銀の働き部屋

管理人銀河の、日記兼テキストサイトです。取り扱うジャンルは主にヤングガンガン連載のWORKING!!になると思います。最近は東方の霖之助小説を書くのにも夢中。どうかよろしくお願いします。リンクはフリーです。感想は常に受付中です!もらえたら泣いて喜びます

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親しき仲にも涙あり  霖之助×慧音







 東方小説を更新しようと思います。
 その前に一つ聞きたいことがあります。俺はピクシブにも小説を・・・主に東方小説を投稿しているのですが、ピクシブの俺の情報って知りたい方いますでしょうか。もし知りたい方がいましたらなんらかの方法でお知らせください。
 ただ念のため言っておきますと、このブログに載せていない小説はありませんし(ブログより先に載せることはありますが)、そんな目新しい情報などを公開していません。というか、主に東方小説ですし。
 それでも一応は・・・みたいな方がいましたらお気軽に。

 んで、今回は霖之助×慧音で。タイトルは「親しき仲にも涙あり」です。信頼と安心のタイトルの適当感。思い浮かばんのよ何も。
 甘さは殆どありません。霖之助と慧音は友人って感じの設定にしてみました。

 それでは、続きからでどうぞ。


 小説のあとがきの後にコメント返信があります!!







 もうそろそろ、店じまいかな。

 魔法の森の入り口近く。そこにひっそりと佇んでいる古道具屋「香霖堂」。そこの店主である森近霖之助は、窓からすっかり光の無くなってしまった外を見て、心の中でそうつぶやいた。
 本を読むのにすっかりと夢中になってしまい、もう夜になってしまっていることに気づかなかったようだ。
 壁にかけた売り物の掛け時計に目をやると、本来の閉店時間はとうに過ぎ去っている。
 ・・・結局、今日も香霖堂を訪れたのは、白黒の魔法使いと、紅白の巫女のみだけであった。もちろん、客としてではない。ただの泥棒としてだ。被害、仕入れたばかりの珍しい置物と高級茶葉二缶也。
 もはやこんなことは霖之助にとっては慣れっこではあるが、それでも、決して気持ちのいいものではない。あくまでこの香霖堂は「店」。つまり、商品に対して、それに見合うお金なり品物なりを支払い、商品を「買う」場でなければならないのだ。決して、二人の少女が好き勝手に品物を持っていっていい場所ではない。・・・まあ、もっとも、彼女らが持っていったものは全てツケとして明確に記録しているのだが。

 泥棒のことばかり考えて、今日という日の残りを過ごすわけにはいかない。というより、過ごさない。終わらせられない。
 霖之助は店じまいをするために、同じ体勢でいたために固くなってしまった体をほぐしながらゆっくりと立ち上がった。

 と、同時に、店の扉につけた来客を知らせるためのベルが鳴り響いた。

「邪魔するぞ」

「・・・いらっしゃい」

 扉の向こうから現れた予想外の人物を見て、霖之助は目を丸くしながらも、しっかりと挨拶をした。

「おお霖之助。よかった。まだ店じまいにはしていなかったんだな」

 霖之助の顔を視認すると、その、水晶のような長い青髪を携えた女性は、やわらかに微笑んだ。

「今、しようと思っていたところだったんだよ。慧音」

 霖之助は小さなため息混じりに苦笑を浮かべると、そのまま椅子にまた腰を下ろした。

「そうか。それはわれながら絶好のタイミングだったわけだ」

 その女性、上白沢慧音は、笑みを崩すことなく少し誇らしげに言った。

「何か御入り用かな? 言っておくが、人里には降りないぞ」

 少しとげのある言葉で霖之助が言うと、慧音は分かりやすいむっとした表情を浮かべた。

「まだ何も言っていないのに、ずいぶんな言い様だな」

「なに。念のため釘をさしておいただけさ。もしその話をするつもりが全く無かった、と天に誓って言えるのであれば、素直に謝るが?」

「・・・まあ。やめようじゃないか。久々に会ったんだからそういうことを言うのは」

 ・・・どうやら、少しは言うつもりであったらしい。霖之助は、やれやれとため息をついた。そもそも、久々に会ったというのも、偶然に出会ったわけではなく慧音がこの香霖堂を訪れただけであるのだが。

