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銀の働き部屋

管理人銀河の、日記兼テキストサイトです。取り扱うジャンルは主にヤングガンガン連載のWORKING!!になると思います。最近は東方の霖之助小説を書くのにも夢中。どうかよろしくお願いします。リンクはフリーです。感想は常に受付中です!もらえたら泣いて喜びます

I don’t understand it. 佐藤×八千代



 さあ、書いていた小説が出来上がったので載せたいと思います。
 タイトルは『I do not understand it.』本当はdo notはドントと読む形にしたかったのですが、アポストロフィーの出し方が分からなかった。意味は「私にはわからない」ですね。翻訳ソフトで訳したので間違っていたとしても責任はとりません。
 組み合わせは、佐藤×八千代。甘さ控えめ。昨年の秋に書き始めたのを今完成させたので、寒さなど少し無理矢理にしているところなどもあります。軽く読み飛ばしてやってください。

 では、続きからでどうぞ。















 北海道はまだまだ寒い。
 朝のニュースで、美人女子アナウンサーが全力の営業スマイルで毎日言っていそうな言葉だが、何も間違っていないので文句の付けようが無い。
 空はこんなにも青く、太陽はさんさんと輝いているのにも関わらずだ。小鳥遊が大好きな虫はまだまだ地面の下でお昼寝中だし、街を歩いてみればみんなコートを羽織り俯きがちな顔で辛気臭そうに歩いている。
 まあ、その辛気臭さも・・・俺ほどでは無いだろうが。


 煙草の煙をたっぷりと吸い込み、吐息の蒸気混じりにゆっくりと吐き出した。
 青い空の中に灰色の煙が溶け込んでいく。だんだんと冷たくなっていく風が、一気にその煙を吹き飛ばす。
 風を受けるのは煙草の煙だけでは無い。煙草を吸っている俺自身にも冷たい風は吹き付けてくる。

「・・・寒っ」

 こうなると、レストラン内の禁煙というのはほとほとうっとうしいなと改めて考える。
 もちろん、ここでのバイトも長い。いつでも煙草を吸うことができないなんて末期な悩みは持ち合わせてはいない。
 ただ・・・この季節は喫煙者にとっては過ごしにくい。俺は少なくともそう思う。

「・・・とっとと戻るか」

 煙草を始末して、俺は、ここよりはマシな環境であろうレストランの中に戻っていった。

 風を恨む。
 この風さえなければ、俺はもう少しここで煙草をふかしていただろう。
 あの景色を見ることもなかったのだろう。

 とりあえず一言。

 ・・・・バーカ。




「相馬―。仕事変わる・・・」

 そう言いながらキッチンに入ると八千代と相馬の姿が重なっていた。
 どういうことかというと、まず、相馬はこちら側に背中を向け、八千代の体をほぼ全部隠すように立っている。
 八千代の姿は殆ど見えなかったが、相馬の腰辺りに見える刀は八千代の物と考えて間違いないだろう。
 問題を挙げるならば・・・そうだな、体が重なっているだけではなく、多少の身長差がある二人の顔も重なって見えるということだろうか。
 つまりは・・・まるで・・・

「・・・ん? あ、さっ、佐藤君!?」

 相馬が俺に気付いたらしく、慌てて八千代の傍から離れる。その顔には相当の焦りが含まれているように見えた。
 八千代の方はと言うと・・・何やら涙目で目を擦っている。俺には気付いているようだが、相馬のように焦ったりはまるでしていない。

