銀の働き部屋

管理人銀河の、日記兼テキストサイトです。取り扱うジャンルは主にヤングガンガン連載のWORKING!!になると思います。最近は東方の霖之助小説を書くのにも夢中。どうかよろしくお願いします。リンクはフリーです。感想は常に受付中です!もらえたら泣いて喜びます

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となり同士の願い



銀河!!小説更新、行きまーす!!


 はい。今回はね。アムロ風にね。やってみようかな。と思ってね。言ってみたわけなんですけどね。うん。なんか、ごめんね。色々と、ごめんね。




 いやー。ようやく久々の小説更新。細かく言えば、ものすごく久しぶりのWORKING!!小説更新となりました。いやー。久しぶりです。お待たせしました。

 最後にWORKING!!小説を書いたのが、もう何ヶ月前になるでしょうか。本当にネタ不足に苦しんでいる次第でございます。10巻を買えばもっとネタが出てくるのだろうか・・・。

 ここ数ヶ月で、タイバニにどっぷりとハマったり、戦場のヴァルキュリアをプレイしながら愚痴ってばかりだったり、Twitterで下ネタ言いすぎて「強者」という称号を授けられてしまったり色々ありましたが。僕は、元気です。あ。下半身の話じゃなくて健康的なという意味d(蹴

 最低発言もこれくらいにしておきまして。さっそく更新させていただこうと思います。

 たか×いなで、「となり同士の願い」です。「となり同士の約束」とタイトルが近いですが、別に直接的繋がりがあったりは全くしません。た、タイトルが思いつかなかっただけとかじゃ、無いんだからねっ!(ツンツン

 甘さは殆ど無しです。何故か小鳥遊がシリアスぶってたりしますけど、別にそこまで内容が重いわけではありません。
 なんか難産でした。最終的にはそれなりに納得のいく形に仕上げられましたが、果たして皆様の評価はいかに・・・。という感じです。うーん。何だろう。最近小説を書くことに大してのモチベーションがどんどん下がっている気がします。せつない。

 あ。それとですね。いつの間にか、もう殆ど40000Hit達成間近になってしまっていますね!!
 というわけで、今回もやらせていただこうと思います。リクエスト応募。
 そう遠くない内にこのブログに正式な企画として載せたいと思いますが、とりあえず、「やるよ!」という告知を今のうちに。多分今回の当選枠は二つくらいになると思います。


 あんまり長すぎてもあれなので。それでは、続きからでどうぞ!








「伊波さんって、大変ですよね」

「え?」

 ワグナリアの休憩室内。伊波がお茶を注いでほっと一息ついている所に、同じく休憩中で、暇を持て余していたはずの山田が突然声をかける。
 その言葉の真意を読み取ることができず、伊波は当然のように小さく声を漏らしたばかりだった。

「だーかーら。伊波さんは、小鳥遊さんと交際するにあたって色々と大変だなー。と思ったんです」

「ちょ、山田さん!?」

 山田の言葉を聞くと、ぼっ、と顔を一瞬で紅潮させ、伊波は思わず周囲を見渡す。
 この休憩室には、現在、伊波と山田以外の人物は存在しない。誰にも聞かれていないことを確認し(とはいっても、小鳥遊以外のメンバーにはほぼ全員にバレているのだが)、伊波は安堵の息を漏らす。

「い、いきなり何を言い出すの山田さん」

「・・・山田、気づいてしまったのです。伊波さんと小鳥遊さんの間に立ち塞がる、とてつもなく大きな壁を」

 紅潮した顔で伊波が尋ねると、山田は、酷く神妙な顔つきで話し始める。普段から謎に満ちている・・・と言えば満ちているような気がしなくもない山田がそのような顔つきになってしまうと、思わず伊波も身構える。

