銀の働き部屋

管理人銀河の、日記兼テキストサイトです。取り扱うジャンルは主にヤングガンガン連載のWORKING!!になると思います。最近は東方の霖之助小説を書くのにも夢中。どうかよろしくお願いします。リンクはフリーです。感想は常に受付中です!もらえたら泣いて喜びます

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初めての温もり  東方  紫霖


 えー。今回も東方小説を更新しようと思います。

 WORKING!!を一応メインに置いているにも関わらずWORKING!!小説をさっぱり更新できなくて申し訳ない限りですが。

 (WORKING!!ネタが)浮かばないもんはしょうがない
 (東方ネタが)浮かんじゃったもんはしょうがない

 の魂で、ね?(同意の目

 まだ休みがありますので、その間にWORKING!!のも1つくらい書ければなあ。と思ってはいるのですが、肝心のネタが出てこないので、無理かもしれません(バッサリ
 でも、やるだけやってはみようと思います。いやね?書くだけならそりゃ2日3日あれば書けるのよ。全てはネタが出るかどうかなのよ・・・


 というわけで、紫霖小説を更新しようと思います。

 紫霖は初めてですね。何回も言っている通り、俺は東方に関する知識がかなり薄い方なので、やはり紫霖のイメージというものもかなり偏っています。
 その結果。今回書いた紫霖は、かなり紫様の少女臭がムンムンと漂っている結果になっています。少女臭の強い紫様は嫌だ!!という方は閲覧を避けた方がよろしいかと。

 紫様の少女臭がキツクとも、甘さ自体は殆どありません。微糖です。ビターです。微糖よりビターの方がカッコいい気がするけれど微糖とビターって発音的にかなり似ているよねっ(一息で

 そんなこんなで、紫×霖之助で、「初めての温もり」


 続きからでどうぞ!!



 あとがきの更に下にコメント返信があります!!!!











 可愛い寝顔。

 心の中で呟いてから、小さく漏らすような息を吐き、『幻想の境界』……そのような二つ名を持つ大妖怪。八雲紫は、うっすらと微笑んだ。

 寝息をたてる度にほんの僅かに頭が上下し、それに伴って、彼の頭から飛び出した特徴のある一纏まりの髪がぴょこぴょこと揺れ動く。その様子が面白くて、また彼女は微笑みを浮かべる。時に、現実離れしているとまで言われるその美貌から生まれる微笑は、並の男性であれば堕ちない事は無いであろうという程に、美しく、魅力的な物であった。

 そんな美しさを持つ彼女が、今、目の前の男性から視線を逸らすことができずにいた。

 透き通るような艶やかな銀髪。
 細く、長く。窓から差し込む僅かな陽の光を吸収し、淡い輝きを放つ睫毛。
 少し違和感を覚える程に、男らしさを感じないその美しい肌。

 それらをただ眺め、大賢者は力の抜けた笑みを浮かべたまま、決して何か行動を起こそうとはしないのであった。


 幸せだ。

 そう……紫は、心地良いほどに痛感していた。




 ここに至るまでの経緯を説明しておこう。

 この日は、春告精が春を告げるまではあとわずか。といった頃。つまり、春と冬の境目の、少し肌寒い日であった。

 紫が灯油代の回収をするために香霖堂を訪ねてみると、普段は本を読んでいるばかりである、香霖堂店主……森近霖之助が、本をカウンターに置いたまま身動き一つしていなかった。これが、全ての事の発端である(とはいえ、別に今のところ特別な事態が起こったわけではないのだが)。

 その様子を、香霖堂の天井近くに作り出したスキマから眺めていた八雲紫は、素早く自分の身長ほどの高さへスキマを移動させ、香霖堂の床へ、音を立てぬよう静か降り立った。ちなみに、天井付近にスキマを作った理由は、どうにかして霖之助を驚かせようと企んでいたからという、非常に幼稚な物である。
 毎度仕掛けられる、紫のそんなくだらない悪戯に、霖之助はいつもうんざりとした顔で対処するのであったが、彼女は、その際の会話が好きであった。普段の会話以上に、霖之助の本音を聞けるような気がするから。