「ち、違うんだよ佐藤君!? これはね!?」

「ああ。八千代の目にゴミが入ってそれをお前が取っているところに運悪く俺が入ってきてまるでキスのように見えてしまったということだろ?」

「・・・え、あ・・・ああ! は、はいそうです!! いい意味で予想外だった!!」

 相馬が何やらガッツポーズを取っているが俺は気にもせず、八千代の前へ歩いていく。
 そしてまだ目を擦っている八千代の手を止めた。

「まだ取れてないのか?」

「ええ・・・そうみたい」

 俺は少ししゃがみ、八千代の目を覗き込みんだ。そして、擦りすぎて赤く充血してしまっている目の端によっていた埃を取り除いた。

「どうだ?」

 八千代の目から、人間の本能としての涙が何粒か零れ落ちたが、ちゃんと取れたようで涙は止まり、いつも通りの笑顔が浮かんだ。

「うん、大丈夫。ありがとう佐藤君」

「どういたしまして」

 俺は素っ気なくそう言うと、仕事をしようと流し台へ向かった。

「ちぇ、焦りはしたけど・・・佐藤君が誤解して修羅場になったらそれはそれで面白かっ・・・ぐぼっ!」

 流れるように相馬の鳩尾にボディーブローを叩き込み、俺は食器の点検を始める。なんか唸り声が聞こえるが、なに、気にすることはない。
 
「馬鹿かテメーは。そんなのに今時ショックを受けるのは、りぼんとかちゃおとかの少女漫画の中くらいだ」

「いや、そうは言っても・・・佐藤君の恋愛に関しての知識行動などは少女漫画にすら匹敵しない・・・エース辺りのラブコメの主役男子高校生並の純粋さだかっ!?

 腹をおさえて下がった状態の頭にエヴァ弐号機対軍用ヘリに匹敵するレベルの踵落としを決め、俺は包丁の点検に映る。当たり前のことだが、今やれる仕事といえば道具の手入れと種島いぢめぐらいしか無い。

「二人とも、何の話?」

 しばらく俺と相馬の会話を傍観していただけの八千代が、首を傾げながら俺に尋ねてきた。
 俺は近くで倒れこむ相馬なんか気にも止めず・・・というか、相馬って何? とも言わんとばかりの無表情で、

「お前には到底関係の無い話だ」

 と素っ気なく返しておいた。
 八千代は、「そう?」と不思議そうに言うと、店長のパフェを作らなきゃ、とフロアへと行ってしまった。

「ふ・・・ふふ・・・流石だね佐藤君。全く動じないのは長いバイトで鍛えられたからかな・・・!? 正直な話・・・轟さんの普段まじまじと見ることの無い瞳は綺麗だったかい・・・!?」

「何でお前は中盤のボスキャラみたいな台詞を俺に吐いてるんだ? そしてそれは何のキャラだ」

「とりあえず改めて弁解させてもらうけど、俺は何もやましいことはしていないからね?」

「分かってたよ。八千代の顔見たら一発でな。俺は偶然じゃなくてお前の下らない策略じゃないかとも感じたほどだ」

 全く驚かなかったわけでも無いのだが、相馬にからかわれるのも腹が立つので、とりあえずそういうことにしておく。

「はっはっは! まさか! やるならばもっと徹底的にやるよ!」

「明るく言うなお前。ぶっ殺すぞ。具体的に言うとどんな感じだ?」

「そうだなあ・・・え、今なんか凄い物騒な言葉があった気が? ま、まあいいや。例えば、轟さんを何かしらで転ばして、その上に小鳥遊君辺りを更に転ばせて? 佐藤君&伊波さんWショック! みたいな!」

「ほうほう面白い企画だ。転ばして怪我でもさせてみろ。その瞬間お前を怪我とか認識できないレベルまで切り刻むぞ」

「またまた物騒な・・・ちょ、佐藤君。急に尋常じゃない勢いでひき肉斬り始めないでよ。恐っ!!」

 とりあえず俺は、まな板の周りにちらばる勢いでひき肉を刻んでいた手を止め、仕事も無いので食器棚へと背中を預けた。

 しばらく、無言の空間が続く。俺はただひたすらぼーっと思考をどこかへと置き去り、相馬は何を言おうかと指を顎に当てて考え込んでいるようだ。

 相当くだらないことでも考え付いたのか、相馬は拳と手の平を縦に合わせて軽快な音を鳴らすと、俺に実に愉快そうな顔で尋ねてきた。

「佐藤君は全然動じなかったけど、轟さんの場合はどうかな?」

 くだらないことを言った瞬間今度はエヴァ弐号機も絶賛するほどの対軍用ヘリ用の回し蹴りでも叩き込んでやろうと思ったのだが、俺はしばらく考えてしまった。
 ・・・八千代の場合?
 正直、よく意味が分からなかった。俺は普段以上に眉をひそめながら考えたが、一向に答えが見つからず、

