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銀の働き部屋

管理人銀河の、日記兼テキストサイトです。取り扱うジャンルは主にヤングガンガン連載のWORKING!!になると思います。最近は東方の霖之助小説を書くのにも夢中。どうかよろしくお願いします。リンクはフリーです。感想は常に受付中です!もらえたら泣いて喜びます

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She is believer. 相馬×山田




 すいませんでした!!!!!

 そして、

 リクエスト小説更新します!!!!!!



 えー。そういうわけで、沙織さんのリクエストしていた相馬×山田が完成したので更新させていただこうと思います。

 遅くても年末までには・・・とか言っていた癖に、年が明けてからの更新になってしまいました。申し訳ありませんでした。
 ・・・あ。みなさま、あけましておめでとうございます(オイ


 さあ。さっさと更新に参りましょう。

 沙織さんのリクエスト内容は、

『相馬さんが山田にSを発揮し(髪にちゅーするとか)恥ずかしくてテンパる山田とそれを盗み見てたワグナリアメンバー』

 との事でした。

 えー。最初に言っておくのですが、当初はこのリクエストのニュアンスに限りなく近い物を書こうとしたのですが、なかなか上手く書けず。最終的に、相馬さんがSというかドSになってしまったような気がします。
 一応リクエスト内容には合わせていますが、あまり甘さも無く、少しシリアス風味の強い物になってしまった事をお詫びします。


 それでは。タイトル「She is believer.」 タイトルに困った時は英語を使うとそれっぽい。という事に今日気づきました(

 続きからで、どうぞ。












「相馬さんは、山田への愛が足りません!!!」

 とある昼下がりのワグナリア。その休憩室にて。
 という、テンプレ極まりない一文から始まるこの物語の発端も、やはり、テンプレとも呼べる山田の叫びなのであった。

「意味がわかりません。やめてください死んでしまいます。目が

「な、なんで死ぬんですか!相馬さん!やめてください!冒頭で目を死なせるのはやめてください!!

 向かいに座り、必死に戯言を叫んでいる少女を尻目に、相馬はコーヒーを一口啜った。自身が面倒な状況に置かれている時に飲むコーヒーの、なんと苦い事であろうか。

「だーかーらー。相馬さんは、もっと山田に愛を与えるべきなんです」

「何が『だーかーらー』なのか分からないんだけど。山田さん。俺、休憩したいんだ」

「山田だって休憩中です!!」

「いや。違うじゃん。俺の休憩は本当の休憩じゃん。山田さんのは違うじゃん。違う休憩じゃん

「違う休憩ってなんですか!山田の休憩だって立派な休憩です!!」

 ああ。もう。鬱陶しい。と、相馬は思わずにはいられなかった。やけくそ気味に、苦いブラックのコーヒーを一気に飲み干す。下が痺れるような感覚すら、今は彼の気を紛らわせてくれる。
 まあ、鬱陶しい、は言い過ぎにしても、山田がこのようなテンションに陥る事は珍しい事では無い。むしろ日常に近いと言えるであろう。しかし、そのテンションに完全に慣れきったわけでも無く、休憩時間をずっとこのテンションに付き合わされる。と考えるだけで、山田葵という一人の少女の性格を知っている者ならば、間違いなく閉口するであろう。そもそも、働いている間も、基本このテンションに付き合わされっぱなしだというのに。