 足音を立てないように慎重に歩みを進め、カウンターの前へと辿り着く。それから、やはり慎重に霖之助の顔を覗き込んだ。
 霖之助は、目を閉じていた。そして、呼吸をする度に、僅かに頭と肩を上下させている。

 つまりは、だ。
 一応は客である紫の来訪にも気づかず(スキマを自在に操る彼女の来訪を気づけ、というのも少し酷な話ではあるが)、店主森近霖之助は眠りこけしまっている。というわけだった。

 それに気づいた紫は、当然「起こそう」という選択が頭に浮かんだ。が、普段は滅多に見ることが叶わぬ店主の寝顔に、全く興味が無いわけでも無かった。
 とりあえず彼女は、店の端に置かれている来客用の椅子をゆっくりと自らの手でカウンターの前へと運び、その上に腰掛けた。当然、音を立てないように慎重に、だ。
 決して音を立てぬよう。と思いながら行動したせいだろう。慣れぬ緊張感にすっかり息の詰まってしまっていた彼女は、ゆっくりと息を吐き出す。そして数回深呼吸を繰り返してから、すっかりと夢の世界へと旅立ってしまっている店主の顔に、視線を落とした。



 ここから話は、冒頭へと戻る。


 紫が店主の寝顔を観察し始めてから、どれほどの時間が経ったのだろう。
 香霖堂の店内には、商品である時計なども壁に陳列されているため、少し視線を店内へ巡らせるだけで、時間の経過は容易に知ることができる。目で見ずとも、振り子時計から響く音を聞くだけでも、簡単な時間を測ることもできるだろう。

 しかし、紫はそんな物に興味は無かった。
 今、目の前で静かに寝息を立てている、森近霖之助という一人の男性以外、彼女の目には何も映らなかった。

 紫自身は、きっと気づいていないのであろう。霖之助を見る彼女の頬に、確かな赤みがさしていることを。
 その目が、まるで初恋の異性を見つめる少女の如く、潤み、とろけきっていることを。

 もしここに第三者の目があれば、紫のそのような表情は物笑いの種にしかならない。それほどに、その表情は彼女らしからぬ物であるのだ。

 そんな表情を(誰も見てはいないとはいえ)晒してしまう程に、彼女は今何も考えられない状況なのであった。

『このまま、時間が止まってしまえばいいのに』

 そんな事を考えていた矢先のことであった。

「……っくし!」

「!!!」

 霖之助の口から唐突に飛び出した、短いくしゃみの声に、彼を夢中で見つめていた紫の肩が大きく震える。
 今すぐにでもスキマに逃げ込もう。と、スキマを出現させたが、霖之助が目覚めたわけではないことを確認すると、ほっと胸をなで下ろし、激しく鼓動を繰り返す心臓を自らの手で抑え、呼吸を整える。
 呼吸が落ち着いてきたのを確認すると、スキマを閉じ、また霖之助を見る。
 彼の表情に、はっきりと分かるような変化は無く、紫は、まだこの時間が終わらぬことに心からの安堵を覚えた。

 しかし、ここで霖之助のくしゃみについて、紫は考えた。
 この香霖堂店内は、決して清潔な場であるとは言い難い。埃が原因か?と、紫は最初に考えたが、窓付近に視線を移してみると、最近掃除でもしたのか、窓から差し込む光に室内が照らされても埃は視認できない。つまり、それほど空気が埃で汚れているわけではないということだ。