「・・・か、壁・・・って・・・?」

「・・・伊波さんもご存知の通り。小鳥遊さんは、現在、小鳥遊家全ての家事を行っていますよね」

「うん。男の子なのに、凄いよね」

 重大な事実を告げられる。と思っていたのに、山田の口から出てきた言葉は極めて平凡な内容で、伊波は肩透かしをくらったように感じながら、短く答える。

「そう。料理、掃除、洗濯。小鳥遊さんは家事においては完璧人間なのです」

「・・・うん」

「・・・さて。ここで話を少し変えます。いいですか。今から言うのは、あくまで仮定の話です。仮定の話なので、伊波さんは落ち着いて聞いてくださいね?」

「・・・うん?」

「小鳥遊さんと伊波さんが、結婚した、とします」

 山田がその言葉を発した瞬間、伊波が持っていた湯呑み茶碗が、木っ端微塵に吹き飛んだ。湯呑みの破片が、山田の頬のすぐ横をかすめ、一部は机へと勢い良く突き刺さる。
 身動き一つこそしなかったが、山田は顔を青ざめさせ、自らの茶碗を持つ腕がガクガクとかわいそうなくらいに震えていた。

「・・・い、伊波さん。山田は忠告したんですが」

 震えた声で山田が声を搾り出すが、伊波にその声は届いているのやら。
 顔を先程以上に真っ赤に染め上げ、手はわなわなと震え、周囲の空気は彼女から発せられる熱によって陽炎が見えるほどであった。

「なななななななななななな・・・何言うの山田さん!!」

「だから仮定の話だって言っているじゃないですか・・・。落ち着いてください・・・」

 勢いあまって、伊波の拳が自分へと飛んで来るのではないか。そんな考えすら沸き上がってしまう程に、山田の目の前の伊波は動揺しきっていた。
 そんな伊波を、山田は両手を伸ばしてなだめさせる。しばらく時間が経つと、ようやく伊波の動揺も治まってきたようで、呼吸は荒かったが、なんとか会話が出来る程には回復したようだった。

「伊波さん。いい加減にしてください。伊波さんが赤面症なことは知っていますが、そこまで耐性が無いようだと、山田正直うんざりです

「うう・・・意外に辛辣・・・。ごめんなさい・・・」

 冷ややかな山田の視線を受け止め、伊波は目に涙を溜めながら、か細い声で謝罪する。
 やれやれ。といった様子で溜息を一つついてから、山田は話を本筋へと戻す。

「・・・いいですか。今から言うのは た と え!!です。いいですね?」

「は、はい」

「小鳥遊さんと、伊波さんが、もし、万が一、まあまず無いでしょうけど何かの間違いで、地球の自転速度が変化するよりも有り得ないことでしょうけど、も し か し た ら

「そ、そこまで念押ししなくていいから!もう茶碗握りつぶさないから!別の意味で泣けちゃうから!!

「ところで伊波さん。自転速度、って、何ですか?

そこから!?

「まあ、冗談はこれくらいにして。もし小鳥遊さんと伊波さんが、結婚、したとします」

 山田の言葉を聞くと、頭では理解していても、伊波の顔が真っ赤に染め上がる。しかし、今度はなんとか理性を保ち、

「は・・・はいぃ・・・」

 と、膝の上に乗せた手をもじもじとさせながら、消え入るような声で反応を返す。

「そうなると、当然、二人で生活。家事をお互いに分担して、生活を続けていくことになるじゃないですか」

「そ・・・そう、だねぇ・・・」

 小鳥遊と二人で生活している様子でも思い浮かべているのか、伊波は顔を真赤にしながらも、どこか嬉しそうな笑みを浮かべ、適当な返事をする。

「それって、まずくないですか?」

 しかし、そんな夢心地の伊波に、山田の言葉が突き刺さる。

「・・・え?どういう、こと?」

「だって、さっきも言った通り、小鳥遊さんは家事に関しては無敵超人なんですよ?・・・さて、ここで尋ねますが。伊波さんは小鳥遊さんより料理が上手な自信はありますか?」

「え」

「掃除が得意な自信は」

「え?」

「洗濯物を小鳥遊さんより綺麗に丁寧に畳めますか?」

「え。え?ええ?」

 矢継ぎ早に、伊波へと尋ねる山田に対し、伊波はそのような間抜けな声を漏らすことしかできない。

 山田の言葉の意味を理解しよう、と、必死で思考を巡らせているらしき伊波を見て、山田はまたため息をつくと、更に残酷な言葉を重ねる。

「・・・それじゃあ離婚ですね」

りこん!!?

