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銀の働き部屋

管理人銀河の、日記兼テキストサイトです。取り扱うジャンルは主にヤングガンガン連載のWORKING!!になると思います。最近は東方の霖之助小説を書くのにも夢中。どうかよろしくお願いします。リンクはフリーです。感想は常に受付中です!もらえたら泣いて喜びます

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少女は「デート」に「夢」を見る。少年は「デート」に「今」を見る 東田×宮越



 リクエスト小説更新するっよー!!!!!


 はい!!やっとこさ書き終えました!40000Hit記念リクエスト小説第一弾!大変長らくお待たせいたしました!

 抽選結果発表からジャスト1ヶ月!一応自分の掲げていた目標はギリギリ達成できた、と言えると思いますが、それでも少し長かったと思います。申し訳有りませんでした。

 奏莉亞さんからのリクエスト。東田×宮越。シチュエーション内容は、

 *東田×宮越
 *何故だかデートすることになった話
 *出来れば東田くん視点
 *ギャグでもいいけど最後は甘めに

 ということでしたので、このリクエストに沿った物を書き上げました。
 ギャグでもいい、ということでしたので、シリアスにしようかギャグにしようか悩んだのですが、書いてて楽しいので前半~中盤はギャグでまとめました。最後が甘めかどうかは少し自分では判断できませんが、奏莉亞さんにお任せしようと思います。
 

 さあ。前置きもそこそこに、さっさと行きましょう。

 東田×宮越。タイトル「少女は『デート』に『夢』を見る。少年は『デート』に『今』を見る」です。タイトルは3分で考えました!いっえーい!ナイス俺クオリティー!!(銀河は深夜にこの小説を仕上げテンションが行方不明です
 

 それでは、続きからでどうぞ!!









 デート。の意味とは。

「日時や場所を定めて、異性と会うこと」 【広辞苑】より

 ・・・うん。すまない。もう少し具体的な事を書いているかとおもいきや、案外シンプルにまとまっていて俺が一番驚いている

 まあ、いいや。ここでは、一般的に健全な青少年(笑)が連想するデートについて話そうと思う。

 デート。とは。

 愛し合う二人(とはいっても、デート、という単語を使いたがるのは精神的に幼い者達ばかりであるような気もする)が、互いに寄り添いながら、遊んだり、映画を鑑賞したり、食事をしたり。そのような至福の時間を過ごし、二人の愛を深め合う。

 まあ、こっ恥ずかしい上に安い言葉ではあるが、一般的な高校生が思い浮かべる「デート」という言葉の意味と、それほど相違無いものであろうと思う。

 ・・・更に言うと、だ。デートというものは、神聖な物でなければならないはずだ。
 デートをすれば、胸が高鳴り、その相手を見るだけで、心が満たされていく。そんな物でなければならないはず。

 そうだ。そうじゃなければ、デートとは呼べない。

 だから。

 だから。

「おーい東田ぁー!!ペンギンがいるぞー!ペーンーギーン!!」

「・・・頼むから静かにしてもらえませんか。・・・宮越さん」

 こんなにも胸がときめかない物を、俺はデートとは認めない。

 絶対に。







「なあ東田。デートしようぜ」

「やだ」

はっや

 客足も途絶え、もうそろそろバイトの時間も終わる。という頃合の、ワグナリア店内。
 食器類の片付けをしている最中に突如隣から落とされた特大級の爆弾を、俺は動じることも無く、完全に回避してみせた。

「なんでそんなに早く断るんだよ。私達、恋人同士だろ?」

「俺はあなたと交際をし始めてから、辞書で10回は『恋人』の意味を調べましたよ」

「? お前、何言ってるんだ?」

「はい。今確実に時間を無駄にしたー

 もはや慣れっ子だ。と、心の中で少し毒づきながら、客が残したドリンクバーの烏龍茶に、俺は視線を落とす。・・・この烏龍茶を口にした所で、俺は殆ど味を感じることはできないのだろう。口の中に微かに広がる、烏龍茶特有の苦味が俺は大好きだったのだが、そんな些細な味を堪能できるような味覚は、とうに失ってしまっていた。

「なー。いーじゃん。デートしようぜー」

 俺の舌を破壊した原因である、俺の彼女は、頬を少しふくらませながら、殆ど感情もこもっていないような声で発言を繰り返す。
・・・本当に、どうしてこんなのが彼女なんだか。と、俺はため息を一つ。