「相馬? どういう意味だ・・・」

「ようし。そういうわけで、山田さんを呼んでくるね!」

「待て、その人選から察するにいいイメージが一個も湧かないんだが・・・待てコラ!!」




 数分後。

「山田来ましたあ!!」

(来たよ・・・語尾に母音つけるほどテンション上がった状態で来た・・・!!

 顔を両手で覆いながら俺は相馬を本気で仕留めなかったことを後悔した。
 手を下ろし山田の表情を確認してみると、鬱陶しいレベルまで目を輝かせ、何に対する主張なのか仕切りに手を上げて鼻を荒々しく鳴らしている。相馬はこいつに何か打ったのか?

「で、相馬・・・何をするって・・・!?」

 変な発言をした瞬間に首を絞められる体勢をとりながら俺は相馬に尋ねた。
 相馬は俺の話をまるで聞いていないのか、

「じゃあ、山田さんお願いね。俺は呼んでくるから」

「了解です!!」

「お願いって何をだ、待て相馬!」

 相馬の肩を掴もうとした瞬間、足を山田に押さえつけられ、俺はその場でよろける。
 ・・・あー。駄目だ。流石に我慢の限界だ。
 俺は視線を下に向け、俺の足を掴んでやがる山田の襟を掴み、そのまま目線の高さまで持ち上げた。山田の小さな体は想像以上に軽く、悠々と体全体を持ち上げることができた。
 それなりに首が絞まって苦しいと思うのだが、山田は何故か未だに嬉々とした表情を崩さない。悪戯が成功する直前の悪餓鬼そのものだ。しかし、やられるだけの大人では俺はない。

「お前いい加減にしろよ・・・。相馬に何を言われた?」

 恐らく俺の顔には青スジが浮かんでいるであろう。こんなガキに大人気ないと思うかもしれないが、散々、俺の知らないところで気味の悪い計画を立てられまくっているのだ。誰だって気分はよくないだろう。あまつさえ、それが思いも打ち明けられない好きな女絡みなんだ。こいつらのくだらない悪知恵で話が変に転がったらたまったものではない。

「山田さん今だ!」

 相馬の声が背後から聞こえ、そっちを振り返ろうとする。
 しかし、いきなり山田が俺の顔を掴み、無理矢理前を向かせた。
 山田が山田自身の口に手をやり、なにかをしたのは確認できた。
 その刹那。

 山田の口と俺の口が、重なった。

 は?

 一瞬の突然すぎる出来事に真っ白になる俺の頭。
 しかし、直後に俺の耳に入ってきた声は恐ろしいほどの頭の隅々まで響き渡った。

「急にどうしたの相馬君? ・・・きゃっ!?」

 その声を聞いた瞬間、俺は顔面蒼白となり、山田の襟を掴んでいた手を離した。
 すると山田は綺麗に着地する。俺ははっきりとしない意識のなか、山田の顔を確かに見た。

(ガム・・・テープ・・・!?)

 山田の口に貼られていた物。それは紙製の茶色いガムテープ。山田が俺にキスの真似事をする直前に付けたものだということはすぐに分かった。
 しかし、安心している場合ではない。俺は数分前の相馬と全く同じように慌てて振り向き、八千代の表情を確認した。
 その顔には、目の前にあった突然の出来事に対する驚きの表情と、その出来事に対する恥ずかしさからの紅潮があった。

「ち、ちがっ・・・! 八千代! 落ち着いて・・・」

「わー。大変だー。佐藤君が山田さんにキスしてるー」

 相馬てめえええええええええええええ!!!
 俺はこの数分後にはあのにやけ顔をどう叩きのめしてやろうかという明確なイメージを描き始めたが、とりあえず今はそんな場合では無い!!