 小説、テレビドラマでは何回と見聞する言葉であるが、まさか自分自身にそんな言葉を告げられることがあろうとは予想も出来ず、伊波は本日一番の驚愕の声を出す。

「ななな、何で!?」

「いいですか伊波さん。落ち着いて考えるのです。人間、落ち着くことが肝心なのです」

「は、はい。山田先生」

「伊波さんがノリノリなようでなによりです」

 うんうん。と満足そうに頷いてから、山田は続ける。

「最初の1年くらいは何事なく過ごせるかもしれません。しかし、だんだん、小鳥遊さんにはストレスが溜まってきます。伊波さんに、ことあるごとに『料理の味付けが濃い!』だとか、『掃除が隅々までできていない!』だとか、『洗濯物が綺麗に畳めていない!!』だとか言い始める可能性は大いにあり得ます」

「・・・・・・」

「そして、そんな小鳥遊さんの愛の無い言葉に、伊波さんの愛も冷めていきます。その内、些細なことで二人は口喧嘩を繰り返すようになります。数年も経てば、その溝はもう修復でいない程に深くなってしまい・・・ついに二人は別れを・・・って伊波さん!?」

 心酔したように、小鳥遊と伊波の未来図を想像し続けていた山田だったが、ふと伊波に目をやると、伊波が目から大粒の涙を流していることに気づき、青ざめながら伊波の名を呼ぶ。
 伊波は呼ばれてもすぐに返事をできる状態ではなく、ただひたすら悲しみに顔を染め、涙を流すばかりだった。

「い・・・嫌だよぉ・・・」

 ぼろぼろと涙をこぼしながら、搾り出すように伊波は言葉を漏らす。
 そんな伊波をどうにかなだめようと、山田は真っ青になりながら手を必死で動かすのだが、その手は何かをするわけでもなく、むなしく宙を切るばかりであった。

「い、伊波さん。大丈夫です。別に必ずそうなるわけじゃないんです!今から、少しでもその問題に向けて努力すればいいんです!!」

 もはや上手く慰める言葉を見つけられなかったのか、山田は開き直るように伊波へと提案する。
 伊波はしばらくの間は泣きぐずっていたが、ようやく落ち着いてきたのか、何回も涙を拭った後、

「そ、そうだよね。このままじゃ、駄目だよね」

 と、涙のせいで赤くなった目をこすりながら、少しかすれるように決意の声を明らかにする。なんとか泣き止んでくれたことに安心し、山田は何度もこくこくと頷いた。その顔は、喜んではいながらも冷や汗に満ち満ちている。

「と、とりあえずどうするべきなんだろう」

「そうですね。まず、小鳥遊さんと伊波さんの家事力にどれほどの差があるのかを調べるのが大事ですね。山田がそれとなく聞いてきますね」

 伊波の返事を聞くことすら待たず、山田は休憩室を勢い良く飛び出してしまい、伊波は何も声をかけることすらできなかった。
 大丈夫かな?と首を傾げながら、自分が割ってしまった茶碗の欠片を集めよう。と、椅子から立ち上がる。
 そしてしゃげみこみ、床に落ちている大きな欠片を、慎重に・・・

「聞いてきました!!」

「早くない!?」

 落ちた欠片を一つつまみ上げたところで、勢い良く休憩室の扉を開けながら山田が入室してきたため、伊波は危うく指を欠片で切りかけるところであった。
 伊波を驚かせた山田はというと、使命をやり遂げた達成感からか、その顔はとても晴れやかだ。

「そ、それでどうだった?」

 欠片を踏まないよう、山田に注意を促しながら伊波は尋ねる。手には箒を持っており、尋ねながらも茶碗の欠片掃除を続けている。
 すると山田は、あれだけ晴れやかだった表情を、途端に曇らせてしまった。

「あ。その。えーっと。・・・料理、の話なんですけど」

「うん」

「・・・本屋に、料理本が置いてあるでしょう?」

「え。あ、うん。色々あるよね」

「あれに載っているレベルなら全て作れるそうです」

うっそお!?