「・・・ちなみに、デートに行くとすれば誰が金を出すわけです?」

「お前」

「絶対にやだ」

「聞く耳もたねえなお前。なんか予定でもあんのか?」

「別にそういうわけじゃないですけど。いつもファミレス・ファーストフードの代金とかを奢らされるだけでも、俺の財布に優しくないというのに、その上宮越さんに一日振り回された上に金を払うなんて・・・吐き気がしてきます

「おま・・・本当に顔青くするなよ。何か凹むだろ

 喉元にこみ上げてくる嘔吐感を、とりあえずは堪える俺。喉が焼けるように痛い。
 演技でも何でも無い。付き合いはまだ短いだろうが、俺は、宮越華という人物のことはよく知っている。こんな女と一日一緒。想像したくも無い。

「そんなわけで、嫌です」

「えー。行こうぜー。遊園地とかさー。水族館とかさー」

「なんでどこもかしこも金がかかる所ばかり選ぶんですか・・・。タダ券があるとかならまだしも」

 はあ。ともう一度深くため息をついてから、テーブルでも拭きに行こうか、と俺は歩き始める。
 と、

「おーい。東田くーん。宮越さーん」

 キッチンとフロアを繋ぐ通路から、河野さんがひょこっと顔を出す。その表情は、普段彼が浮かべている物となんら変わりの無い、陽気な笑顔であった。

「河野さん?どうしたんですか?備品の補充ですか?」

「違う違う」

 ノリも軽く、手を軽く振りながら河野さんは俺へと歩み寄る。

「いやね? 前に大学の学祭のイベントで景品が当たったんだけど、その存在を今日になるまですっかり忘れててさー。期限ももう少しで終わっちゃうから、誰かいらないかなー。と思って」

「景品?期限?・・・なんなんですか?それ」

「これ」

 河野さんはポケットに手を突っ込むと、紙切れを一枚取り出し、俺の目の前へと差し出した。

「水族館のチケット。ペア一組様ご招待券。どう?」

「行く!!!」

 俺が答えるよりも早く、宮越さんが河野さんへと飛びつき、その手から招待券をもぎ取る。その動きは、バイトを始めてから見続けてきた宮越さんの動きの中で最も早いと思われる程であった。

「ちょ、ちょっと宮越さん!?」

「ほら東田!タダ券だぞ!これで文句無いな!!」

「いや、その、確かにタダ券ですけど・・・。も、もったいないですよ河野さん!河野さんが楽しんでくれば・・・」

「東田君・・・それは、彼女もいない俺への嫌がらせ・・・?」

「あ、いえ、そういうわけでは!そうだ!足立さんと村主さんにあげたらどうです!?」

「もちろんあの二人にも聞いたんだけどさ。その券、期限が今週末までなんだよね。行くとしたら週末になるわけなんだけど、あの二人はそれぞれ別の用事があるらしくてさ」

「ぐ・・・!じゃ、じゃあ、進藤さんと鎌倉さんなら・・・」

「東田君。本気で言ってる?」

「すいませんでしたあっ!!」

 完全に退路を絶たれてしまっていることに気づき、俺は目から溢れでてくる塩水を止める方法も見つけられず、その場に膝から崩れ落ちる。
 そんな俺とは対照的に、どこまでも嬉しそうに券を見つめる宮越さん。一般人から見れば、恐らくは愛らしいのであろうその笑顔が、俺にとってはどこまでも憎たらしい。

「ま、まあまあ東田君。一応恋人同士なんだから、たまには、ね?」

「河野さん・・・」

 苦笑いを浮かべながら、こんな俺にフォローを入れてくれる河野さん。俺は立ち上がり、河野さんへと向き直り。

一生、怨みます

怖っ!!!その顔は健全な高校生がしていい表情じゃないよ東田君!!