「だって、妹ですよ?可愛い可愛い妹ですよ?ときめくでしょう?」

「ときめかない」

「守ってあげたい、と思うでしょう?」

「思わない」

「ああ。俺が代わりに働いてあげるよ!!と、思うでしょう?」

「思わない」

「相馬さんはいったい私を何だと思っているんですか!!」

「山田さん」

 うん。もう、このような感じでずっとあしらい続けよう。と、相馬は二杯目のコーヒーを注ぎながら、乾いた笑みを浮かべるのであった。

「ほら。やっぱりです。相馬さんには愛が足りません。なので、これから、山田と相馬さんの愛を育むために、色々とやってみようじゃありませんか!」

「山田さん。ココア作ってあげたよ。はい」

「わーい。ありがとうございます」

 相馬がホットココアの注がれた紙コップを、滑らせるように向かい側のテーブルへと運ぶと、山田はぱあっと顔を明るくさせ、そのコップを手に取り、嬉々としてココアを飲み始めた。
 一口飲んだ所で、「甘くて美味しいです!」と、とびっきりの笑顔で山田は言ったので、相馬も、にこっと笑みを浮かべてそれに応えた。

 そして。

「って!山田をココア如きで懐柔しないでください!!」

 チッ。気づいたか。
 心の中で舌打ちをしながら、相馬は自分の作戦が敗れ去った事を純粋に悔しく感じた。もっと砂糖を多めに入れていればもしかして・・・

「砂糖なんかどうでもいいんです!だから、山田は・・・」

「お!山田さん!俺の心を少し読んだね!俺も人の心を読むのは得意だけど、山田さん凄いなあ!」

「・・・え。そうですかね?山田、凄いですか?」

「凄い凄い!凄い才能だよ!このまま行けば、俺と同じく、相手の心を読んでその人間関係を推測する、という能力を会得できるかもしれない!」

「ほ、本当ですか!?山田、超心読みたいです!読みまくりたいです!」

「いい心意気だよ山田さん!これからも精進するんだよ!」

「はい!山田、超頑張ります!」

 笑顔を浮かべながら、こくこくと何回も頷く山田に、相馬はやはり笑顔と、熱い握り拳で応えた。
 山田は「山田はやってやりますよ!!」と言いながら、相馬に注いでもらったココアをまた一口啜る。

 そして。

「いや!だから山田を懐柔しないでください!!」

今日の山田さんはしつこいね

 今度こそイケる。と確信を持っていただけにショックが大きく、相馬は隠しもせずに率直な意見を述べてしまった。

「・・・はあ。分かったよ。話を聞くよ。愛がどうこう、だっけ?」

 深い深い溜息を吐きながら相馬が言うと、山田は、先程以上に顔を明るくさせて、うんうん、と何回も頷いた。

「そうです!愛です!相馬さんと山田の間には、兄妹愛が足りないのです!」

「・・・まだ続くんだね。兄妹のノリ」

「当然です。山田はあんなのを兄とは認めません」

「うわあ・・・桐生君が可哀想・・・でも無いな。うん」

「というわけで。相馬さんは兄らしく、山田を可愛がってください!!」

 両手を相馬へと差し伸べながら、にっこりと微笑む山田。そしてそんな山田とは対照的に苦笑いを浮かべる相馬。
 山田の笑顔は酷く可愛らしい。と世辞抜きに思うのだが、突然そんな事を言われて瞬時に対応できる程、相馬の人生は豊かでは無い。

「・・・具体的に、何をすればいいのかな?」

 困り果ててそう尋ねると、山田自身何も考えていなかったらしく、目を少しだけ見開いてから腕を組み「うーん、うーん」と唸りだした。毎度の事ではあるが、頭の中で話を整理してから口に出す、という思考が彼女には欠如しているようである。

「・・・あ!じゃあ相馬さん!山田の髪をセットしてください!」

「・・・髪?どうしてまた・・・」

「お兄ちゃんは、妹の髪をセットしてあげるものなんです!さあ!早く!」

 テーブルに行儀良く座りなおし、山田は鼻歌を歌いながら目を閉じ、相馬が自分の髪を整えてくれるのを待ち始めた。
 相馬は、困ったように頭を数回掻いたが、断ろうにも断る理由も見つからない程の、兄妹のありかたとしてはまともな意見だけに、相馬も自らの席を立ち、山田の下へと歩み寄ることしかできなかった。