 伊波から目線を少し逸らしながら、山田は残酷な現実を伊波へと告げる。そんな現実をすぐに受け止めることはできなかった伊波の悲痛な叫び声が、休憩室に響き渡った。茶碗の欠片が入れられた塵取りを危うく落としそうになったのを、なんとか堪える。

「だだだ、だって・・・ええ!?」

「伊波さん。残酷な現実ではあります。でも、受け止めなければならない問題でもあるのです。・・・さて、伊波さんの料理の腕はいかほどですか?」

「え。あの、その・・・」

 動揺を隠し切れない伊波ではあったが、山田の言う通り、受け止めなければ事実をとりあえずは受け止め、自分の料理の腕を思い出す。
 正直、伊波は普段から料理を常に作っているわけではない。家事は専業主婦である母がいるため、母の家事を手伝うことはあったとしても、伊波自身が家の家事を行うという事態は意外に少ないのだ。
 もちろん、炒め物やカレーなどの簡単な料理は作ることができるし、味も決して酷いわけではないが・・・あくまで、簡単な料理。しかも、特に極めてもいない素人料理でしか無い。

 ほんの十数秒思考を巡らせるだけでも、小鳥遊と伊波の料理の腕の差は歴然であった。

「・・・どうやら、惨敗のようですね」

「・・・はいぃ」

「じゃあ掃除はどうですか?」

「前に、机の拭き方を注意されたことがあります・・・」

「・・・洗濯はどうですか?」

「料理と同じようなものだと思います・・・」

「ああ。こりゃ駄目ですね

「そんな事言わないでよ!」

 決して伊波と視線を合わせようとはせず、ボソッと言葉を漏らす山田に、伊波は泣きつくかのように訴えかけた。情けない事極まりない姿である。

「まあ、小鳥遊さんが異常なだけで、大丈夫ですよ。伊波さんは十分平均です」

 再び目に涙を貯め始めてしまった伊波をなだめるために、山田はそのように言葉をかける。
 しかし、その程度の言葉では、伊波が立ち直ることはもはや不可能であった。

「・・・りこん・・・りこん・・・」

「い、伊波さん。絶望に満ちた表情で離婚、を繰り返さないでください。そもそも結婚もしてません

 山田が冷静にツッコミを入れるが、それでも伊波の調子は戻らず、ついには目から涙が零れ落ち始める。

「だ、だって、私、男が嫌い男が嫌いって小鳥遊君のこといっぱい殴ってるのに、私が小鳥遊君に勝てる女らしさなんて無いんだもん・・・!!」

「え、えっと。た、小鳥遊さんは男ですよ・・・?」

「女装は美人だもん・・・」

「ああ。まあ、確かに

 小鳥ちゃんの姿を思い浮かべ、山田は静かに一度頷いた。その直後に「しまった」と思ったのは言うまでも無い。

「だ、大丈夫ですよ。伊波さんは優しいですし、とっても可愛いですよ。山田が保障します!」

「・・・山田さんが・・・?」

「はい!山田のお墨付きです!!」

「・・・うう・・・」

「な、何で泣くんですか!?山田ブランドの効力ってそんなもんですか!?

 山田が、くだらないショックを受けて叫ぶ。

 その時。


「・・・何やっているんですか。二人して」


 休憩室入り口から、恐ろしい程に冷ややかな小鳥遊の声が二人の耳に飛び込んできた。

「あ!小鳥遊さん!助けてください!」

「とう」

痛いっ!何故山田にいきなりチョップですか!小鳥遊さん山田嫌いですか!」

「・・・・・・それなり、に?

