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銀の働き部屋

管理人銀河の、日記兼テキストサイトです。取り扱うジャンルは主にヤングガンガン連載のWORKING!!になると思います。最近は東方の霖之助小説を書くのにも夢中。どうかよろしくお願いします。リンクはフリーです。感想は常に受付中です!もらえたら泣いて喜びます

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裏の無い想い 【幽香霖】




 今まで色々と書いていましたが、幽香霖の2作目を書いてみました。

 過去に書いた物と設定が繋がってたりはしません。霖之助と幽香の関係は、まあよく悪くも友達。という感じで見ていただければ。

 やはり、片思いが好きです。どんな漫画でも。自分が書いた場合でも。


 というわけで、幽香霖で『裏の無い想い』です。
 途中に出てくるタロットカードは、ウィキペディアで見た程度の知識なので、「こういう意味もあるのに・・・」と思ってもどうかお許しくださいな。


 続きからでどうぞ。


 あとがきの後にコメント返信があります! 










「花占いって、おかしいと思わない?」

「ほう?」

 窓の外をじっと見つめていたかと思えば、唐突にそんな脈絡の無いことを尋ねてきた幽香に、霖之助は興味深そうに耳を傾けた。


 春告精が春を告げる声が幻想郷に響き渡った日から、一月程が経っただろうか。春が訪れたばかりの頃は、まだ冬の名残があるようなやや冷感な気候であったが、ここ1週間程は実に春らしい気候が続いている。
 木々には新緑の葉が生い茂り、道を歩けばその葉や茂みに様々な虫の姿を視認することができる。
 そして・・・幽香の言う、花もまた、少しずつ道端に咲き誇るようになってきた。

「それは、単に『花を傷つけるな』ということかい?」

 読んでいた本をゆっくりと両手で閉じ、カウンターの上にそれを置きながら、霖之助も尋ねた。本を読むのを止めたのは、幽香に少しでも「話を適当に聞いている」と思われてしまうと恐ろしいことになる。という判断からだ。
 その考えは間違っていなかったようで、本を置くのを見ると、幽香は「いい心がけね」とでも言うように微笑みながら頷いた。

「もちろん、それもあるわ。花を毟り取るだけで許せないのに、あまつさえその花びらまで剥ぎ取ろうだなんて・・・まるで強姦魔の如く所業だわ」

 ・・・花占いをすれば強姦魔、か。流石にその発想は無かった。と、霖之助はため息を一つ漏らした。・・・もちろん、幽香には聞き取られぬよう。

「もしこの先、花占いに興じる子どもを見かけたら、『命が惜しければ今すぐにおうちに帰りなさい』と忠告することにしよう」

「いい心がけね」

 今度ははっきりとそう口にすると、幽香は霖之助が注いでいた紅茶を一口啜った。

「・・・ぬるい」

「早く飲まないからだろう。捨てるのは勿体無いから、一応飲み干してくれよ? 折角咲夜に分けてもらった高価な茶葉なのだから」

「・・・何よ。それなら、最初から言えばいいじゃない」

「なにかな?」

「何でも無いわよっ」

 素っ気なく言われたのが悔しかったのか。自分がいるにも関わらず他の女性の名を平気で出す彼に腹が立ったのか。ぶつくさと悪態をつく幽香であったが、今回ばかりは霖之助に何の非も無いので、また紅茶を静かに啜った。
 ゆっくりとカップを皿に置くと、話を続ける。

「花を傷つけるな・・・という主張はもちろんなのだけど、そもそも、占いとしての信憑性が薄すぎると思うの」

「・・・なかなかバッサリと斬り捨てるな」

「だって、『はい』か『いいえ』みたいな二択の質問しか占えないし、方法も花びらを一枚一枚剥ぎ取るだけ。それでいい結果が出たとして、喜べるものじゃないと思うの。・・・そもそも」