「・・・えっと。とはいっても、俺は佐藤君みたいに、髪型を変えたりとかは・・・」

「大丈夫です。山田の髪を梳いてくれるだけでかまいません!はい!櫛です!」

「じゅ、準備良すぎない・・・?」

 ワグナリアの制服のポケットから、小さめの櫛を素早く取り出し相馬へと差し出しながら、山田はきちんと両手を膝の上に置き、相馬の行動を待ち始める。
 櫛を手に取った相馬は、はあ、と深い溜息を一つついてから、おそるおそるといった様子で山田の髪に触れると、手でその髪をゆっくりと梳いてみた。

 軽く、柔らかく、美しい髪質であった。以前から、山田の髪に艶がある事は見た目で十分にわかっていたが、実際に触れてみると、しっかりと手入れの行き届いた物であることが実感できる。

「く、くすぐったいです相馬さん」

「あ。ご、ごめん」

 何回か、山田の髪を持ち上げては手のひらの上から流れ落ちるその髪を観察する。という行動を繰り返していると、身をよじらせながら、山田が照れくさそうに言ったのを聞いて、相馬は慌てて手を離した。
 それと同時に、相馬にも妙な気恥ずかしさがこみ上げてきたが、咳払いを一つしてその感情を押し殺し、あらためて、山田の髪を持ち上げ、櫛を入れてみた。
 櫛は、殆ど抵抗する事もなく、山田の髪の毛を通り抜けていく。これでは、髪を梳く意味も無いのではないか?という程に、櫛の動きはなめらかだ。
 とはいえ、目に見えない絡まりなどもあるかもしれない。と。相馬はゆっくりと山田の髪を梳いていく。

「あ。えっと。痛くないかな?」

「全然平気です!むしろ気持ちいいです!」

 背後に立つ相馬を見上げるように、首を後ろへ傾けながら、山田はにこっと笑ってみせた。
 間近でその笑顔を見てしまったがために、相馬の顔に少し熱が集まったが、なんとかその恥ずかしさを乗り切り、相馬は黙々と、山田の髪を梳き続ける。

「楽しいですか?相馬さん!」

 しかし、山田がそんな静かな空間を良しとするはずも無く、ご機嫌な様子で口を開く。

「え?う、うーん。まあ、楽しいといえば楽しい、かな?」

 正直な意見を言うと、確かに山田の髪はさわり心地がよくはあるのだが、楽しい、と聞かれると微妙な所であった。まあ、山田にとっては兄妹のふれあいであっても、相馬にとっては、山田への一方的な奉仕でしか無いのだから、それも当然と言えば当然だ。
 とはいえ、決して不愉快なわけでは無いのだから、このような質問に対し、相馬はこんな無難な回答しかすることができなかった。
 しかし、山田はその言葉だけで十分満足なようで、嬉しそうに頷くと、椅子からぶら下げた足を忙しなく動かすのであった。

「・・・綺麗な髪だね」

 山田の笑顔に毒されでもしたのか。呟くように言うと、山田は「ふふーん」と、さも誇らしげに鼻を鳴らした。

「そうでしょう。山田、ここで暮らすようになってからも髪の手入れは欠かしていません!」

「その努力に見合った髪だと思うよ」

 相馬にしては珍しい、何の裏表も無い率直な言葉であった。時々相馬自身も戸惑う事なのだが、山田と接する時の相馬は、このように思った事をそのまま口に出してしまう事がある。自分の思考をそのまま相手に伝えるという行為がどれほど迂闊なものであるかを熟知している相馬にとって、これは悪癖としか言いようが無い。
 言いようが無いのだが。