「ほ、本当っ!? 佐藤君!?」

 八千代の驚きようが更に増し、顔もますます赤くなる。
 俺は何か言おうと口を開く。が、

「佐藤さん・・・酷いです、いきなり乙女の純情を奪うなんて・・・!!」

 テメエはいつの間にガムテを剥がしたんだ!? というツッコミをする前に、俺の顔はますます青く白く変化していく。
 しまった。完全にこの馬鹿二人のペースにはめられた。今からの中途半端な弁解で八千代を納得させるのはかなり難しい。口だけは達者なこの二人に手を組まれては、天然馬鹿である八千代を説得する術が俺には思い浮かばない。
 この場に小鳥遊か種島がいれば状況は変われたかもしれないのに・・・ああ使えない!!

「さ、佐藤君・・・」

 戸惑った様子の、八千代の声が耳に入った。
 俺は唾を飲み込み、喉を鳴らした。
 この物事を疑う事を知らない天然が次に何を言うかは誰にも分からない。頼む。出来れば何も言わないでくれ、そうすれば、その間に俺が何か弁解を思いつくかもしれない。
 何も言うな! 言うな!!


 次の瞬間に八千代が起こした行動は、結果的には、俺の願いが通じた物だったのかもしれない。
 しかし、それはその場にいた誰もが想像もできず、驚愕の表情を浮かべる結果になった。


 八千代は、俺の左頬に平手を思い切り叩き付けた。

 軽いながらも、鋭く、短い衝撃が俺の左頬から体全体へと伝わっていく。よろけるほどの強い衝撃では決して無かった。が、俺は叩かれた衝撃で右を向いたまま、全く動けなくなってしまった。
 何が起こったのか、しばらくの間はずっと頭の中で考えていた。
 結果、八千代が何らかの原因で怒り、俺を叩いたという、至極当たり前な事だけは認識できた。
 俺は八千代の表情を見ようと顔を戻す。しかし、表情を確認する前に、八千代は休憩室などに続く店の奥へと走り去ってしまった。

 キッチンを、緊張感を孕んだ無言の空気がしばらくの間漂い続ける。

 最初に口を開いたのは、相馬だった。

「あ、あの・・・佐藤君? なんていうか・・・その、冗談のつもり・・・だったんだけど」

 本気で低姿勢の、珍しく全力で戸惑った相馬の表情を確認することもなく、俺はただ呆然と立ち尽くしていた。
 次に、山田も口を開いた。

「す、すいません・・・。私も、その、二人の関係というか、その・・・えっと・・・」

 口が達者なのが自慢の山田が言葉に迷っている様子も確認せず、俺はただ無気力にそこに立ち尽くしていた。

 再び、無言がキッチンを支配する。

 俺は、八千代の元へと向かう事にした。
 石でもくくりつけているかのような、重い足取りで店の奥へと歩き始める。

「あ、わ、私も行き・・・」

「いい。お前らはここにいろ」

 怒りも、呆れも無い。強いて言うなれば、普段通りの声でそう背後に伝えると、それからは何も聞こえなくなった。
 誰も何も言わないのを確認して、奥へと向かった。
 休憩室のドアが開閉する音はしなかった。つまりは・・・更に奥。

 俺が十数分前には煙草をふかしていた、従業員入口。
 真っ直ぐ、歩みを進める。
 冷たい風がだんだんと体に当っていくにつれて、頬の痛みがじんじんと脳の奥まで伝わってきた。