 じとーっと霖之助を見つめながら、幽香は続けて言い放つ。

「花びらを剥ぎ取る必要は無いじゃない」

「・・・それを言ってしまうともはや何でもアリになってきてしまうな」

 呆れたように笑いながら、霖之助は答える。

「結論として、花占いは信憑性に欠け、花を粗末にするだけの最低な占い。と言いたいのよ」

 ふん。と鼻を鳴らしながら言い切る幽香。花を粗末にしていれば、きっと花占い以外も、彼女にとっては全てが最低な物と見なされてしまうことであろう。

「まあ、君であれば当然その結論に至るだろうな。しかし・・・。・・・花を傷つけてもいい、というわけではないから怒らないでほしいのだが。いたいけな少女が、結果がどうなるのかを緊張しながら花占いをする姿は微笑ましいじゃないか」

「気持ち悪いこと言わないで」

 ・・・辛辣な言葉で涙が流れてしまいそうになるのを、霖之助はなんとかこらえた。

「花を愛する君をこの議論で論破するのは不可能だな」

「そうね。いざとなったら、私は議論でなくともあなたを『破れる』しね」

 にこっ。と、普段と同じ彼女の笑みを見て、霖之助は頬に冷や汗が伝うのを感じた。幽香の言う『破る』が、物理的な意味であることが容易に想像できたからだ。

「で? 君は花占いを糾弾してどうしたいんだ?」

「別に。ただ、おかしいなと思って言ってみただけ。・・・そうよ。最初の花びらを取る時、『はい』か『いいえ』を入れ替えても結果が変わるわ」

 ますますじとーっと霖之助をねめつけながら、幽香は問い詰めるように言う。
 僕に言われても困るのだが。と、霖之助はまたため息を漏らした。

「やれやれ。花占いの肩身がどんどん狭くなるな。霊夢の所へ行って、おみくじでも引いてきたらどうだい」

「お金を払って占いをする意味も分からないわ。それでもし外れていたら悔しさでどうにかなっちゃうかもよ?」

「・・・それは、怖いな」

 はは。と引きつった笑いを浮かべながら、霖之助はなだめるように言う。博麗神社で行われる大弾幕ごっこの光景が脳内に広がったから。そして巫女服の修繕に香霖堂を訪れるボロボロの霊夢の姿。ついでに日傘を修理するために香霖堂を訪れる幽香の姿も。だ。

「・・・要は、無料で占えればいいのか?」

「別に、そういうわけでも・・・。まあ、金を取られなくて、少しでも信憑性があれば、占われてもいいかもね」

「そうか。じゃあ、ちょっと待ってくれ」

 幽香の言葉を確認すると、霖之助はすくと立ち上がり、近くの棚を調べ始めた。

 ・・・また何か変な商品でも押し付けるつもりだろうか? と、幽香は呆れながら、更にぬるくなってしまった紅茶を啜っていた。

「あった。これだ」

 手の平にも収まるような小さな箱を取り出し、カウンターの上に置くと、霖之助はまた自らの椅子に腰を下ろした。

「これは?」

「名称は『タロットカード』。用途は、『運命を占う物』だ。・・・とは言っても、幻想郷で持っている者も何人かはいるのではないかな? 咲夜が以前買いに来たことがある。外の世界の文献には頻繁にこの占いが登場し、人気のある占いの一つのようだな」

「私は初めて見るわ。どうやって占うの?」

 どんな物を見せても無駄だろうか? と思いながらこのカードを用意した霖之助であったが、想像以上に幽香が興味を示したのを見て、ようやくため息ではなく、安堵の息を漏らすことができた。
 タロットカードの箱を開けると、中から22枚のカードを取り出す。その大きさはもちろん全て一定だ。
 そして、そのカードを裏返し、絵柄を幽香に見せるようにしてカウンターの上に広げた。