「えへへー。ありがとうございます」

 やはり、山田の笑顔にはそんな無粋な考えもどこかへ吹き飛んでしまうのだった。

「・・・髪は女の命、っていうもんね」

 自分自身に若干呆れ返りながら、相馬は再び口を開く。髪を梳き続ける彼の手つきは、慣れてきたのかとてもなめらかな物へと変わっていた。

「山田のチャームポイントですから!相馬さんは山田の髪にそんなに触れられる事を光栄に思うべきです!」

「自分でそこまで言えるのは凄いね・・・」

「こんな事をできるのは、兄である相馬さんだけです!山田の兄であることに感謝してくださいね相馬さん!」

「・・・」

 自分の思惑通りに物事が運んでいるから気分が良くなったのか、山田の口ぶりは、かなり調子づいた物へと変化していた。
 とはいえ、山田葵という人間は元からこのような性格であるため、今更気にするような事でも無い。
 ・・・無いのだが。

 休憩時間中にしつこくつきまとわれ。
 自分から折れはしたものの、やらされている事は一方的な奉仕。
 そして、この物言い。

 相馬も、それら全てを許容できる程、心が広くは無かった。

 だから。相馬は決めた。

 多少の苛立ちもあった。多少の興味もあった。
 そして、前々から伝えたい事があった。

 良い、機会だ。

「そうだね。本当に綺麗な髪だと思うよ。・・・でも、そんな『命』とも呼べる髪を、俺なんかに弄らせて本当にいいの?」

 普段となんら変わらない、穏やかな声で、相馬は淡々と山田へ話しかける。髪を梳く手は、未だ止まる事は無い。

「? 当たり前じゃないですか。相馬さんは山田の・・・いたっ」

「あ。ごめんごめん」

 髪の毛に櫛が絡まってしまい、短く悲鳴をあげる山田に、相馬は軽く謝罪する。軽く。半ば笑っているかのように。

「・・・でもさ。山田さん。何回も言うように、俺は君の兄なんかじゃないよ?」

「大丈夫です!だって相馬さんは・・・」

「兄じゃない」

 髪の痛みなど大して気にすることも無く、笑顔で相馬を見上げようとした山田に、相馬は無表情で、冷たく言い放つ。
 すると、その迫力に押されたのか、山田の目に、僅かに、相馬への「恐れ」のような物が感じられて、相馬は心の中でほくそ笑んだ。

「・・・山田さんは、ずいぶん俺の事を信頼してくれているみたいだけどさ。・・・俺は、山田さんが思っている程、善人じゃないんだよ?」

「え・・・あの・・・」

「俺は大人の男で。山田さんは子どもで女。・・・山田さんをどうこうしようと思えば、俺はそれを簡単にできちゃうんだよ?

「あ、あの。相馬さん。こ、怖い・・・」

「そうだよ。男はね。怖いんだ」

 涙で潤む山田の目が、相馬にはひどく可愛らしく見えた。
 目から零れそうな涙を指先ですくうと、相馬は笑みを浮かべた。普段と「全く変わらない」、「裏のある笑み」を。

「いい。これは俺だけじゃなく、この世の中全てに言えることだから、ちゃんと聞くんだよ?」

 首を大きく反らし俺を見上げる山田さんの頭を、相馬はそっと・・・しかし、強く抑え、自分から目を逸らさせないようにする。
 恐怖に震える瞳が新鮮で、相馬はまた笑みを浮かべた。

「いい?世界は、君の事なんかどうでもいいと思っている。君を簡単に見捨てる。正は簡単に負になる。日常は簡単に破滅する。正義は悪に成り変わる。・・・信じる心は、裏切られる」

 休憩室の照明によって、逆光となる形で山田の目の前に迫る相馬の表情。それはどこまでも無表情で。その瞳は、完全なる闇のように、深く、恐ろしく山田の目に映った。

「・・・そうだね。実例を見せようか」

 青ざめた山田の顔へ、相馬は自身の顔を近づける。山田はそれを拒否しようとしたが、相馬が彼女の横へ添えた手の力は、彼女の想像より遙かに強かった。
 自分が信頼していた人間の、知らなかった・・・そして知りたくなかった姿に、山田の顔面が恐怖にひきつる。