 とりあえず河野さんへとたっぷりの怨念を向けてから、宮越さんを見る。
 宮越さんは俺と視線が合うと、両手を伸ばし、俺の目の前へと券を運び、

「楽しみだな!東田!」

 そう、とびきりの笑顔でその想いを告げるのだった。

 ・・・ああ。

 この週末に、疲れを癒す事を期待するのは・・・やめよう。

 どこまでも眩しい笑顔を目の前に、俺は、心の中でそう決意するのであった。





 そんなこんなで、日曜日。デートの約束の日が遂に訪れてしまった。

 公園の時計台前。という、初デートにしたってあまりにもベタすぎる。と笑われてしまいそうな場所で、俺は腕時計を眺めながら宮越さんが来るのを待っていた。
 待ち合わせの時間は10時。そして現在の時刻は、9時55分。まだ待ち合わせの時間にも到達していないので、俺は別に苛立つことも無く、時計から視線を見上げると周囲を見渡した。
 すると、公園の入口に宮越さんが小さく映った。

「よお東田!待ったか?」

「待ったと言えば待ちましたけど、俺が20分早く到着しただけなので、宮越さんが気にする必要は全くありません」

「わかってねーなお前。こういう時は笑顔で『全然。俺も今来たところ』って言うもんなんだぞ」

「そんな事知りません。というか、もうあなたの教育に悪いんで少女漫画読むのやめてくれません?」

 ととと、と俺の下へ駆け寄ってきた宮越さんと、そのような軽口を言い合う。少女漫画を読むのはまだいいとして、その内容をすぐ鵜呑みにしようとする癖だけはどうにかできないものか。
 その結果、「キスをしよう」と、恥じらいのなど欠片も感じられない声で言われるこちらの身にもなってもらいたい。心の準備が・・・という意味じゃない。単純に、怖い。

 宮越さんは俺の言葉に少し不満気で、頬をぷくっとふくらませたが、「まあいいか」と表情をすぐに戻した。バカは面倒だが、扱いやすいのだけがいい所である。宮越さんってホント馬鹿。

「じゃあ行こうぜ。水族館。どうやって行くんだ?」

「完全にノープランだったんですね。まあ、調べてますけど。バスですぐらしいんで、行きますよ」

 時計台を見上げ時間を確認してから、俺は宮越さんのペースなど考えずに歩みだす。宮越さんは、文句ありげながらもすぐに俺の後ろへとついてくる。

 ・・・デートは初めてだが、宮越さんと交際(笑)を始めてから気づいた事が一つある。

 それは、女性は歩くのがとても遅いということだ。

 後ろを確認せずに歩き続けていると、気づけば、俺と宮越さんとの間にはそれなり長い距離が空いてしまう。だから俺は足を止めて、宮越さんを待つ。すると宮越さんは俺が足を止めたのを見て、少し不満気に早歩きで俺の横へと並ぶ。

 交際(笑)を始めてからしばらくの間はそのようなことが顕著にあったのだが、流石に俺は馬鹿では無いので、途中からは宮越さんの歩幅にあわせて歩く事が癖になった。・・・別に、置いていきながら歩いた所で俺は困らないのだが。
 ・・・先を歩く俺を早足で追いかける宮越さんが、少し可哀想に見えた時点で俺の負けだったのだろう。
 まあ、こんな話をした所で「だからなんだ」と言われてしまえばそれだけなのだが、仕方ないだろう。交際(笑)を始めて、学んだ事がせいぜいその程度のことしか無いのだから。

 ・・・しかし、だ。

 何故この人は「遅く歩け」程度の命令を出さなかったのだろうか。

「・・・何だよ?」

 俺の視線を感じ取った宮越さんが、俺を見上げながら首を傾げる。
 別に。と大して感情もこめない声で返事をすると、宮越さんはもう一度首を傾げたが、すぐに視線を正面へと戻した。

 ・・・ああ。もう一つ。交際(笑)を始めて、もう一つ気づいたことがある。

 意外と、宮越さんは背が低い。ということ。

 ・・・だからなんだ?

 ・・・なんだろうな。






 そんなこんながあって、現在、俺と宮越さんは水族館へと足を踏み入れたわけだ。
 そして、話は冒頭へと戻る。

「やっぱペンギンは可愛いなー!」

 水族館へ入るとすぐに、ペンギン達がせわしなく動き回っている水槽を視認し、宮越さんはその水槽へと駆け寄っていった。
 俺は宮越さんに渡しそびれた招待券の半券を、ため息混じりにポケットへと収める。そして、あの馬鹿が大声を出してはしゃぐ前に宮越さんの下へと歩み寄った。まあ、少し手遅れだったわけだが。
 日曜日という事もあってか、水族館の中は人通りが多い。殆どは子供連れの一家であるが、中には俺たちのように同世代の男女が並んで歩いている姿も視認できる。掻き分けて進まねばならない。という程に人が多いわけでは無いが、周囲に気を遣って話すという事はしなければならない、という程度だろうか。