 そのカードには、人の絵、雷の撃たれる塔の絵、死神などなど。さまざまな模様が描かれていた。

「これがタロットの模様だ。手順に則ってカードを並べ、最終的に出たカードで運勢を占うことができるらしい」

「詳しいのね」

「説明書の要点をまとめただけさ」

 カードをずっと見つめていた幽香が顔を上げると、いつの間にかタロットカードの説明書を開いていた霖之助が、説明書をひらひらと宙で動かした。

「一つ一つの絵柄に意味があって、その意味から運勢に当てはめるようだね。一つのカードにも色々な意味があって、色々な解釈ができるらしい」

「ふうん。・・・って、それって占いとしてどうなのよ」

「あくまで、占い、だからね。『当たるも八卦当たらぬも八卦』という言葉があるように、占いという物は、当たらなかったとしても特別責められるわけではない。広い解釈を伝えておけば、その内の1個2個は自然と当たるものだしね。だから、占いは、外れ・・・つまり、『裏』が無いから、『裏無い』と書かれることもあるらしい」

「・・・聞けば聞くほどろくでもない気がするのだけど。占い」

「なに。簡単な話さ。自分に都合の良い占いは信じて、都合の悪い占いは信じなければいい。・・・少なくとも、僕は占いをそういう物だと思っているがね」

「・・・いい加減ね」

「いい加減さ。ましてや僕は占い師じゃないからね。まあ、花びらを剥ぎ取るだけの花占いよりは信用してもいいんじゃないかな。この占いは、カードを混ぜる。カードを並べる。カードを選ぶ。という3つの事象から導きだされる占いだからね。・・・試してみるかい?」

「・・・じゃあ、折角だから」

 カードを適当に目の前に持ってきてはその絵柄を確認していた幽香は、静かにそれを他のカードの中へと戻した。
 霖之助はカウンターの上に置かれた全てのカードを、カウンターの上で滑らせるように動かし、適当にごちゃごちゃと混ぜ始めた。

「そんな適当でいいの? カードって、こう、手で切ったりとか」

 トランプをイメージしているのだろう。自らの手でカードを切る動作を見せながら尋ねたが、霖之助は小さく首を横に振る。

「タロットの場合、この混ぜ方が正解らしい。・・・君も少しは混ぜるといい。君の占いなのだからね」

 はいはい。と、幽香は気力なくカードを適当に混ぜ始めた。
 10秒程混ぜたところで、「そろそろいいだろう」と、霖之助が手を止める。

「で、ここからどうするの?」

「並べ方があるらしいのだが・・・。並べ方も色々あってね。どれを選ぶべきか」

 説明書とにらめっこしながら、うーむと唸る霖之助に対して、幽香はため息を漏らした。

「面倒ねえ。もう、全部適当に並べてその中から選ぶだけでいいじゃない」

「一応それでも楽しめるとのことだが。まあ、いいか。初心者だし。じゃあ、カードを並べて・・・」

 言おうとして、霖之助は言葉を途切らせた。

「そうだ。大事なことを忘れていた。何を占うかを決めなければ」

「え? 1日の運勢とかを占えるものじゃないの?」

「このタロット占いは、ある程度具体的な事を対象にして占わないといけないらしい。何か占いたいことはあるかい?」

「・・・そうね。じゃあ、今年の私の花畑は、去年のように綺麗に咲いてくれるかどうか。でどうかしら」

 幽香が優しい笑みを携えて答えると、霖之助も微笑んだ。

「よし。それでいこう」

 霖之助は満足そうに頷くと、ぐちゃぐちゃだったカードを綺麗に並べ始める。1枚1枚の大きさがそれなりなため、カウンターの殆どをカードが占領する形になってしまった。
 まあ、正統な占い方からは程遠いが、これで準備は完了だ。