 相馬の顔が眼前に迫った。という所で、山田は目を閉じる。強く。

 その際に彼女の瞳からこぼれ落ちた涙が、彼女の頬を伝う。



 と。自身の髪に触れる感触に気づき、山田は目を開いた。
 目前に、にこっと笑みを浮かべる相馬の姿があった。すると相馬は、指でつまんだ山田の髪を、目の前へと運び始める。

 そして。その山田の髪に、相馬が一つ、小さな口づけを落とした。

「・・・女の命を穢された気分はいかがですか?お嬢様」

 気づけば、山田の顔を押さえつけていた相馬の手の力はすっかり緩んでいて、その圧迫感に彼女が苦しむ事はもう無いのであったが、すぐに現状を理解する事ができず、山田はそのまま固まってしまっていた。

 が。数秒経ってようやく現状が理解できたのか。一瞬で顔を耳まで真っ赤に染め上げると、ぷるぷると震えだした。

「そ・・・相馬さん!!」

「なーに?」

「な、なんなんですか!急になんなんですか!山田・・・山田もう・・・山田です!!」

「落ち着いて。俺が君をそんな風にさせてしまったのはわかるけどとりあえず落ち着いて山田さん。知ってるよ。山田さんが山田さんなんだって事は、下手をすれば山田さんより俺の方が知っているかもしれないよ」

 動揺のあまり椅子から大きな音をたてつつ立ち上がり、相馬に指をさしながら、山田はわなわなと震えた声で話す。
 殆ど何を言っているのか分からない。という程に動揺した山田を、相馬が静かに制す。

「きゅ、急に何を・・・!」

「ん?いやさ。山田さんはずいぶん俺の事を信頼してくれているみたいだから、ちょっとからかってみようかな。と思って」

「なっ・・・!!」

 にっこり。と笑ってみせると、山田の顔の熱が更に高まった。

「さ。座ってよ山田さん。続きをするから」

 やはり笑顔を崩す事なく、相馬は穏やかに語りかけるが、山田はふるふると首を横に振り、

「や、山田仕事に戻ります!! あ、ありがとうございました!」

 叫ぶようにそう言い残すと、足取りもおぼつかない様子で休憩室を飛び出して行ってしまった。

 その姿を見送ると、相馬は今日一番の深い溜息を吐き、力無く、山田が座っていた椅子へと座り込む。

「・・・何をやっているんだ。俺は」

 山田の前では必死に隠し通した、熱く火照る頬を抑え、相馬は押し殺すように呟く。頬に当てた手がみるみる熱さに染まるのを感じ、また溜息を吐く。その溜息もずいぶん熱い物であった。

 馬鹿な事をした。と、山田の髪に口付けをした瞬間思った。
 何故、あんな事をしてしまったのか。
 あまりにも深すぎる山田の信頼に腹でも立てたのか。
 はたまた、自身の欲求の表れだったのか。

「・・・馬鹿みたいだ。俺」

 吐き捨てるように呟き、相馬は力無く天井を仰ぎ見る。
 見慣れたようでありながら、真剣に見た事も無かったその天井を見つめながら、思案に暮れる。

 俺は、こんなに浮つく資格は無い。
 そんな事は、分かっているのに。

「・・・山田、葵」

 なんとなく、彼女を呼んでみる。
 普段であれば、彼女は天井裏から颯爽と現れたのかもしれないが、今日という日はそういうわけにもいかない。その小さな声は、休憩室の壁に吸い込まれるように消えていった。

 しかし、今日自分がした事が、全てが意味の無い物であった。とは、相馬は欠片も考えてはいなかった。

 良くも悪くも。山田葵という女性は、どこまでも素直な人間だ。
 素直で。純粋で。信じた物を疑う事をしようとしない。そして、その対象にはどこまでも依存する。
 それが悪い事とは言わない。桁違いの無邪気さ、純粋さは、話す人の価値観を全て壊してしまうほどに、時として力を発揮する物だ。相馬博臣という人間が毒されてしまったように。