「・・・で、改めてなんの用かな?何か用事のついでに寄っただけかい?」

「一人暮らしをしている友人を訪ねるのに、何か特別な理由がいるのか?」

「人里からここまではそれなりの距離があるからね。まあ、君たちにはあまり関係の無い話かもしれないが。それに、ここは店だ。まだ店じまいをしていない、ね。となれば、商売の一つや二つ成り立つことを期待しても罰は当たらないさ」

 さらりとそう返すと、慧音も先程のお返しのようにため息をひとつ。

「心配する必要など無かったな。私の友人はたくましく商売人として生きていた」

「へえ。心配をして来てくれたのかい。それはありがとう」

 霖之助が意外そうに言うと、慧音の顔が少し赤く染まった。

「い、いや。まともな商売もできずに飢え死にでもしていたらどうしよう、と思ってな」

 乾いた笑いを浮かべながらそう悪態をつく友人が少し可愛く見えて、霖之助は苦笑まじりの笑みを浮かべた。

「君も知っているだろうが、僕は飢え死にはしないんだよ。言っていなかったかな?」

 少し意地悪く言うと、慧音の顔がより赤くなった。

「い、いや。大事なのは、肉体の貧しさではない。心の貧しさだ!!」

 少し戸惑ってから、「いい言葉を見つけた!」と言わんばかりに人差し指を立て、その指をそのまま霖之助に突きつけながら慧音は言い切った。その顔はやはり赤いままだ。

「・・・流石は教育者だな。その言葉を胸に刻み、心を豊かにするよう励んでいくよ」

「そ、そうするといい。お前は面白みが無いからな」

 言ったやった、といった表情でほくそ笑む慧音を見て、彼女に聞こえないように霖之助はまた小さなため息をついた。
 この人里の守護者は、そのあだ名と、教師という役職の響きの割に、ずいぶんと子どもっぽく表情を変える。そんな彼女の姿がなんとなく哀れに思えてきてしまったからだ。

「・・・まあ、せっかくだし商品も見ていこうか。何か子ども達の教育に役立つような物は置いていないか?」

 慧音が尋ねると、霖之助は目を輝かせながら立ち上がった。こういうところは、流石商売人、というべきか。こういうところ、を普段あまり見せつけられないのが残念無念であるが。

「・・・こんな物はどうだろう」

 すぐ近くの棚に歩み寄り、一つのノートを取り出すとそれを慧音に差し出した。
 そのノートを受け取り、表紙と中身を少し確認してから、慧音は口を開く。

「これは、数字とマス目が書かれているが・・・どうやって使うんだ?」

「その道具の名は、『百ます計算帳』というんだ。使い方はすぐに理解できた。縦と横に書かれた数字が掛け合わさるますに、加法・減法・乗法・除法など、指定された法則で計算をして答えを書き込むんだ。一つ一つの計算はそれほど多くはないが、量が多いし、なかなかに解き応えがある」

 霖之助の説明を聞くと、慧音は感心したようにうなずきながら、計算帳をぱらぱらと捲った。

「なるほど。面白いな。書き写して子どもたちに解かせれば、効率的に勉強ができそうだ」

「そこは、生徒の数だけ買ってもらえるとありがたいんだが?」

「経費節減。節約できるところはしないと。そうだろう?」

 先程のお返しのように意地悪く笑いながら言う慧音に対し、霖之助は肩をすくめた。
 確かに、ここ数年で幻想郷における紙の価値は大きく低下した。このノートを大量に買うより、彼女が持っている紙に内容を書き写して必要な数を作り上げたほうがずっと得ではある。まあ、仕組みさえ分かれば手作りすることも簡単な物だ。
 とりあえず、計算帳一冊はお買い上げのようで、慧音はカウンターの上にそっと計算帳を置いた。

 この機会に、売れる物は売ってしまおう。と、霖之助は別の棚から小さな紙製の箱を取り出した。そしてその中身も取り出すと、慧音に渡す。

「・・・これは?」

 今度は推測もほとんどできなかったようで、金属製のその物体を様々な角度から眺めながら、慧音は尋ねた。

「それは、『知恵の輪』さ」

 慧音が持つ銀色に輝く、複雑な形の金属がカチャ、と音をたてた。

「知恵の輪?」

「そうだ。その知恵の輪は、二つの金属片が一つに組み合わさっている。それを二つに分けるのが僕たちの目的となる。だが、それは見た目よりもずっと複雑に組み合わさっている。しっかりとした手順を踏んで動かさないと、絶対に離れないようになっているんだ」