「じゃあ、幽香。一枚を引いて、上下の向きを変えずに自らの前に持って行ってくれ。同じカードでも、上下の向きで占いの結果が変わるらしい」

 霖之助が念を押すように言うと、幽香はこくんと一度頷いて、指先でカードを選び始める。
 そして、中央付近のカードを選ぶと、静かに自らの前へと滑らせるように移動させた。

「じゃあ、開いてみてくれ」

 また幽香は頷き、上下の向きを変えぬよう、横に開く。

 カードに描かれた模様は・・・

「・・・この模様は?」

 カードに描かれていたのは、盾と杖を持った女性の姿。それが、幽香から見て正位置で描かれている。
 霖之助は説明書に目を通すと、

「それは・・・『女帝』の正位置だね。カードの持つ意味は、『豊穣』と『母性』だ」

 霖之助が説明すると、幽香は明らかに機嫌をよくして、普段よりいくらか不敵さの抜けた笑みを浮かべた。

「ということは、私の花畑は今年も満開ってことね」

「そういうことだな。僕も時期になったら見に行っても構わないかな?」

「私の花畑に立つ貴方は、さぞかし、普段以上に貧相に見えるでしょうね」

「・・・手厳しいな」

 お互いに笑顔を浮かべ、そんな他愛のない話を交わす。
 もちろん、この二人は分かっている。こんな適当な占いに大した効力があるわけがないことを。
 しかし、先ほども言った通り。良い結果は信じる。悪い結果は、信じない。
 そう考えるだけで、こんな適当な占いもそれなりに楽しめるものだ。ましてや、それが気の許せる友人と共に占う物であれば。

「あなたは、何か占いたいことは無いの?」

「僕かい? ・・・特に無いが」

「この店が繁盛するかどうかとかは? どうせ繁盛しないんだから、適当な占いで良い結果を出して夢を見るのもいいんじゃない?」

「言ってくれるね。・・・まあ、僕は現状にそれなりに満足しているのでね」

「つまらない男」

「多くを望まない男、と言ってもらいたいな。・・・じゃ、君との相性でも占うか」

「へ?」

 大して感情も込めていないような声で霖之助が言うと、幽香は間の抜けた頓狂な声を漏らした。

「・・・どうかしたのかい?」

「え。あ、いや。な、なんでまたそんなのを」

 明らかに動揺し、やや頬を紅潮させながら幽香が言葉を探すと、霖之助は頭を傾げて、

「? ・・・まあ、君は僕の良い友人だと思っている。特に占いたいことが無い、というのだから、丁度いい内容だと思うが」

 当たり前のように、そう答えた。
 幽香は眉をぴくぴくと引きつらせると、所在も無く宙で動かしていた腕をカウンターへそっと下ろした。

(緊張した私が馬鹿だった)

 そう、思いながら。

「・・・じゃ。またカードを混ぜるとするか」

「そうですね」

 ぶすっとした愛想の無い声で言いながら、幽香もカードを混ぜる作業を手伝う。
 数十秒カードを混ぜると霖之助は手の動きを止め、それに続くように幽香も混ぜるのを止めた。