 ペンギンの水槽は、高さは軽く数メートル。内部は、ペンギン達が陸上でくつろげる岩の足場。そして、泳ぎ回るための水場が存在し、ペンギンが水場で泳ぐと、俺たち観客の目の前を通るような形になっている。

「初めて来ましたけど、大きい水槽ですね」

「そうだなー。・・・あ!東田!あそこに子どもがいる!子ども!」

「すいません。子どもがいるのはいいんですけど、急に大きな声出さないで。耳痛い

引きこもりかお前!!そんなことより子ども!子ども!」

 耳をおさえながら、宮越さんの指の先に視線を移す。水槽の中に設置された岩場の影に、まだ灰色の毛にしか包まれていない小さな小さなペンギン達が固まっていた。
 近くにいるのが親だろうか。せわしなく、しかし、決して親から離れようとしないその姿が非常に愛らしい。

「あれは・・・可愛いですね」

「お?お前も可愛い、なんて思う感情あるんだな」

「俺の周りに可愛い人・物なんていませんから、普段はそりゃ言いませんよ」

「アライさん可愛いじゃねえか」

「俺にとっては、ただかっちゃいてくるアライグマですから」

「ちなみに、『かっちゃく』は北海道~東北の方言で、『引っ掻く』という意味だからな!」

解説やめろ。すげえ恥ずかしい

「そこは、『なまら恥ずかしい』って言えよ。馬鹿

「あんたは俺をどうプロデュースしたいんだ。何曜どうでしょうだ。そして辛辣だな」

 そんな事を話していると、俺たちの目の前をペンギンが泳いで通過する。
 その優雅な姿に、俺も思わず息が漏れたが、宮越さんの顔は俺とは比較も出来ないほどに輝いている。

「ペンギンって泳ぐの速いんだなー」

「そうですね。魚を追いかけて捕食することに特化されていますからね」

「そういえば、何でペンギンって空を飛べないんだ?」

「・・・何ででしょうね。昔何かの本で見たことがあるような・・・」

「お前でもわからないこととかあるんだな」

「俺はそんな万能じゃないですよ。ああ。完全に余談なんですけど、今作者がペンギンが空を飛ばない、飛べない理由を調べようとしてYAH○O!知恵袋見に行ったら、解答で『ダチョウといっしょ!面倒くさくなったんだよ!!』ってのがあって地味にツボに入ってます

「どうでもいいな」

「ええ。本日一番どうでもいいです

 面白かった(作者談)




 宮越さんはいつまで見ていても飽きなそうな程にペンギンの水槽に夢中だったが、ずっとペンギンの水槽ばかりを見ているわけにもいかないので、殆ど無理矢理水槽から引き剥がし、水族館の巡回ルートを見て周ることにした。

 この水族館は、ペンギン水槽の規模の大きさからも推測できるように、なかなか多用な水生生物を鑑賞できる、全国でも有名な水族館・・・らしい。なにせ、初めて来るのだから、断定はできない。

 しかし、前評判はある程度信用ができる物であったらしく、鮮やかに、しかし穏やかにライトアップされた水槽の中で泳ぐ魚達は、素人目に見てもとても美しい物ばかりで、細く薄暗い通路は輝きに満ちているように見えた。
 俺は、正直な話、物事に大きな関心を示す方ではない、と自覚している。だが、小学生時代などは動物図鑑や魚図鑑に夢中になっていた時期も当然のようにあり、あの時、本の中でしか見ることができなかった魚たちが泳ぐ姿を見るだけで、胸に温かさが満ちてくるような気がした。

 思っていた以上に水槽に心を奪われ、宮越さんの存在を忘れていたことに気づく。隣の宮越さんを見ると・・・どうやら、俺と殆ど気持ちは同じらしく、口を半開きにしながら、左右の水槽を輝いた瞳で見つめている。

「すっげえな!東田!」

「そうですね。正直、予想以上です」

 答えながら俺が歩き始めると、宮越さんもそれに合わせて歩き出す。左右の水槽には無数の魚達が優雅に泳ぎ回っていて、左右を見渡すだけでしばらくの間は飽きることが無い程だ。