 となると、気候か。と、紫は意味も無く宙を仰ぎ見た。
 先程述べた通り、冬と春の境目である今日という日は、妖怪である紫でも肌寒いと感じる程に気温の低い日である。
 とはいえ、決して暖房器具が無いと耐えられない!と言うほどに冷え込んでいるわけでもなく、厚着をしている霖之助が風邪を引くとは到底考えられない。ましてや彼は半妖だ。人間の病気にも、妖怪の病気にも抵抗のある彼に、そのような心配は殆ど無用である。とすら言えるだろう。

 ……のだが、もしかしたら道具の修理などを夜通し行っていて、体力が無くなってしまっているかもしれない。霖之助に別れを告げに来た冬妖怪の寒気を浴びて体調を崩したのかもしれない。……などといった「無駄な心配である」としか言い様が無いような考えが、紫の頭の中に次々と浮かび始めるのであった。

 すると紫は、スキマを傍らへと作り出し、その中へと入り込む。そしてスキマが閉じると、スキマが今度は霖之助の背後へと出現する。同時に、再び紫が姿を現すのだが……その手には、薄手の毛布が一枚握られていた。
 この毛布は、香霖堂の寝室へとスキマを繋げ持ってきた物であるため、正真正銘霖之助が普段利用している毛布である。

 ……紫の名誉のために明言しておくと、今回は緊急時なので寝室へとスキマを繋げたが、普段から寝室へスキマを繋げたり、風呂場などへスキマを繋げたり……といった行動は一切してはいない。断じて。恐らく。たぶん。

 床に静かに降り立ち、毛布をゆっくりと広げ、霖之助の背後に紫が立つ。当然、霖之助の背中に毛布をかけるために、だ。
 紫の胸の鼓動が、霖之助がくしゃみをした時以上に激しく、荒く波打つ。
 出来る限り軽い毛布を選んできたとはいえ、直接霖之助の体へ触れることになるため、霖之助が目を覚ます可能性は大きく高まるだろう。正直、リスクが大き過ぎる。と、紫自身思わなくも無いのだが。

 ……霖之助が風邪を引き、苦しそうに咳をする姿を思い浮かべるだけで、彼女の胸は激しく痛んだ。

 ……そんな、滑稽な自分を思って、紫は自嘲的に笑った。もちろん、声は出さずに。

 幻想郷を創りだした賢者の一人と呼ばれ、幻想郷の始まりから現在に至るまで、人の生き死になど数え切れないほど見つめてきた自分が。人の生き死にに、数え切れない程関わってきた、そんな自分が。

『一人の半妖が風邪をひくかもしれない』

 その程度のことで胸を痛めている。

 これを滑稽と言わずして、何と言えばいいのか。

 常に余裕のある笑みを携えて、幻想郷の全てを見渡さなければならない「大賢者様」がそんな様では、誰に笑われたとしても文句は言えないだろう。

 幻想郷の人々が聞けば、きっと紫のことを嘲笑うだろう。
 なんと心の弱い、人間じみた妖怪だ。と笑うだろう。
 それも当然の事だ。幻想郷の人間からしてみれば、八雲紫は幻想郷を愛しているのであって、幻想郷に住む一人ひとりを愛している等とは、欠片も思われてはいないのだから。
 所詮、「出来る限り会いたくない」と陰で叩かれている妖怪だ。
 今更、そんなことで紫は傷つかないし、それが当然だとも思っている。

 そうだ。わかっている。

 それでも。

 それでも。

 八雲紫という一人の妖怪は。


 森近霖之助という一人の半妖の幸せを、願わずにはいられないのであった。


 紫が、そっと手を離す。すると、霖之助の肩から背中にかけてまでが毛布で包まれる。
 手を離したまま、紫はその場で固まる。霖之助が起きたかどうか。それは、背中からでは確認できないからだ。
 しかし、霖之助の肩が、彼の寝息と共に上下に動くのを視認すると、再び紫は安堵の息を漏らした。

 すぐにスキマを通って彼の正面には戻ろうとはせず、紫は霖之助の背後に立ったまま、霖之助の、毛布越しの背中を見つめていた。
 大きな、背中だ。と、紫は、少々ぼうっとした意識の中考えていた。