「・・・じゃ、カードを並べてもらえないか?」

「私が?」

「僕のことを占うんだ。2人いるんだから、どうせなら君に並べてもらった方が『占っている』って感じがするだろう?」

「・・・変なこだわりですこと」

 そう悪態をつきながらも、幽香はカードを1枚1枚並べていく。
 全て並び終えると、霖之助は顎に手を当てながら考え込む。どのカードを引くか考えているのだろう。

「・・・適当に選べばいいじゃない」

「何回も言わせないでくれ。この方が・・・」

「『占っている』って感じがするんでしょう? もうわかったわよ」

 呆れながら言う幽香に、そうか。と、苦笑気味に答えると、1枚のカードを選び、手元へと運んだ。

「・・・君としては、どんなカードが出て欲しいんだ?」

 突然そんなことを尋ねられて、幽香は少し頬を赤らめながら考えた。

「・・・別に。何でもいいわよ」

 しかし、ハッとしたように頭を振ると、出来る限り平静を保ち、余裕があるように幽香は答えた。
 霖之助はそんな幽香の慌ただしさには一つも気づくこと無く。

「そうか」

 短く言うと、カードを捲った。幽香が「あっ」という暇もない間の出来事だった。

「・・・これは」

 霖之助が説明書と交互に見つめるそのカードには、男女二人。そしてその間に弓を構える天使が描かれていた。
 幽香がどこかそわそわとしながら霖之助の言葉を待つ。

「・・・『恋人』だね」

「恋人!?」

 ついつい声が大きくなってしまって、幽香は顔を赤くしながら咳払いし、乗り出した身をゆっくりと戻した。

「い、意味は?」

 恐らく幽香自身は平静を保っているつもりなのだろうが、顔は真っ赤で、動きも明らかにせわしない。これ以上は無いという程に動揺している。
 が、もちろん霖之助はそんな幽香の様子に気づくことは無い。説明書に目を落とし、幽香の方には殆ど視線を移していないのだから当然と言えば当然だ。

「・・・単純な意味は、『恋愛』だな」

 霖之助が言うと、幽香は今日一番に顔を「ぱあっ」と明るくさせた。普段、不敵な笑みばかり浮かべている彼女の表情を考えると、もはや原型をとどめていない、と言えるほどの表情の変わり様だった。

「へ、へえ。それはつまり・・・あ、相性が良いってことよね」

 はっきりと照れながら、小さな声で言葉を紡ぐ幽香であったが、

「まあ、それは正位置の意味だ」

「へ?」

 霖之助が相変わらず説明書を見つめながら放った言葉に、思わずそんな間抜けな声を漏らしてしまった。

「今回、僕が引いたのは、『恋人』の逆位置だ」

 確かに、霖之助の言うとおり、そのカードは幽香から見て正位置に見える。つまり、霖之助から見ると逆位置に置かれているのだ。

「さっきも言ったように、タロットカードは、正位置と逆位置で意味が変わる。恋人の逆位置の意味は・・・『嫉妬』と『裏切り』と書かれているな」

 そこまで言ったところで、ようやく霖之助は顔を上げ、久しぶりに幽香の顔を見た。そして、霖之助は目を丸くする。幽香の顔は赤く、しかし、目を丸くしたまま硬直していたからだ。

「・・・どうした? 幽香」

「・・・えっと、その場合は、どういう意味に」

「ん? そうだな。君が僕の店よりもずっと品揃えの良く、居心地も良い店を見つけてそこに入り浸ってしまい、僕がその店に嫉妬する。・・・これじゃあ占いではなく予言だな」

 ははっ。と快活に笑う霖之助を、幽香はじとーっとねめつける。まるで時間が、少しだけ巻き戻されたかのように。ただ少し前と違うことは、幽香の顔が赤いことだろうか。

「へえ。『嫉妬』と『裏切り』ねえ・・・!」

 声に、やや覇気がこもっている。目が、迫力に満ちている。

 幽香は、思い知っていた。
 このタロット占いなる物が、彼女が想像していたよりも遙かに信憑性があるということを。

「・・・霖之助。このカード、買うわ」

 幽香がカウンターから勢い良く立ち上がりながら言うと、霖之助も目を丸くして幽香を見上げた。

「・・・もちろん、売り物だから構わないが。・・・占いに興味でも出てきたのかい?」

「ええ。それはもう」

 タロットカードを箱に戻しながら、霖之助は微笑みを浮かべて尋ねた。
 それに対して幽香は答える。大いに皮肉をこめて。そして、その皮肉が彼には通じないであろうことを十分に理解しながら、だ。

「まあ、いいことだ。君が占うだけではなく、誰かを占ってあげてもいい。君が興味を持ってくれたのならば、他にもタロットを買いに訪ねてくれる客ができるかもしれないからな」