「お!東田!あの魚は何だ!?」

 少し珍しい魚を視認すると、宮越さんはすぐに俺にそう声をかけてくる。展示されている魚なんて、視線を少し下に向ければ幾らでも説明書きがあるのだが、そんなことすら忘れてしまうような、童心を呼び起こす程の魅力がこの水族館にはある気がして、俺は珍しくそのことに関しては苦言を呈する事は無かった。

 宮越さんが声をかけてくる度に、適当に話を合わせる。それだけの事なのだが、宮越さんは十分満足そうであったし、俺も正直居心地が悪いという事は無かった。不安ばかり多い初デートであったが、いざ来てみればなんら大した事は無い。河野さんに感謝する必要があるな、と俺は一人頷いた。
 ・・・まあ、そのテンションに、確実に疲労感がたまることは間違い無いのだが。

「・・・あ! 東田! クリオネ! クリオネ!」

 宮越さんが指を差す先には、壁にはめこまれた小さな窓のような水槽の中で、ふよふよと上下運動を繰り返す、クリオネの姿があった。

「可愛いなー! なあ、クリオネのあだ名ってなんだっけ?」

「あだ名?・・・ああ。流氷の天使、ですかね」

「そうそれ! 可愛いよなー。天使ってのも分かるよー」

 クリオネを怖がらせないようにするため、クリオネの水槽の周りには膝程までの高さの仕切りが置かれていて、あまり近づいて見ることはできないのだが、宮越さんは愛らしいクリオネに夢中なようであった。

「・・・可愛いのは俺も認めますが」

「どうした? というか、お前が可愛い、とかって言うと若干キモいよな

できればペンギンの時に言ってもらえていれば、俺もこんなにダメージを受ける事は無かった。・・・話を戻しますけど、クリオネは可愛いだけでは無いんですよ?」

「どういうことだよ」

「クリオネは餌を捕食する時『バッカルコーン』なる6本の触手を頭部から出現させ、その触手で餌を掴み、その養分をじっくりと吸いとり栄養分を補給するんです。その姿は、とてもとても天使と形容することはできない程におぞましい物です。食事後はオレンジ色の内臓部分がどす黒く変色して醜悪な見た目になります。さあ。貴方はそれでもクリオネを天使と呼べますか」

「なあ。しょくしゅ、って何だ?

すげえ最初で躓いていた上にすげえ答えづらい質問してきやがった・・・!!!

「なあ。しょくしゅって何?」

「俺が悪かったんでもう黙ってくださいお願いします」

「変な奴だな。・・・そういえば、シャチいないのか!?シャチ!」

 クリオネへ向けていた体を俺へと向け、キラキラと輝く瞳で俺を見上げながら宮越さんは尋ねる。

「残念ですけど、シャチはいないですよ。シャチは日本では鴨川シーワールドにしかいません」

 そんな宮越さんの期待に応えられないのは少し残念だったが、俺は淡々と事実を伝える。
 すると宮越さんは、絶望に満ちた表情・・・と言う程でも無いが、あからさまに表情を落胆させ、がくり、と項垂れる。

「見たかったなー。シャチ。可愛いよなシャチ。昔のアニメにさ、シャチが出てくるのあったじゃん」

「・・・あー。殆ど覚えて無いですけど、そういえばやっていましたね。でも、シャチは本来海で最も凶暴な生物なんですよ」

「そうなのか!?あんなに可愛いのに」

「アニメで見れば可愛いですけど・・・。というか、そのアニメでも十分勇ましかったような。まあいいです。シャチは海の食物連鎖の頂点。わかりやすく言えば、海で一番強い動物です。殆どの動物には天敵と呼ばれる相手がいるものなんですけど、シャチにはそれがいません。相手がサメだろうとクジラだろうと、シャチは捕食できます」

「シャチ超こええじゃねえか!!」

「海のギャング、というあだ名は伊達じゃないってことですね」

「ギャング?・・・ギャングって、どんなのだ?」

「・・・海外版のヤクザ、みたいな」

「ヤクザ。ヤクザって、怖い・・・のか?」

「怖いですね。・・・こう、時には、人を殺したりとか・・・しますし」

「何だよ。ロクでもねえじゃねえかシャチ

あなたほどロクでも無い人間にロクでも無い、と言われてしまったシャチに対し、俺は今まで生きてきた中で最大の同情を送ります

 目を閉じ、未だに生で見たことは無いシャチに対して心の声で慰めの言葉を送る。

 すると。宮越さんはクリオネから別の生物へと興味を移し始めたらしく、キョロキョロと周囲を見渡し、観察の対象を探す。
 しばらくすると、お眼鏡に叶う生物を発見したのか、駆け足気味に少し離れた水槽へと向かってしまったので、俺もそれについていく。