 年齢自体は、幻想郷の古参中の古参と呼ばれている紫と比べれば、若造、と呼んでも差し支えない程の差があるだろうが、性別の差が生み出す体格差という物はやはり大きかった。
 その背中に身を委ねてしまいたい。そんな感情が、紫の中に湧き上がる。しかし、それでは流石に霖之助が目を覚ましてしまうだろう。と、一度は断念する。
 が、彼の広い背中を見つめれば見つめるほど、この大きな背中に自らを預けたい。という感情が、湯水のように彼女の中に沸き上がってくるのであった。

 ……大丈夫、だろうか。

 もし、霖之助が起きてしまったとしても、紫のスキマを使えば瞬時にその場から逃げることは可能だろう。毛布という物的証拠は残るが、毛布を紫がかけたことなど彼に分かる筈もない。

 それならば、少しくらい。いいのではないだろうか。
 
 そんな甘い誘惑の声が、紫の脳内を埋め尽くしていく。

 心臓の鼓動が、また高鳴りを増していく。


 『彼が欲しい』と鳴いている。


 そして紫は、ついに行動を起こす。

 ゆっくり、ゆっくりと。自身の細く、柔らかい手を霖之助の背中へと近づける。
 まずは、指先。両手の指先をそっと背中にかかった毛布に触れさせる。毛布の感触しか分からないほど、微かに。しかし、確かに。
 指で触れたのを感じると、その指を、末節、第一関節、中節、第二関節、基節……そして、手の平へと。手の全ての神経で霖之助を感じるように、毛布越しの背中へ触れる面積を増やしていく。
 遂に、紫の手全体が霖之助の背中へと触れた。殆ど体重はかけていないが、伝わってくる。毛布と彼の厚手の衣服越しでも、彼の体温を。

 それから……手で触れる時よりもずっと早い動きで、顔を背中へと近づける。それでも、傍から見れば苛立ちを覚えるほどに遅くはあったのだが……現在の紫には、その速度が精一杯であった。
 頬には赤みが差し、彼に触れるその手も震えている。
 そんな彼女に、これ以上何かを求めるのは、酷というものではないだろうか?

 そして……遂に。紫の頬が霖之助の背中へと触れた。
 紫の胸の鼓動は、収まるどころか、より激しさを増していく。その鼓動が、霖之助に伝わってしまうのではないか。そのような不安すら感じる程に、強く、大きく。

(霖之助さんに、触れている)

 そう考えるだけで、紫の顔の熱が一気に最高潮へと達した。自身の顔の熱で、意識が混濁していくのがはっきりと分かる。もう少し時間が経てば、そのようなことすら感じられなくなるであろう。

(大きい)

 両手を静かに滑らせ、霖之助の背中を感じながら、心の中で呟く。

(温かい)

 自分の手の平よりもずっと温かい背中を感じながら、心の中で呟く。

 今まで、会話こそ幾度と無く交えてきたが……身体同士を触れ合わせたことなど一度たりとも無い紫にとって、この時間はあまりにも唐突で。突然で。

(……幸せ)

 何より、幸福であった。

 ずっと。触れたかった。
 商品の取り立てに来る日も。灯油を入れに来る日も。特に理由も無く雑談を楽しみに来る時も。
 ずっと、ずっと触れたかった「彼」が、今、私と共にある。

 それだけで、どこまでも紫は幸福なのであった。

「……霖之助、さん」

 紫の口が、微かに開かれた。
 最も、その小さな潤いのある唇から発せられる言葉は、殆ど顔を接しなければまともに聞きとることもできない。という程に小さくか細いものであった。当然、眠りについている霖之助の耳に届いているはずも無い。