 従業員入口。
 その扉を出た、すぐ左に八千代はいた。
 壁に背中を預け、下を俯いている。俺が来たことには気付いているはずだが、何も言わない。

 しかし、俺は何も言わないというわけにはいかない。
 八千代と同じように、俺も背中を壁に預ける。そして、口を開いた。

「何で、叩いたんだ?」

 左の頬を指で擦りながら聞くと、八千代が僅かに肩を震わせたのが分かった。
 その後、しばらく沈黙の時間が流れる。が、俺は早く答えろ、と決して急かしたりはしない。八千代には八千代のペースがある。そのペースでゆっくりと答えればいい。
 まだ沈黙は続く。寒気が無防備な首を冷やし、俺の体に鳥肌が立ち始めたその時、

「・・・やりは駄目」

 その寒気の風に消え入るようなか細い声で、八千代が喋った。

「・・・悪い。聞こえなかった、もう一度・・・頼む」

 無機質な声でそう言うと、八千代は顔を上げて、俺の顔を見た。
 俺は目を若干見開いた。紅潮したその顔には、僅かな怒りを感じ、何よりその目には・・・涙が浮かんでいる。

「無理矢理はダメ!!」

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「・・・・・・・・は?」

 しかし、八千代の口から勢いよく飛び出たその言葉は、俺の口から気の抜けた疑問詞を零れ落ちさせただけだった。
 何の話だ? と追求する前に、八千代が次々と勢いよく言葉を放っていく。

「い、いくら佐藤君と葵ちゃんが・・・その、そういう関係になるところだったからって、いきなり自分よりずっと年下の子の唇を奪うなんて、最低よ!!」

 最後に到っては、俺の顔を突き刺そうとせんばかりの勢いで指を突きつけてきた。
 俺は言葉が見つからず、ただただポカンとした表情で八千代の顔を見ていた。
 どこまでも必死そうなその表情を改めて見て、俺は深い溜息を一つ漏らした。

「・・・あのな、八千代? あれは、相馬と山田の悪戯だ」

 ゆっくりと、はっきりとした声で八千代にそう告げる。
 すると八千代は、「へ?」と、真剣な表情をいつもの間抜けな表情へと変えた。

「キッチンに入った瞬間、俺と山田がキスしてたらお前がどういう反応をするのかっていう、言わばドッキリだ」

 更にそう付け足すと、八千代は唖然としていたその表情を、先ほど以上に真赤に染め上げた。その顔は蒸気が出るといわんばかりなほどであった。

「え、そ・・・そうだったの!? 嫌だ・・・私ったら、恥ずかしい・・・!」

 頬を手で抑えながら、八千代はその場でくねくねと体を動かし始めた。
 とりあえず俺は、誤解が解けたことに、安堵の息を漏らす。

「それなのに、佐藤君を叩いちゃった・・・! 大丈夫!? 佐藤君! 腫れてない!?」

 八千代は心底心配そうな顔を浮かべながら、俺の左頬に自分の右手を当て、一生懸命擦り始めた。
 かなり強い力で擦られているので、正直少しだけ痛んだが、

「大丈夫だ。全然痛くねえよ、あんなの」

 と強がって言った。

「・・・そう? ・・・良かった」

 そう言って、八千代は俺の顔から手を離し、ゆっくりと降ろした。
 そして、先ほどまでと同じように壁によりかかり、そのまま何も言わなくなった。
 俺は、誤解が解けた・・・と一安心して、もう少ししたら戻らなきゃな・・・とも考えていた。
 もう一度、八千代の顔を見る。
 すると、八千代は何かを考えている様子だった。先ほどから、視線を上下にせわしなく動かしていたり、首を僅かだが傾けたりしている。
 俺は、殆ど無意識に、

「まだ、何か言いたいことでもあるのか?」

 聞くと、少し間を空けてから、八千代がこちらには顔を向けずに口を開いた。

「あのね? その・・・さっきのを見て、凄いビックリしたの」

「・・・だろうな」

 さっきの光景を俺も思い出し、悔しさと恥ずかしさに死にたくなる。
 八千代もやや顔を暗くしたが、すぐに続けて話す。

「凄い、悲しかったの」

 そう、確かに聞こえた八千代の言葉に、俺は溜息をついた。
 悲しい、ねえ。
 悔しいことは、八千代の目に・・・例えそれらしい状況が整っていたのだとしても、俺が自分より明らかに年下の女を襲うような男に見えていたということだ。

「そりゃあ、悲しかっただろうな・・・」

「ち、違うの。無理矢理とか、そういうことじゃなくて・・・」

 八千代は顔を俺に向け、手を振り全力で否定した。
 そして、また正面を向いて・・・若干戸惑った様子で続ける。

「・・・見たくなかったの。あの光景を」

 俺は心の中で首を傾げた。
 そいつは一体、どういうことだ?