「東田―!『オジサン』だって!変な名前!」

 宮越さんが指をさす、「オジサン」なる魚。嘘みたいな名前かもしれないが、本当に実在する立派な海水魚である。
 顔の前面に髭があり、正面から見ると、まるで人間のようであるかのようなその容姿から「オジサン」という名が付けられた、色々とそのまんまな魚だ。

「見ろよー!面白い顔―!」

「まあ、この世で一番面白い生物は宮越さんですけどね」

お前もう一度言ったら殺すからな。しっかし、この髭って何のためにあるんだろうなー」

「ちょっと待って。まがりなりにも彼女な人に『殺す』と真顔で言われた俺の心傷を少しは考慮して

 無駄に強く鳴り響く心臓をぎゅうっと押さえつけながら、俺は震える言葉で言うが、宮越さんはオジサンに向かって水槽のガラスをコツンコツンと小突くのに夢中である。気のせい、かな。もしかしたら気のせいだよね。だって、殺す、って。真顔で殺す、って。

「あ。鮭がいる」

 何気なく隣の水槽に目をやった宮越さんの言葉に、俺は何とか平静を取り戻すと、宮越さんの視線の先に俺も視線を向ける。
 そこには、北海道民には川でも食卓でも非常に馴染み深い鮭が、ゆうゆうと泳いでいる様を観察することができる水槽が設置されている。

「こうして鮭を見るのって珍しいよな」

「そうですね。多分、本州の人たちは、川を逞しく泳ぐ鮭の姿しかイメージできていないでしょうからね」

「そうだよな。・・・まあ、実際は。川の浅瀬で死ぬほどバチャバチャ跳ねまくって、次の日くらいになるとぐったりしてたまにビチビチ跳ねて、更に数日経つと見るも無残なくらいに腐って川に浮かんでるだけだけどな

「・・・ええ。・・・臭いも結講・・・キツいですよね・・・」

※作者は東北出身ですが、こんな感じだったので多分北海道もそう(作者談

 北海道冬の風物詩の情景を思い出しながら感慨に耽っていると、宮越さんが俺の袖を軽く引く。
 視線を宮越さんへと移すと、しゃがみこんだまま手を伸ばし、俺の袖を掴み、

「なあ東田。鮭見てたら腹へった」

 俺を見上げながら、子どものように、宮越さんは力無い声でそう言った。

 わずかな沈黙を置いた後、思わずため息を漏らしながら、

「・・・じゃあ。レストランに行きましょうか」

 何故だか、今日という日はとても穏やかに、そのような言葉を返すことができたのだった。




「あー!たのしかったぁー!!」

 周囲はもう少しで街灯が灯る程に暗くなり、遠方の空を見上げれば、消えかけの夕暮れも僅かに視認できる。そんな空に目いっぱい両手を伸ばし、宮越さんはどこまでも満足そうな笑みを浮かべながら叫んだ。
 そんな彼女を見て、俺は小さくため息を漏らす。宮越さんは酷く満足気だか、俺はというと、正直、少し・・・いや、かなり疲弊していた。
 水族館は色々と見所が多く、間違ってもつまらなかった、等と言うつもりは無いが・・・なにせ一緒に見て回ったのがこの人だ。逆に心身共に疲弊しない人間を拝んでみたい。
 しかし、そんな俺の様子などまるで気にしていない様子で、宮越さんはご機嫌のあまり、その場でくるくると回転する。人もそれなりにいるというのに、本当に、子どものような人だ。一緒にいて大して恥ずかしいとも思わない俺も、大分毒されているようだが。

「・・・終始声が大きすぎたこと。そして、イルカショーで小学生達を差し置きながら最も大声で手を挙げ、手伝いに選ばれてしまった挙句大声で俺の名前を呼んだりしたことには辟易しましたが?」