 ご機嫌に話す霖之助。彼がご機嫌で言えば言うほど、幽香の顔の赤らみは先ほどとは別の意味で増して行き、その手の震えもより強くなっていくのだが、そんなことにこの男が気づくはずもない。

「・・・いや、その前に、君の目の前に素晴らしい古道具屋が見つからないことを祈るべきかな?」

 全く面白くない冗談を言う霖之助からタロットカードを奪いとり、適当な額の金をカウンターに叩きつけると、幽香は自らの日傘を片手に店を足早に去っていってしまった。



 残された霖之助は、カウンターに置かれた金を取ることすらせず、呆然とその姿を見送ることしかできなかった。

「・・・ふむ。・・・幽香は、意外と占いを信じる性質らしいな」

 幽香が聞いていたら、その日傘で頭を割られてしまいそうなことを呟きながら。
 それから、彼ははたとしたように思い出し、カウンターの下に置いていた置物を取り出し、カウンターの上に置いた。
 この置物は、最近外の世界から流れてきた商品で、透明な素材・・・確か、プラスチックといった名だ。その中に生花を閉じ込めた、なかなかに美しく、趣向の深い芸術的な置物だ。

 ・・・本当は、幽香にこの商品を勧めるつもりだったのだが、幽香が花占いの話を始めてしまい、なんとなくこの置物を紹介しそびれてしまった。これも、花を粗末に扱う、ということになるのだろうか。

「・・・花占い、か。簡単で、いい物だと思うが」

 そんな独り言を漏らすと、冷め切ってしまった紅茶を啜る。淹れたての物と比べると雲泥の差の味ではあるが、なかなかこれはこれで楽しめる。

「・・・『彼女は、1週間以内に占いを見せるために、ここを訪れる』」

 そう呟くと、置物の中の花びらを指さしながら、彼は占いを始めた。
 そして、思う。

 なるほど。

 こんなにも、穏やかな気分に浸りながらできる占いがあるのか。

 と。






「フォーチュン・オラクル法。セブン・テーリング法。ケルト十字法。・・・なんなのよ。この名前。そして、結局どれで占えばいいのよ」

 自慢の花畑・・・とは言っても、まだ花は白い蕾ばかりなのだが。それらの間に作った道を歩きながら、幽香はタロットカードの説明書に目を通していた。
 説明書はなかなかにページが多く、各ページには、カードの意味の他にカードの並べ方、その並べ方で占う場合の詳しい手順などが事細かに描かれていて、目が疲れてしまいそうだ。と、幽香はため息を漏らした。図解付きなのが非情にありがたい。

「・・・まあ、いいか。その時に応じて変えれば。しかし、なんなのよ霖之助の奴。そりゃあさ、私は占いなんか信じていないし、別にどんな結果だろうと気にしないけどさ・・・」

 周りに誰もいないとはいえ、花畑の真ん中で独り言を繰り返すその姿は、彼女を知る者ならば想像しがたい姿であっただろう。
 しかし、彼女にしてみれば、これは独り言では無い。彼女は、語りかけているのだ。この、無限のように広がる花達へと。

「そりゃあ、『恋人』が出た時は嬉しかったし。・・・そして、逆位置って分かった時はがっかりしたし。だからって、あそこまで平静じゃなくともいいじゃない」

 足を止め、タロットカードを見つめながら、幽香は小さい声で搾り出すように続けて言った。

「・・・一瞬でも喜んだ私が、馬鹿みたいじゃない」

 カードを持つ手に力が入る。柔らかい紙製の箱が、わずかに凹んだところで幽香は力を込めるのをやめた。

「・・・あー。やめやめ」

 そしてまた、早足で歩き出す。その挙動に普段の優雅さは感じられない。
 ふと。彼女は視線を横に落とし、また足を止めた。

「・・・あら。随分、早起きね」

 そしてしゃがみこみ、穏やかにそう声をかけた。
 彼女の視線の先にあったのは、彼女が育てていた花の一輪。その花は、周りがまだ蕾ばかりの物であるにも関わらず、立派に咲き誇り、その白い花びらをまるで幽香にお披露目するかのように、そこに佇んでいた。