 へえ。と息を漏らしながら、慧音は知恵の輪をかちゃかちゃと動かし続けている。

「それを解くために様々な動かし方をする内に、思考力や発想力が鍛えられる。僕は一時間ほどかかったが、しっかりと解けたよ。初めてにしてはなかなかの記録だと・・・」

「あ。解けた」

 誇らしげに話していた霖之助が、慧音の声を聞くとゆっくりと彼女の手元へ視線を動かした。確かに、知恵の輪は綺麗に二つに分かれている。

「ほら。これでいいんだな? 凄くないか!?」

 目をキラキラと輝かせている慧音をまともに見ることなく、霖之助は用もないのに棚に置いてある道具をいじり始めた。その背中が異様に寂しげだ。
 そんな霖之助の様子に気づく様子もなく、慧音はご機嫌である。

「ふむ。私には簡単すぎたが、子ども達に遊ばせるにはちょうどいいかもしれないな。これも買うぞ霖之助。これはどうやって一つに戻せばいいんだ?」

「・・・箱の後ろに、書いてるよ」

 消え入るような小さな声で答えた霖之助の、先程以上に寂しそうな背中にはやはり気付かず、慧音は知恵の輪を一つに戻すと、それもカウンターに置いた。
 非常に憂鬱な気分ではあったが、いつまでもめげるわけにはいかない。と、目頭に浮かぶ涙を拭い慧音と向き直った。

「面白い商品ではあるが、私の専門は歴史だ。何か歴史の勉強に役立つ物は無いのか?」

 慧音の言葉を聞くと、ふむ、と霖之助は顎に手を当てて思考に耽った。
 歴史の勉強に役立つ物、と言われるとなかなか難しい。もちろん香霖堂には、地理書や歴史書など、様々な書物は置かれている。が、ここに置いてある書物の内容に慧音ほどの人物がまだ知らぬ情報が隠されている、とは考えにくい。外の世界の歴史書などを売ることも考えたが、なにせ、外の世界の書物だ。その信憑性は幻想郷の書物より遥かに少ない。

 どうしたものか。と長考していたが、そこで霖之助はあることを思い出した。

「そうだ。君に是非読んでもらいたい本があったんだ!」

 顔を明るくさせながら言う霖之助を見て、慧音はわずかに頬を染めた。

「わ、私に、か?」

「そうだ。君の授業に大きく貢献してくれること間違い無しのね」

 言いながら、霖之助は本棚の一つを探り始めた。
 慧音はぱあっと顔を明るくさせたが、すぐに我に返り、赤い顔のまま霖之助に背を向けた。

「ま、まあ。お前のことだ。どうせ碌でも無い本なんだろう? だ、だが、お前がそんなに言うのならば、読んでやっても・・・」

 歯切れも悪く、要領の掴めないことを小さな声で言うが、そんな慧音の言葉は霖之助にはまるで届いていない。まあ、背を向けているので霖之助が聞いていない、ということにも彼女は気付けていないのだが。

「あった。これだよ。慧音、是非読んでみてくれ」

 霖之助の声が聞こえると、慧音はまた顔を明るくさせて振り向いた。
 そして霖之助から本を受け取ると、その表紙へ期待に満ちた視線を落とした。
 表紙には、


『自信をつけよう!子どもが面白い!と思う話し方』


 ・・・と、書かれていた。

 その題名を読み取り、硬直してしまった慧音をよそに、霖之助は誇らしげに話し始めた。

「噂によると、君の話を聞く子ども達はひどく退屈そうだというじゃないか。それは、君の話し方が子ども向けじゃないんじゃないかと思うんだ。大人には大人の話し方、子どもには子どもの話し方があるだろう。君もそれくらいはよくわかっているだろうが、一つのことに夢中になると周りが見えなくなる君のことだ。無意識の内に話の内容が高度で難解な物へと変化してしまうのも仕方がない。その本には、そういう人のために『分かりやすい話し方』が丁寧にまとめられている。外の世界の本なのだが、図解も多く内容が理解できない、という心配も君ならばまず考えなくてもいいだろう。僕も一通り目を通してみたが、実に分かりやすくためになる内容だった。話し方は大事だ。僕も人に教えを説くのは好きだからね。その本を読めば、子ども達も君の退屈な需要から開放されるに違いない。その本の特筆すべきところは・・・」