「細かい事気にすんなよ!」

 俺の肩を「ドンッ」と強く叩きながら、宮越さんはどこまでも快活に笑ってみせた。もはや勇ましい、とすら思えてくるような笑いに、俺も不思議と嫌な感情が湧き上がることは無かった。
 細かい、事。
 そうだな。細かい事かもしれない。

 肩にじ~んと染み渡る痛みに涙が滲み出てくる。

 痛い。間違いなく痛いのだが、不思議と許される痛みだ。これは、決して俺がMに目覚めてしまったから、等といったふざけた理由では無い。

 ただ。至極単純に。

 今日という日が楽しかった。・・・ような気がするからだ。

 そして、俺は夕焼け消え入る空を見上げながら、漠然と思う。


 ああ。

 これが、デートなのか。と。

 我ながら、馬鹿みたいに感慨深く。


「どうした?東田」

「いえ。・・・やっぱり宮越さんは馬鹿だな、と」

「何だよそれ。お前いつもそればっかだな。馬鹿って言う奴が馬鹿なんだよ」

 本当。その通りだ。

 今日という日は、俺も大概だ。

「まあいいや。じゃあ帰ろうぜ。バスの時間何時だー?」

 もはや馬鹿と言われることは諦めた。といわんばかりに話を切り上げ、バス停へ向けて歩き始めながら宮越さんは俺へと問いかける。

 俺は、黙って歩き出す。宮越さんの問いに答える事無く。

「・・・?なー東田。バスの時間・・・」

「宮越さん」

 返事が無かったことに不信感を持った宮越さんがもう一度俺へと問いかけるが、俺はその問いを遮るように彼女の名前を呼んだ。
 宮越さんは足を止め、俺へと振り返った。そして小首を傾げるその表情は、やはり彼女らしい無邪気な物に見えた。

「今日、楽しかったですね」

 自分でも呆れる程に真っ直ぐ、今日のデートの感想を告げる。すると宮越さんはぱちくりと目を数回瞬かせ、それからわずかに頬を朱に染めて、俺の目を真っ直ぐみつめていた視線を逸らす。

「・・・おお?ま、まあな。お前がそんな事言うとは思ってなかったけど」

 頬をポリポリと照れくさそうに掻く宮越さんは、普段ではなかなか見ることができない程、女性らしく映る。

「・・・なんというか。アレですね。確かに疲れましたけど」

「・・・疲れたけど?」

 俺は、笑った。
 宮越さんから見れば、どのような表情になっているのかは分からない。だけど、俺自身は出来る限り自然に笑っているつもりだ。それが酷く滑稽な笑みになっていないかどうかだけが気がかりだが、俺は、こう続けた。

「笑顔の宮越さんは、少し可愛いです」

 自分でも驚く程、真っ直ぐに言葉が出てくれた。
 俺の言葉を聞くと、宮越さんは数秒間唖然とした様子で立ち尽くしていたが、顔をみるみる赤く染めると、俺から視線を外し、

「ば、お前・・・何言ってんだよ・・・」

 宮越さんらしくない、弱々しい声でそう答えた。

「本当に、何言ってるんですかね」

 自嘲気味な笑みを浮かべながら、俺は、赤くなった顔を隠そうと俯いている宮越さんを歩いて追い抜いた。
 「あっ」という短い声の後に、宮越さんの足音が聞こえる。宮越さんを追い抜いたのには理由がある。

 顔を見られたくない。
 つまりは。
 俺も、少し顔が赤いからだ。

 できる限り意識しないようにしても、どうしても顔の熱は引かないし、歩みも自然と早くなってしまう。
 足音の間隔の狭さから、宮越さんも早歩きをしているようだが、それでも俺に追いつく気配は無い。

 すると。

「お、おい。歩くの早い。もう少しゆっくり・・・」

 その言葉を聞いた瞬間に足を止める。
 そして、宮越さんへと振り返る。俺のその動きに合わせるかのように、宮越さんも足を止め、俺の顔を不思議そうに見つめている。

「・・・何驚いてるんだよ」

 まだ赤味の抜けていない表情で、宮越さんは俺へと問いかける。
 俺は数秒間立ち尽くしていたが、小さく、小さく微笑んだ。

「・・・やっと、言ってくれましたね」

「はあ?」

 俺の言葉の意味を理解することが出来ず、宮越さんはそんな頓狂な声をあげる。
 いや。理解できなくて、構わない。それでいい。

「・・・なんか。今日の俺、凄い気持ち悪いですね」

「自覚あるのかよ。・・・本当、何なんだよ」

 俺の横へと歩み寄りながら、宮越さんはどこまでもばつが悪そうに頭を掻いている。
 何なんだよ、と言われても、答えようが無い。俺も分からない。俺自身の今日という日のおかしさについて、何一つ。