 しかし、その純粋さが、もしかすると彼女を殺す事になるかもしれない。殺す、という意味は、精神的な意味でも。肉体的な意味でも。もしくはその両方の可能性も秘めている。

 人を信じ。人に依存し。そう生き続けてきた彼女が、その人間に突然裏切られたりしたらどうなるだろうか。
 ほんの些細なきっかけで家出をしてしまう程。彼女は繊細で。そのくせ行動的だ。彼女が家出をしてから最初に知り合ったのが音尾であったからこそ、彼女はここにいる。「山田葵」は、ここにいる。
 が、その対象が悪人であったら?身寄りの無い少女に劣情を催す卑劣漢であったら?
 少しやさしい言葉をかけるだけで、山田はその人を頼りにしたであろう。何の疑いも無く、あとをついていったであろう。

 もし、そうなったとして。その後の事を想像するだけで、相馬は、胸の内から溢れ出す吐き気を止める事ができなくなるのであった。

 だから。相馬は今日警告した。
 身近な人が裏切る恐怖。いや。身近で無くとも、人が突然自分に対して牙を剥く。その恐怖。それを知ってもらいたかった。

 その結果、自身がこれほど「山田に嫌われる恐怖」に怯える事になるとは。相馬は、その時は欠片も考えていなかった。

「・・・水でも、飲むか」

 いつまでもここで考え込んでいても、何か救いの手が差し伸べられるわけでも無い。
 椅子から大儀そうに立ち上がり、休憩室からキッチンへと繋がる入り口へ向かう。

 そこで、気づく。

 人の、気配。

「・・・佐藤・・・君?」

「・・・おう」

 相馬の顔は、面白い程に青ざめていた。
 休憩室と廊下を隔てる壁。そこから、佐藤の手だけが姿を現し、相馬に小さくその手を振った。

「・・・い、いつから・・・?」

「・・・『そうだね。実例を見せようか』って辺りから」

 重々しく答える佐藤の言葉を聞き、相馬は危うく気を失いかける。
 不覚だった。山田に対して意識を集中させすぎたがために、佐藤の接近に全く気づくことができなかった。相馬らしからぬ失態だった。

「・・・あ、あの。さ。佐藤君」

「・・・別に言い触らすつもりは無い。あんな深い溜息しておいて、山田をまだどうこうする気なんだろう。なんて事は思わねえし」

「・・・お願いするよ。本当に」

 肝心な部分全てを見られていた。という事実に、相馬は今すぐにでも逃げ出し消えてしまいたい心境であったが、佐藤という人間が意外にも義理堅く口が堅い人間であることを、相馬はよく知っていた。

「・・・あのさ。お前としては、山田に説教をしたかったんだろうけど。たぶん、意味無いと思うぞ」

「・・・何でさ」

 未だ相馬に直接顔を向けることはなく、突然そのような事を言う佐藤に、訝しげに相馬も返す。

「・・・だってさ。あいつ、顔真っ赤だっただろ」

「・・・知ってるよ」

「だからだよ」

「はあ?」

 全く要領を得ない佐藤の言葉に、相馬は半ば苛立ちながら声を出す。
 佐藤は一拍置き、答える。

「年上の男に迫られたら、大抵の女は顔も青ざめて逃げ出すだろ。・・・でも、山田は違った。耳まで顔を真っ赤にして。どう見ても『相馬さんから一刻も早く離れたい』っていうより『少しどこかで落ち着きたい』って様子だったぜ」