 慧音を一切見ることなく、霖之助は息継ぎもほどほどに話し続ける。その勢いはしばらくの間は衰える様子が無い。

 ・・・霖之助の、人・・・いや、人妖としての信用を守るために、言わせてもらいたい。
 彼に、悪気などは一切無い。それどころか、彼の言葉には、善意しか無いのだ。自分が話していること全てが、目の前の女性の助けになる。と、信じて疑わない。いや、疑うことなど彼にとって有り得ない。何故ならば、彼にとってこれは、善意以外の何ものでも無いのだから。

 だから、霖之助は気づかない。目の前の女性が本を見たまま視線を上げる様子が無いことに。
 その手、肩・・・いや、体全体が小刻みに震えていることに。

「君の教育に対する姿勢は尊敬に値する物があるし、それ以外には言うことは何も無い。だが、『それ』は、君が思っている以上に大切なことなんだ。子ども達には、学ぶ楽しみが無ければならない。君の授業に、そうさせるための面白ささえあれば・・・」

 ・・・ようやく。
 ようやく、だ。
 霖之助が、慧音の様子がおかしいことに気づいた。本を見たまま姿勢を変えていないこと。そして、その体が震えていることに。

「慧音?」

「・・・ど・・・せ」

「え?」

「どうせ、どうせ私の授業はつまらないよぉ・・・!」

 慧音が顔を上げ、今にも途切れてしまいそうなか細い声を搾り出した。
 その目には、大粒の涙が浮かんでいる。

「・・・け、慧音?」

「そ、そりゃ、子ども達はいつも寝てしまうし、内容も全然覚えてくれないし・・・! で、でも、私だって・・・頑張って・・・!」

 目から大粒の涙をぼろぼろと零しながら、子どものように慧音は泣きぐずり始めた。
 そんな慧音の姿を、この幻想郷でかつて見た者がいただろうか。いや、おそらくはいないだろう。例え酒に酷く酔っ払っていても、よほど落ち込んでいたとしても、ここまで彼女が狼狽することなど決して無かった。
 涙を流し、聞き取りづらい震えた声を搾り出すその姿は、まるで子どものようだ。

「す、すまない。僕の言い方が悪かった」

 慧音ほどではないが、霖之助も少なからず動揺していた。彼女のためだけを思い話していたのに・・・そう。あくまで霖之助はそう思って話をしただけなのに、ここまで悲しまれたのではそれも仕方がないことだろう。まあ、第三者から言わせれば自業自得としか言いようがないが。
 霖之助はカウンターに常備しているタオルを手に取り、慧音の目元にそれを当て、そっと涙を拭った。

「だ、だいたい、お前が私のために選んでくれた本だっていうから、楽しみに、してたのに・・・!! そんな言い方すること、な、無いじゃないかぁ・・・!」

 それでも、慧音の涙は止まらなかった。
 どうするべきか。と、霖之助は必死に思考を巡らせた。彼は見た目には分からないが、その本心を覗き込めば殆どそんな彼を見たことはないであろう、と断言できるほどに焦っていた。
 本気で泣きぐずる少女と最後に相対したことなど、彼はもう何年前だったかも思い出せない。最後に相手をしたのは・・・魔理沙だったか。と、霖之助はそれだけは思い出していた。
 あの魔理沙と、目の前にいる人里の守護者が同じように泣いている。そう考えると、今自分が置かれている状況の異常さを嫌でも思い知らされる。

「・・・すまない。悪気は無かったんだ。頼む。泣かないでくれ」

 丁寧に慧音の涙を拭い続けながら哀願するように言うが、慧音はすぐには泣き止んではくれなかった。

 ・・・そもそも、慧音だって分かっている。霖之助に端から悪気など無いことを。
 それでも、悲しかった。霖之助に授業のことをさんざん言われたこともそうだが、一番は、霖之助に期待を裏切られたような気がしたからだ。
 ・・・もちろん、それは慧音が勝手に理想を思い描いていただけで、霖之助に非は・・・言葉を全く選ばなかった、という点以外は無いのだが。