「悩んでそれですか!泣きますよ山田も!!」

「いや。伊波さんが何故泣いてるかもわからないのに、面倒を増やすな」

 はあ。と深い溜息をつきながら、涙目の山田を押しのける。
 そして、伊波へと歩み寄った。もちろん、殴られないよう、絶妙な距離を空けることは忘れずに、だ。

「どうしたんですか、伊波さん?山田がまた何かやったんですか?」

「ちょ、小鳥遊さん。山田本当に泣けてきたんですけど

「お前はもう休憩時間終わってるだろ。とっとと仕事戻れ。馬鹿

「う、うわーん!相馬さーん!小鳥遊さんが山田をいじめますー!!」

 冷ややかな視線と言葉を浴びせられた山田は、涙をぽろぽろと零しながら、休憩室を飛び出していった。
 やれやれ。と、小さなため息をまた吐くと、やっとのことで伊波へと向き直る。

 伊波は、小鳥遊が入室してきたため、泣きぐずることはやめていたが、涙自体がすぐに止まるはずもなく、儚げな表情のまま、頬を涙がぽたぽたとつたっていた。
 そんな伊波の様子が酷く痛々しくて、小鳥遊は、胸を締め付けられるような感覚に思わず眉をひそめる。

「・・・どうしたんですか?山田さんが何かやらかしましたか?」

 出来る限り穏やかな声を出すよう気を付けながら、小鳥遊は伊波へそっと問いかけた。
 小鳥遊の言葉を聞くと、伊波は首をふるふると横に振る。

「ち、違うの。山田さんは、悪くないの」

「そうなんですか?・・・なんだか、悪いことしましたかね」

 まあ、そんなに悪いことはしていないのだろうけど。と、小鳥遊な心の中で毒づいたが、これ以上伊波が気にしてはいけないな、とその言葉を口に出すことは無かった。

「じゃあ、どうしたんですか?」

「・・・私、さ。女らしく無いよね」

「はい?」

 伊波の唐突な言葉に、思わず小鳥遊は確認の声を漏らす。
 ぐっ、と膝の上の拳を握り締めながら、伊波は続ける。

「だって、私に女らしい所なんて無いもの。料理も、掃除も、洗濯も。・・・というより、家事全般、小鳥遊君に完敗だもん。人より優れた所なんて、腕力くらい」

 自嘲気味に、伊波は笑った。酷く、悲しい笑い方だ。と、小鳥遊は思った。
 が、そんな伊波の言葉を、小鳥遊は何も言わずに聞いている。その表情から、何らかの感情を読み取ることはできない。

「・・・男が嫌い嫌い、って言いながらさ。私は全然女らしくない。そんな事を考えてたら・・・なんだか・・・」

 伊波の声が、震える。自虐的な言葉を言い切ることすらできずに、俯いてしまった。膝の上の拳が、小刻みに震えている。

 小鳥遊は、頭をぽりぽりと指で掻いた。

 本当に。

 なんというか。

「伊波さんって、馬鹿ですね」

辛辣!!

 小鳥遊がきっぱりと言い放った言葉に、伊波は思わずそう言葉を返す。その目には大粒の涙が溜まっており、言った直後にぽろぽろと零れ落ちた。

「何ですか?俺より家事ができないと思ったから、泣いていたわけですか?」

「ま・・・まあ。・・・要点を、まとめれば」

「ばーか」

やっぱり辛辣!!

 はあー。と、深い深い溜息を吐いてから、小鳥遊は口を開く。

「俺と家事の腕を比べてどうするんですか。家事の腕なんか、人それぞれの生い立ちでまるで変わるものじゃないですか。伊波さんが俺より家事が下手なのは当たり前なことで、必然じゃあないですか」

「・・・え」

「俺よりずっとずっと多くの時間を家事に費やしてから、そういう言葉を言ってください。大体、俺だって今は趣味みたいな物になりつつありますけど、元々家事だって好き好んでやっていたわけじゃあないんです。伊波さんより家事が得意だからって俺は全然嬉しくないし、伊波さんが気にする理由もわかりません。・・・それとも伊波さんは、米を洗剤で研いだり、塩と砂糖を常に間違えたりする程に家事が下手糞なんですか?」

