが全てなくなるなんて本当にあるんですね。本当にありがとうございますm(__)mこんなタイミングにこんな素敵な小説を・・
東方の小説も読みました!あーもうかわいいなー次も東方小説期待して待ってます。
あ、そういえばちょっと相談があるんですけど…
サイトの立ち上げ方教えて下さい!!すみませんお願いします。
さて、そろそろ書くこともなくなってきたのでまたコメントします!!
2010-10-22 Fri 23:37 | URL | 千亜希 [ 編集 ]
こんばんは、たかいな小説拝見いたしました。

もう……凄くよかったです…!萌えももちろんあるのですが、萌えを大きく上回る癒しというか感動というか…!
たかいなの結婚式は私もよく妄想しようと試みるのですが、いつもうまく妄想できないので、今回このような素敵な結婚話を読むことができて嬉しいです!ありがとうございます!そして素敵なリクエストしてくださった方にも感謝…!
ふふふ…小鳥遊くんは「まひる」で伊波さんは「宗太くん」呼びというところにただならぬ萌を感じます。

あと他キャラの絡みがいいカンジでした!特に山田(仮)兄妹(仮)。なんという安定したウザさ(誉め言葉)。さとやちが結婚しているという設定もにやにやしました^^佐藤さんマジ頑張った…!

また更新されるのを楽しみにしてますね!では失礼します。
2010-10-23 Sat 21:14 | URL | イチ [ 編集 ]

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