 しかし、それでも。霖之助の言葉を聞いて、どうしようも無く悲しくなってきて・・・慧音は目から零れる涙を止めることができないのだ。

「だ、だいたい・・・私の、何が悪いんだ・・・! いつも、資料とかたくさん作ってるのに・・・!」

「君は頑張ってるよ。大丈夫。君が努力していることは、知ってるから・・・」

 慧音の泣き言に一つ一つ耳を傾け、霖之助は彼女の涙を拭き続けた。




 慧音の涙を霖之助が拭き続け・・・どれほどの時間が経っただろうか。

 ようやく、慧音の様子が落ち着いてきた。
 目は赤く腫れているが、涙はもう止まり、荒かった呼吸もだいぶ落ち着いたようだ。そんな慧音の姿を見て、霖之助は思わず安堵の息を漏らした。

「・・・大丈夫か? 慧音」

 心の底から彼女を気遣った声で霖之助が問いかけると、ゆっくりと一度うなずいてから、慧音は重い口を開いた。

「す、すまない。少し、取り乱した・・・」

 たっぷり泣いて、多少はすっきりしたのか。少し赤い顔で、思ったよりもずっとはっきりとした声で慧音は答えた。
 そんな彼女に対し、霖之助はゆっくりと首を横に振る。

「いや。僕があまりにも無神経だった。君がそんなに思いつめていたとは知らなかったから・・・。・・・いや、言い訳だな。とにかく、すまなかった」

 そう言ってから霖之助が深々と頭を下げると、慧音の顔がますます赤くなった。

 あんなに大泣きするほど授業について思いつめていたのではなく、お前の鈍感が原因だ。とは、とても言えなかったからだ。そしてなにより、恥ずかしかった。友人の目の前で、あれほどの醜態を晒してしまったことが。
 まあ、そんな慧音の気苦労は、残念なことに何一つ霖之助には伝わっていないのだが。

「い、いや。お前は、私のことを考えてこの本を選んだり、色々と言ってくれたんだからな。私が悪いんだ」

 一度咳払いをして、霖之助の目をまともに見ずに慧音は言った。
 そんな彼女の態度を、まだ怒っているとでも思ったのか。霖之助は深くため息をついた。

「・・・本当に、すまない。何か僕にできることは無いか?」

「いや、本当に気にしないで・・・」

 くれ、と言おうとしたところで、慧音は今日香霖堂へ来た理由を思い出した。慧音だって、わざわざ友人の前で泣きぐずるためだけにここに来たのではない。目的があったから、わざわざ人里からこの辺鄙な道具屋を訪れたのだ。

「・・・どんなことでも、頼んでいいのか」

 少し考えこんでから、慧音は静かに問いただす。

「・・・ま、まあ。できることならば。流石に商品を全部タダ、とかは勘弁願いたいが・・・」

 勘弁願いたいことがその程度だとすると、頼める範囲は相当狭いな。と、慧音は微笑んだ。
 しかし、たぶん、大丈夫。きっと、大丈夫だ。大丈夫に、違いない。
 そう信じて、慧音は口を開く。

「じゃあ。夕食を作らせろ」

 真っ赤な顔で。しかし、態度だけは堂々と、慧音は言い放った。
 その言葉を聞いた霖之助は、目を丸くした。

「・・・そんなことでいいのかい?」

「ま、まあな。あまり、無理難題を言ってはかわいそうだから・・・」
 
 慧音にとって、どんな無理難題よりも、この一言を言うことのほうがずっと勇気がいることを、霖之助はもちろん知らない。
 しかし、そんな慧音の心配は杞憂に終わった。

「・・・そんなの、大歓迎だ。まだ夕飯は食べていなかったし」

 微笑みながら霖之助が答えると、慧音は誰から見ても明らかなほど顔を明るくさせた。先程までの泣き顔が嘘のような表情の変化だった。

「そ、そうか? じゃあ、少し待っていてくれ」

 すると慧音は突然、笑顔を浮かべたまま店の外へ出ていってしまった。
 なんだ? と霖之助が首を傾げると、すぐに慧音がまた店へと戻ってきた。・・・手に、大きめの籠を持って。
 その籠からは、野菜の葉っぱらしきものなどがひょっこりと顔を出している。