「あ。いや、そんなことは、無いです」

「じゃあ別にいいじゃないですか。少なくとも、一般の女子として気にすることではないでしょう。自分で言うのも悲しいですけど、俺は育ってきた環境が劣悪だったからこうなっただけです。伊波さんは、一般的な家庭で育ってきたことをもっと幸福と感じるべきです」

「は、はい。すいません」

 あまりにも堂々で、全く物怖じしない小鳥遊の言葉に、思わず伊波は敬語で返事をする。

「・・・というか。何で突然そんな話になったんですか」

「あ。その、えっと。山田さんと、家事ができないと、将来・・・その、結婚とかした時、大変だな。って、話になって・・・」

 とっくに涙も止まっていた伊波は、酷く恥ずかしそうに、小鳥遊へと事のいきさつを告げた。
 その言葉を聞くと、「やっぱり山田か」と小鳥遊は呟き、先程の山田への叱責が決して無駄な物ではなかったことに安堵した。

「・・・結婚した後の心配なんて、男嫌いを完全に直してから好きなだけしてください」

「・・・返す言葉もありません」

 当初浮かべていた涙とはまた別の、情けなさからくる涙を目に浮かべ、伊波は静かに頷いた。

「・・・大体。夫の方が家事ができたところで、別に気にすることは無いじゃないですか」

「え?」

「古臭い考え方かもしれませんけど・・・。仕事をして家庭を支えるのが夫の務めでしょう?夫が働いている間、家を守るのは妻・・・つまりは伊波さんですよ」

「・・・そう、かな?」

「そうですよ。俺だって、今は家事漬けの毎日ですけど、もし結婚したら、家事よりも仕事の方に全力を注ぐことになるんですよ?伊波さんは、そういう夫をサポートできる程度の家事ができればいいんです。そういう生活になれば、家事の腕だって自然と・・・伊波さん?」

 饒舌に話す小鳥遊であったが、言葉の途中から、伊波の顔が真赤に染め上がり俯いてしまったのを確認すると、伊波を気遣うようにそう言葉をかけた。

「どうしたんですか?顔が赤いですけど」

「へ!?い、いや!何でも無いの!!」

「何でも無いわけないでしょう。そんなに顔をして。この際、悩みは全部言ってくださいよ。後々面倒なんで」

「ご、ごめん。でも、本当に悩みとかじゃなくて・・・」

「悩みじゃなくても、言ってくださいよ。このままじゃ気持ち悪いですし・・・」

「ほ、本当になんでもないの!!話聞かせてごめんね!私、仕事戻るね!」

 小鳥遊が言い終える前に、伊波は慌てて立ち上がり、小鳥遊の横をそそくさと通り過ぎて休憩室を飛び出していった。
 当然呼び止める小鳥遊であったが、小鳥遊の声は、休憩室のドアに阻まれ、伊波に届くことは無いのであった。

「・・・なんなんだ。一体」

 大して気にする事ではない。と、頭では理解していても、小鳥遊にはどうしようも無い後味の悪さが残っていた。

「・・・まあ。いいか。悩みはある程度は晴れたみたいだし」

 まだ休憩時間では無いが、現在は客の入りが少なく特に仕事も無いので、小鳥遊は休憩室に置かれた椅子の上に座り込んだ。
 ふと、すぐ横のテーブルの上に目をやると、水の雫が幾つかテーブル上に点在していた。
 それが何かは、すぐに分かった。伊波の、涙であった。

「・・・あの人の悪い所は、すぐに一人で悩んでしまうことか」

 涙を、指先で拭う。確かに伊波の瞳から零れ落ちた涙は、まだ微かに温かかった。

「・・・結婚、か」

 ぼそっと呟き、結婚した伊波の姿を、小鳥遊は想像してみた。
 きっと彼女は、必要以上に夫のために努めようと、何から何まで一生懸命に物事をこなすのだろう。
 そして、優しい彼女は。仕事から帰った夫を、笑顔で出迎えるのだろう。