「・・・ていうか。せめて別れ際に言えよ、ああいう事は・・・」

「ああいう事?」

「だから!・・・なんでもねえよ」

 三度、俺から視線を逸らし、宮越は俯きがちに言った。
 その様子をおかしく思いながら、俺はまた歩き出す。今度は、宮越さんを置いて行かないよう、ゆっくりと。

「というか、不平等ですよね。俺はこんなに疲れてるのに、宮越さんは楽しんでばかりで」

「私も今すげえ疲れたよ・・・馬鹿」

 これが。恋人同士の会話。

「まあ、やられっぱなしは俺の性分じゃないですしね」

「だからといって、その性分をそのまま捻じ曲げるような事言うのはどうなんだよ」

 これが、デート。

「でも、少し効いたでしょ」

「黙れよ。馬鹿」

 ああ。

 なんだよ。俺。

「・・・まあ。本当、今日は楽しかったよ。・・・ありがとうな。東田」

 結講、ときめいちゃってるな。

「・・・こちらこそ」





 これが。俺と宮越さんの初デート。

 たった一つしか有り得無い「初デート」としては。上出来なのではなかろうか。


 今回のデートは。

 神聖な物では無かった。

 常に胸が高鳴るわけでも無かった。


 ただ。


 不思議と胸は、満たされた。

 認めよう。

 これは確かに『デート』だった。

 ・・・すっごく、疲れたけど。









 あとがき

 いかがだったでしょうか。奏莉亞さん。このような感じです。
 自分で自分に文句をつけるとすれば、ギャグからラストへの繋がりがあまりにもお粗末すぎたかな。と思いましたが、気持ち悪いくらいにデートを楽しんでしまった東田。というテーマを一応掲げ、それに沿って書いてみました。とはいえ、本来東田はもっともっと冷徹な人間だと思うのですが・・・まあ、それでもいいですけど、俺の書きたい物とは少し違ったので、このような平和的な終わり方に。

 デートなんか一度もしたことない非リア充街道爆進中の俺なので、デートの場所を考えるのにも少し苦労しました。遊園地は以前相馬×山田でやってるしなあ。と思ったので、個人的に大好きな水族館で。
 小説中に出てくる水族館にはっきりとしたモデルはありません。一応、俺が行ったことがある水族館のイメージを元に書いてみました。ペンギン水槽が入り口すぐにあるのは、宮城県の「マリンピア松島水族館」を少し参照に。ペンギン達が可愛らしく動きまわる水槽は本当に心癒されるものです。

 とまあ、小説に自分で何か言う・補足するとすればこのような感じでしょうか。

 奏莉亞さんの満足のいくような物に仕上がったかどうかは分かりませんが、自分で今書ける物を書いたつもりです。


 次のリクエストは、沙織さんリクエストの相馬×山田。これまた完成がいつになるかは断言できませんが、自分のペースで書き上げたいと思います。長い間待たせてしまって申し訳有りません。


 それでは、このへんで。奏莉亞さん、素敵なリクエストありがとうございました!!


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コメント

おはようございます! 奏莉亞です。小説読ませていただきました。
序盤~中盤は、無邪気で少女っぽい感じのみやこすさんと、冷静で割と淡々とした東田君の掛け合いが面白かったです! 個人的には鮭のあたりがなんか妙に切なくて好きです。 
あと一番最初の書きだしが好きです。銀河さんの小説って書きだしが巧いの多いんですよね。羨ましいですw
終盤はもう! 東田さんのデレが! デレが来たのが凄く良かったです!/// ベタ甘じゃないけど、いつもの雰囲気からちょっとだけ進むことができたような、東田×宮越っぽい空気を損なわずに少し恋人っぽくしたような…上手く説明できないけど、甘さ加減がちょうどよかったです。ほんのりした甘さといいますか。
今回は本当にありがとうございました! あと2つ、頑張ってください!
2011-11-13 Sun 10:23 | URL | 奏莉亞 [ 編集 ]

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