「ま、待たせたな。じゃあ、今から・・・」

「いやいや。その籠は何だい?」

 霖之助が尋ねると、慧音はまた顔を少し赤らめ、小さな声で答えた。

「あ、いや・・・。その、そもそも今日は食事を作りに来たんだ。でも、もしかしたらもう食事を終えているかもしれないし、わ、私の食事なんか食いたくないかも・・・しれないし・・・」

 指先をいじりながら、もじもじ、といった表現がぴったりな口調で慧音は話した。
 そんな彼女を呆然とした様子で見つめながら、霖之助はまた問いかける。

「・・・だから、食材を店の外へ置いておいた、と? ・・・食材を持ったまま入っては、断りづらいだろう、と?」

「・・・」

 彼女は何も答えなかったが、静かに一回うなずいた。

「・・・馬鹿だな。君は」

「なっ・・・!!」

 相当その言葉が効いたのか、慧音ははっきりとショックを受け、目にまた涙を溜め始めた。
 しかし、すぐに霖之助が言葉を続ける。

「・・・親しい友人の厚意すら受け取らないような、僕は傲慢な性格ではないよ。そんなに気負いすることはない。君が来たいのならばいつでも来ればいい。食事を作ってくれても、作ってくれなくとも・・・僕は歓迎するよ」

 穏やかな笑みを浮かべながら、霖之助は伝えた。慧音の目から視線をそらすことなく、まっすぐ見つめたまま。

「・・・わ、わかった! 気が向いたら、来てやろう。どうせお前のことだ。ロクな物も食えていないだろうからな!」

 まるで、仕方がないな。といった様子で。しかし、顔から喜びの笑みを消すことはできないまま、慧音は答えた。
 そんな彼女を見て、霖之助はまた笑った。

「・・・そうだな。ありがとう。慧音」

 彼女の作る食事は、きっと今日の心労をすっかりと溶かしてくれるだろう。
 そんなことを、思いながら。










 あとがき

 はい。いかがだったでしょうか。友人としての霖之助と慧音です。
 霖之助と慧音は、ピクシブなどでは幼馴染という二次創作設定が存在するのですが、幼馴染にしてしまうと色々な細かい設定とかが思い浮かばないので、友人という感じにしてみました。いや、幼馴染だとしても昔のこと書かなきゃいいだけじゃね?って思うかもしれませんが。そんな感じなのです。要は適当なのです。
 泣かせるつもりは無かったのに泣いてしまう。ってのは小学校ではよくあることですかね? まあ、俺は泣かせたことも泣かされたこともありますが。いや、むしろ泣かされてた側。まぶたとかつねられてた(ぇ

 霖之助は鈍感だけど本当に相手のことを考えて、想って色々と余計なことを言ってしまう。って感じだと俺が滾る。
 そして慧音先生は適度にツンデレだと色々と滾る。

 それではこのへんで。




 ↓にコメント返信です!!
















 コメント返信です!! 文字を反転させてお読みください!



>赤髪の探偵さんへ

 小説の感想ありがとうございます!
 そうですよね。他人のために本気で泣ける八千代さんは最高の女の子ですよね。
 佐藤さんが煙草を吸うのはもはや宿命ですね。というか、周りがそうさせるというべきか。
 
 俺も自分で吸う気はありませんが、他人がマナーを守って吸う分には全く構わない、って人間ですね。だから学校の校門近くで煙草吸ってる人間には、物っ凄いイラッ☆ときます(ぇ

 ポケモンもなかなか奥が深いゲームになりましたからね。なんかシャンデリアみたいなポケモンのとくこうが半端じゃなく高いって兄が興奮しながら話していました。
 ゲーセンという、お金が毎回確実にかかっている場だからこそ、余計に強キャラ弱キャラを分け、それを好いたり嫌ったりするのかもしれませんね。俺としては、やはり相方・相手が誰であろうと協力して相手を撃破できるくらい上手くなってそのようなことを考えずに楽しくプレイできるようになるのが目標です。



 コメントいつも感謝です! 元気が出ます! それでは!

  




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2015-09-17 Thu 01:36 | | [ 編集 ]

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