「・・・っ」

 机を、思い切り拳で叩きつけた。伊波の涙が宙に舞い、その雫の欠片が小鳥遊の手の甲へと付着する。
 そして直後に、小鳥遊はハッと我に返る。
 何故。俺はこんなにも苛立っているのだ。と。

「・・・はあ」

 深い溜息。そして、椅子の背もたれに体重をかけ、小鳥遊は天井を仰ぎ見る。

 本当に、どうかしている。

 何年後だろう。・・・きっと、そう遠くは無い未来。


 彼女の隣にいるのが、俺であればいいのに。


 そんな事を、思うなんて。

「・・・仕事に、戻るか」

 変な話をしたせいで、少し平静を保てないでいるのだろう。
 小鳥遊は、自分の考えにそう結論を出し、立ち上がる。

 そんなこと、あるはずが無い。

 でも。

 ・・・でも。

「・・・あの笑顔を、もっと・・・見たいんだ」

 そう呟くと、小鳥遊は休憩室の扉に向けて、歩き始めた。







(どうしよう。変な風に思われていないかな・・・?)

 休憩室から勢いよく飛び出した伊波は、深呼吸を繰り返しながら、フロアへと歩き出して板。
 顔の熱はまだ冷めておらず、今フロアに出たら、みんなにからかわれてしまうだろう。だが、あの場で小鳥遊と二人きりでいること。それこそ、心臓がもたない。伊波はそう判断し、休憩室を飛び出したのだ。

 想像、してしまったから。

(馬鹿だな。私。結婚なんて、できるはずないのに)

 そんなことは、わかっていても。

(でも。でも。・・・もし、私が結婚を、して)

 家事をこなし。料理も、自分が作れる精一杯の物を作り。

 そして。

(仕事から帰ってくる、旦那さんが。・・・小鳥遊君だったらいいのに)

 そして。

(『おかえり』と言った私に、『ただいま』と、笑顔で言ってくれればいいのに)

 そこまで想像した時点で、顔の熱は一気に限界近くまで高まる。
 そんなことが、あるはずは無い。
 そう理解していても、この顔の熱はすぐには冷めないのであった。

(・・・そういえば、私。小鳥遊君の笑顔って、あんまり、見ることが無いかも)

 小さい物を愛でる時の小鳥遊は大抵笑顔ではあるが、それはあくまで、伊波以外の物が原因による笑顔であって、伊波の行動などが小鳥遊の笑顔へとつながったことはあまり無い。
 それが、伊波には悔しかった。

 ・・・いつか。

(いつか。隣同士で。・・・笑い合えればいいな)

 そんな事を考えてから、伊波は小さな笑みを浮かべ、歩みを再開した。
 まだ、顔の熱はおさまってはいないが。今なら、誰にも心配をかけさせずに仕事ができそうだった。




 小鳥遊宗太。

 伊波まひる。


 二人が思うは、互いの笑顔。

 ほんの少しだけ未来の。

 二人の、笑顔。










 あとがき

 いかがだったでしょうか!
 直接的繋がりはありませんが、以前書いた「となり同士の約束」の背景には、このような話があったんだよ!的な認識で見ていただいても大丈夫。という作品になりました。
 実際、小鳥遊が家事に関しては完璧超人で、伊波がそれに対して負い目を感じる、という話はあってもおかしくないと思うのです。伊波は、流石に宮越程料理下手では無いと思いますが、それでも平均女子高生の域は出ないと思うので。
 そういった問題も乗り越えて、二人仲良く永遠に爆発すればいいと思いますリア充爆発しろ本当にしろ(待

 山田をどこまでウザったく書けるかどうかが、WORKING!!物書きの試練だと思います。

 それでは!!

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コメント

小鳥遊+伊波の小説を読みました。伊波ちゃんが可愛い、
WORKING!!のコミック10が楽しみです。
早く小鳥遊と伊波が恋人になってほしい、
やばり好きです、小鳥遊と伊波が、

2011-09-24 Sat 00:22 | URL | レモン [ 編集 ]

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