 ……だが、当然、リスクは大きい行為であった。
 どんな小さな声であろうと。それが切掛けで霖之助が目を覚ます可能性が零であるとは言い切れない。

 それでも、紫は口を開かずにはいられなかった。
 恐らく、あと何日も。何ヶ月も。何年も。伝えられるはずもないであろう言葉だから。
 だから、今。彼が眠りから覚める前に。
 そして、紫の意識が、その顔の熱気により完全に失われてしまう前に。

 伝えたい。

 この、言葉を。


『   』








「よう香霖!!」

 カウベルの音が激しく店内へと鳴り響く……それよりも僅かに早く。という程の勢いで、香霖堂の扉がけたたましい音と共に開かれた。
 その扉の向こうから姿を現したのは、香霖堂の常連。間違っても「上客」などでは無い、常連の白黒の魔法使い……霧雨魔理沙であった。

「……あれ?寝てるのか?」

 魔理沙としては、霖之助に、普段のように「……いらっしゃい」と、接客業の店員らしからぬしかめっ面で挨拶をされるのを期待していたのだが。カウンターに突っ伏している霖之助を視認すると、半分ふてくされたように彼女は言った。

 しかし、

「……いや。起きているよ」

 ゆっくりとカウンターから顔を起こし、店主森近霖之助は、酷く小さな、疲れきった声で答えた。

「ふーん?珍しいな。居眠りなんて。よっぽど疲れていたのか?」

「……いや。そんなことは、無いよ」

 やはり小さな声で霖之助は答えた。しかも、顔を手で抑え、何度も小刻みに顔を振りながら。どこからどう見ても、健康な人物の動作には見えない。
 それを当然魔理沙も察し、僅かに不安げな表情を浮かべた。

「……くだらない嘘をつくなよ。どうしたんだ?毛布までかけてここで居眠りなんて。そんなに調子が悪いなら、おとなしく店を閉めて寝ていろよ」

 すっ、と。霖之助が羽織っている毛布を指さしながら、魔理沙は彼女らしくない神妙な声で語りかけた。
 その言葉に、霖之助は何故か押し黙る。顔を手でおさえたまま、微動だにせず。

「……これは……その……」

 十秒程動きを止めたかと思いきや、彼の言葉とは到底思えない。という程の要領を得ない言葉を、霖之助はボソボソと口から漏らす。

「ああもう!どこまで具合悪いんだよ!もう寝ろ!いいから寝ろ!」

 怒りの感情を隠そうともせず。魔理沙は頭をかきむしった後、霖之助を激しく怒鳴りつける
 魔理沙の言葉に、またしばらく沈黙する霖之助であったが。

「……そう、だな。そうするよ。心配をかけてすまない。魔理……」

「はいはい。分かったから寝ろ」

 霖之助が言葉を終える間も無く、無理矢理彼の腕を掴み持ち上げながら、魔理沙は少し赤い顔で答えた。
 力無く立ち上がる霖之助の顔を見て、魔理沙はまた表情を曇らせる。

「……本当に、珍しいな。風邪か?確かに最近、ちょっと寒かったからな」

 霖之助の頬へと手を当て、その熱を十分に確認しながら、魔理沙は続けて言葉を発した。


「顔が真っ赤だぞ?香霖」


 魔理沙の言う通り。霖之助の顔は、はっきりと見て取れる程に紅潮しており、ここまで顔色を変えてしまっている彼の姿を見たことが無い彼女は、ますます不安が強くなるのであった。
 霖之助は、そう指摘されてから、自分の顔に、魔理沙と同じようにゆっくりと手を当てる。それから、

「……違うよ。魔理沙。大丈夫、風邪じゃ、無いから」

 そう、やはり力無い声で答えた。

「でも……!」

「魔理沙。すまない。想像以上に、疲れているみたいだ。今日は帰ってくれ」

「……」

 普段と明らかに様子の違う霖之助の様子に、魔理沙は思わずたじろいだ。
 何か言わなきゃ。と口は開くのだが、霖之助の表情は赤いながらも真剣そのものであり、言葉を思わず呑み込んでしまった。