「・・・」

「・・・残念だったな。お前の迫真の演技も、山田の芯には通じなかったみたいだぜ。・・・怖かったには怖かったろうけど、な」

「・・・・・・」

「・・・じゃ。俺、戻るわ。倉庫に備品取りに来ただけだし」

 廊下側の壁から背を離し、佐藤はキッチンへと戻っていった。

 水を飲むために立ち上がった相馬であったが。再び椅子に力無く腰を下ろした。

 はあ。と溜息を一つ。そして、両手で顔面を強く押える。強く。痛い程、強く。

 だから。いけないって。
 簡単に男を信じちゃ、ダメなんだって。

 俺は男。そして君は女。

 やろうと思えば、俺は何でもできる。
 君を傷つける事も。君を壊す事も。君を犯す事も。

 だから、信じちゃダメなんだ。

 ・・・でも。
 嗚呼。でも。俺には。

「・・・君を裏切る、勇気が無い」

 脳裏に、首を後ろに大きく傾け、自分に微笑む山田の笑顔が蘇った。

 無邪気で。純粋で。可愛らしい笑顔。

 けれど。清廉で。力強い意志に満ちた笑み。

 遠くて。

 眩しくて。

 ずっと、ずっと見守っていたい。そんな笑み。

「・・・謝ろう」

 怖がらせてしまった事を。
 その反応を見て、少しでも「面白い」と思ってしまった事を。

 謝る必要など無いのかもしれない。

 けれど、あの笑顔を消してしまうような事をしてしまった自分を、相馬は許す事ができなかった。

「・・・俺は、君の兄にはなれない」

 椅子からゆっくりと立ち上がり、呟く。小さくか細い声で。

「でも。君の笑顔を、できればずっと見ていたい」

 そろそろ休憩時間も終わる。相馬は、キッチンへ向けて歩き出す。
 心は晴れやかだ。信じられない程に。
 今なら、素直な自分を出せる気がする。
 素直な自分の出し方。それは、山田さんがずっと教えてくれた。

 俺の大好きな、その笑顔と共に。


「その思いは。その願いは・・・」


 きっと。誰にも負けないから。









 あとがき

 はい。こんな感じになりました。沙織さん、いかがでしたでしょうか。
 正直な話。俺個人としては、今回のリクエスト出来は非常に不服な物になってしまいました。
 俺が沙織さんのリクエストを読み取る限り、沙織さんは、もっと仲の良い二人を想像してリクエストをしてくれたと思うのですが、そのままで書こうとするとどうしても上手く書くことができず、このようにシリアス調な作品になってしまいました。
 俺の力不足でこのような物になってしまった事は非常に腹ただしいのですが、ある程度形にできた。という認識は自分の中にはあるつもりです。

 さて。作品自体のあとがきとしては。相馬は普段山田と接している時、普段のいつでも物事の裏を考えたりする「彼」は殆ど消えて、一人の青年に変化する。と俺は考えています。
 しかし、最近の展開で、山田兄妹が出会ってしまったりした事も影響して、少し相馬の心境に変化が生じたりしているのでは無いだろうか。と思いながら書いてみました。
 山田は本当に良い娘だと思いますが、あの通り人に依存する性格。それを相馬自身はどう受け止めているのか。という事も思いつつ、少し山田を責め立てるような。そんな感じに仕上げてみたつもりです。
 結果、人を簡単に信じるけど、簡単にその信頼を裏切ることはしない山田には、そんな説教も通じなかった。という感じです。

 色々と悩みながら(まあ途中でゲームはガッツリ遊んでましたが)書き上げた結果、言っていた期日よりは完成が遅れてしまいました。その上、リクエストに忠実に書けたか。というのも微妙な物。
 ですが、一応、現在の俺が書ける限界の物を書いたつもりです。
 沙織さん。素晴らしいリクエストありがとうございました。そしてもう一度、完成が遅れてしまって申し訳ありませんでした。


 次は、ショコラさんの佐藤×松本ですね。こちらもすぐに書き終える、とは断言できませんが、できる限り早く書けるよう善処したいと考えています。

  それでは。

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