「・・・花占い、ね。・・・大丈夫。あなたを抜いたりしないから」

 くすっ。と微笑みながら、幽香はその花を撫で上げた。まるで意志を持つかのように、その花はゆらゆらと揺れた。自らの存在を認めてもらい、喜んでいるかのように。

「・・・ねえ。少しだけ、付き合って頂戴」

 幽香が言うと、そよ風が吹き、花はまるで頷くかのように動いた。

 ありがとう。という意味を込めて微笑みを浮かべると、幽香は、花びらに指を当てて口を開いた。

「・・・あの鈍感店主は、私のことが・・・」

 そこまで言ったところで、言葉を止める。そして、首をふるふると横に振った。
 それから、深呼吸を一つ。
 気を落ち着かせたところで、もう一度彼女は口を開いた。

「・・・『あの鈍感店主は、私の想いに気づく』」





 霖之助と幽香の、花占い。

 『はい』か。


 『いいえ』か。

 その答えは、

 彼と、

 彼女と、

 2輪の花だけが、知っていた。














 あとがき


 いかがだったでしょうか。
 途中で霖之助に言わせた「いい結果は信じて、悪い結果は信じない」というのは俺のモットーです。決して、朝の占いで悪い結果しか殆ど見たことのない俺の言い訳とかではありません。違います。断じて。本当に。信じて。
 本来、幽香はもっとダーティで、怖さの滲み出るような妖怪だと思うのですが、俺が書くとどうしても乙女になってしまいますね・・・。うーん。そういう怖さも活かして書けないのは、やはりキャラに対する愛が少ないということなのか。
 もっとそれぞれのキャラの性格とかを活かして、色んなカップリングが書ければいいなあと思います。


 では。



 ↓にコメント返信があります!!












 コメント返信です! 文字を反転させてお読みください!!





 >カイナさん

 まあ、アニメ本編は見たことないけど曲は知ってる。ということは多いですよね。
 ギィギが2頭ついてきたら俺少し可愛いですけどな・・・。ギギネブラがついてきたら流石にうざったいですけど。
 ジエンは装備を使いこなさないと一人じゃ厳しいですね。上位でソロはかなり辛いですよー。決戦ステージの撃龍槍を使うと、その度に鳥肌が立ちます。
 イビルジョー頑張ってください。回避性能があると、龍ブレスを避けやすくなりますよ。無くてもよけられるらしいですけど俺には無理です(ぇ
 俺は・・・一番最初にPS2で発売された太鼓の達人で、難易度おにの、ドボルザークの「運命」をノーミスでやれたような。まあ、元々速い曲だからそこまで押す音符の数が変わらないからなんですけどね!!



 >染井 早羅さん

 俺未だに大人になれてないですね。今でもゲーセンで一喜一憂してますね(ぇ
 え。5巻のあのシーンがエロいって? ・・・今更、気づいたんですか?(ぇぇぇ
 9巻はさとやち展開が詰まってそうですからね。俺も楽しみです。



 >千亜希さん

 ネウロは好きですよ。一応最初から最後まで見たはず、です。
 あの、名前忘れたけど凄い馬鹿な警察官が好き。プラモとか大好きの。あんな大人になりたい(待


 >クリスタルさん

 モンハン、楽しいですよー。そうですよねー。東京だとモンハンの番組始まるんですよねー。まあ、生まれも育ちも東北の俺には関係無い話ですけどねっ!!!!! 
 まあ、ディアブロスとかティガレックスとか続投組もいますけどね。やはりクック先生がいないのは異様な虚無感を感じます・・・。



 コメントいつも感謝です!元気が出ます! では!!


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