「……夜、飯作りに来るからな!」

「……ああ。ありがとう」

 魔理沙はまるで捨て台詞のようにそう言い残すと、やはり乱暴に店の扉を閉め、足早に店を去っていった。

 その背中を見送った後、霖之助は膝から崩れ落ちるように、自分の椅子へと腰を下ろした。
 それから、激しく鼓動を繰り返す自身の胸を、半ば掴むように、強く抑えつける。
 深呼吸を何度も繰り返し、呼吸を整える。何度も繰り返す内に、ようやく呼吸は落ち着いてくれた。
 顔に、もう一度手をあてる。顔の熱は、未だに収まってはいない。

 ……それも、仕方ない。と、霖之助はほんの数分前の出来事を思い出す。すると、再び鼓動が高鳴り始めるのを感じ、再び彼は胸を抑えつける。

 そして……半ば恨むように、心の中で言葉を吐く。

 
 あんなの、反則じゃないか。
 全然、そんな素振りなんか見せてこなかった癖に。
 急に現れて。
 急に優しくして。

 そして・・・急に・・・

「……!!!」

 目の前のカウンターに、片手の拳を思い切り叩きつける。
 感情のやり場が、そこ以外に見つからなかった。長年連れ添ってきた店の一部に対する礼儀すら忘れる程に、今の霖之助は動揺していた。

 本当に、勘弁してくれ。
 いきなりすぎるじゃないか。

 こっちは、そんなこと全然思っていなかったんだ。
 胡散臭いと常々思っていたし。苦手とすら思っていたのに。

 なのに。

 なのに……!!

「……意識してしまうじゃないか……!!」

もはや泣きたいような心境で。しかし、その顔にはやり場の無い笑みを浮かべ。
森近霖之助は、香霖堂の中で一人、呟くのであった。






「びっくりしたびっくりしたびっくりしたびっくりしたびっくりしたびっくりしたびっくりしたびっくりしたびっくりしたびっくりしたびっくりしたびっくりしたびっくりした…………!!!!」

 八雲紫は、自らの屋敷に戻り、ひたすらにそのような言葉を繰り返しながら呼吸を整えていた。

 「あの言葉」を告げた直後。店に近づいてくる人の気配を感じとった紫は、大急ぎでスキマを作り出し、そこから自らの屋敷へと逃亡を図っていたのであった。
 扉が開く前に姿を消したため、紫が霖之助に何をやっていたかは、来客には知られていないはずであった。

 それでも。突然の事態に驚きを隠すことは出来ず、帰ってきてから実に十分ほどの間、紫は自らの精神の平静を取り戻すことに全力を注いでいた。

「……あ!誰が来たのかも確認していなかった!!」

 ようやく呼吸が整ってきた。という所で、逃げてくることばかり考えていて、結局誰が来客したのか。そして、その客とどのような会話を霖之助がしたのかを確かめる事すら忘れていたことを思い出した。

 紫は、慌てて香霖堂の天井へとスキマを繋げ、店内の様子を確認した。
 店内には、既に来客の姿は無く、椅子に力無く座り込む霖之助の姿のみがあった。既に目は覚ましているようだが、うつむいてしまっているため、表情を確認することはできない。

(……元気が無さそう。やっぱり、風邪でもひいたのかしら?)

 明らかに、普段以上に力の抜けた様子の霖之助を見て、紫の中に不安が生まれる。しかし、自分が毛布をかけた。という判断は決して間違ったものではなかった。ということも同時に分かり、その点にだけは安堵の息を漏らすのだった。

 これ以上、何かの情報を手に入れることは難しいと判断し、紫はスキマを閉じた。

 そして一息つくと、香霖堂から帰ってくる直前に、霖之助へと告げた自分の言葉を思い出し、紫は顔を紅潮させる。

「……言っちゃった……」

 その言葉を、霖之助は理解できてはいないであろう。しかし。それでもだ。紫に取って、その言葉を霖之助へと(一応)直接伝えられた事は、自らを褒め讃えたくなるような、大偉業であった。

「……えへへ」

 無意識に顔がにやついてしまう。
 それに、その言葉以外にも。今日の出来事は紫にとっては実りの多い物ばかりであった。

 霖之助さんの寝顔を見れた。
 霖之助さんに触れた。
 霖之助さんに、伝えられた。

 幸せだ。

 八雲紫は、ただひたすらに、幸せであった。

「……でも、霖之助さん、本当に風邪をひいているのかしら……?」

 浮かれてしまい笑顔が止まらない紫であったが、力無く椅子に座る霖之助を思い出し、再び不安が押し寄せてくる。

「……そうだ。今晩、道具の取り立てついでに、何か精のつく物を持っていけば!……喜んで、くれるかしら?」

 言ってから、「喜んでくれるに違いない!」と続け、紫は何回も自分自身のアイディアに頷いた。

 そうと決まれば、食材探し。と、紫は目の前にスキマを作り出す。
 しかし、すぐに入らず、夜に訪れるであろう(おそらく)幸せな時間を想い、微笑みを浮かべる。

 ああ。

 本当に。

 私は……八雲紫は。森近霖之助の事が。


『大好き』


 小さく呟いてから、紫は、自ら作り出したスキマの中へと身を投じるのであった。











 あとがき

 いかがだったでしょうか!
 やはり、少女臭の紫様は嫌いじゃない・・・むしろ大好きなので、こういう形に仕上がりました。
 結構このネタを思いつくまで時間がかかったのですが、いざ書き始めてみたら案外スムーズに書けました。スムーズに書けた作品ってのは結構自分でも気に入る物が多くて、今回のもやはり結構お気に入りです。

 何気に、魔理沙を作品内で喋らせたのは今回が初めてなような気がします。名前こそは何度も出しましたが。魔理霖もいつか書いてみたい。とは思っているのですが、果たしてネタが浮かぶやら・・・(俺の判断基準は基本そこ

 霖之助がいつから起きていたのか。ということですが、紫様が毛布をかけた辺り。というイメージで書きました。まあ、その辺は多少前後したところでなんら問題は無いと思うのですが、「最初から起きていたわけではないよ!」という事だけ理解していただければ。

 構成上セリフが少なくて大変と言えば大変でしたけど、紫様の少女臭が少しでも嗅いでもらえれば幸いです。



 それでは!!





 ↓にコメント返信です!!








 コメント返信です!文字を反転させてお読みください!



>はらちのさん

 感想ありがとうございます!!
 霖之助は、もちろん朴念仁な設定も大好きなんですが、意外とそういう所に気づけて、あえてそれを無視する。みたいな霖之助さんも結構好きだったりします。少ししっとりとした感じの。まあ、それでも多分気づかないんでしょうけどね!!
 上海は可愛らしいですね。蓬莱も出せばよかった。と投稿してから1時間後くらいに気づいたのは内緒☆



>フッケさん

 感想ありがとうございます!!
 一応原作読みなおしてから書いたので、恐らく、多分、咲夜さんは個人的な買い物をしていないのではないかな?と思って書いたつもりです。もちろん、原作に描かれているシーンが咲夜さんの買い物の全てでは無いと思うのですが。
 次の来店の際に、「あれの寝心地はなかなかだね」とか霖之助がさりげなく言ってしまって、恥ずかしさをこらえながら買い物をする咲夜さん。なんだかこうふんしてきました(待




 コメントありがとうございます!!元気が出ます! それでは!!









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コメント

ゆかりんが可愛かった。そしてそれを上回る勢いで、霖之助さんが可愛かった。とりあえず次回紫が来店した時に何かが起こりそうな予感。お互いの立場の違いなんてちっぽけな境界は、ちょちょいと飛び越えちゃいなよ、YOU!
2011-08-22 Mon 01:41 | URL | はらちの [ 編集 ]

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