「・・・そりゃ、どういうことだ」

 思ったことをそのまま口に出す。
 八千代は首を傾げながら、

「私も、よくわからない。なんだか、あの瞬間・・・凄い胸が苦しくなって。どうしたらいいかわからなくて。だから、急に佐藤君を・・・」

 最後の方は、心底申し訳なさそうに八千代は呟いた。
 俺は、黙って八千代の話を聞く。

「杏子さんが、音尾さんから食べ物を貰っているのを見た時の感覚に凄い似ていた。でも、それよりも何だか・・・本当に、自分でも分からないくらい気持ち悪かったの」

 八千代は、俺の顔を見ながらこう尋ねてきた。

「佐藤君? 何だと思う? この気持ち」

 その表情は、本当に困っている様子で。

 本当に、どこか苦しそうで。

 俺は、恐ろしいほどに八千代の顔を直視できなくて。

「・・・さあ。やっぱり、無理矢理しているように見えたことの延長だと思うぞ」

 そうぶっきらぼうに言うことしかできなかった。

「え、でも・・・違うの。は、はっきりとはわからないのにおかしなこというけど、それだけはわかるの」

「だから、気のせいだって。少し疲れてるんだよ。休憩室で休んでろ。客もこねえし」

「でも・・・」

「いいから」

 決して語気を荒げないように気をつけながら、俺はそう言い放った。
 八千代は、どこか納得しないようだったが、「・・・わかった」とだけ言って、店の中へと入っていった。


 ・・・前に来た時にはやたら寒く感じたのに、何故か今は全然寒くない。
 風は、相変わらず吹いている。そりゃあもう冷たい風が。なのに寒くない。全然寒くない。
 むしろ、暑い。きっと、あれだな。太陽がやる気を出したんだな。もしかしたらすぐ近くにコートを深くかぶった男がいて、風と脱がせ競争でも始めたのかもしれないな。

 俺は煙草を取り出す。二本まとめて。
 火もまとめて付け、口に含む。そして、体育の授業の深呼吸の如くそれを思い切り吸い込む。
 煙たい。が、吐かない。今はこれぐらい無いととてもとても平静を保てない。
 十秒は煙を溜め込んでいただろう。俺はようやく、その煙を寒空の下に吐き出した。
 さっきとは比べ物にならない量の煙がやはり強風に吹き飛ばされる。

「・・・どう・・・」

 俺はその場で、ゆっくりとしゃがみこんだ。
 前かがみになり、下を向く。湿り気を帯びた冷たい土が随分近くに見える。

「どう、答えろってんだ・・・!!」

 冷風をも全く寄せ付けない顔の熱が一刻も早く引くことを祈って、俺は煙草の煙をもう一度深く吸い込んだ。









 後書き

 へタレエンド(何
 八千代さんは泣かせようかなあと考えたのですが、流石にマンネリだろうと思いこのような感じに仕上げました。天然です。
 小説を書いていると、やはりまだまだ語彙が足りないなあと思います。ここではどういう文章を使えば説明できるのだろうか・・・!と本当に困ります。勉強したいです。
 ところで、もしWORKING!!に最終回が来たとして、この二人の関係も少しはすっきりしているのでしょうかね? 最終回とか話したくもないですが。
 佐藤さんが出てくると何故かギャグは交ざります。うーん。なんでだろー。

 では。次回はWORKING!!以外の何かの作品で書きたいかな。
 エヴァンゲリオンのシンジ×アスカが大好きですが、まだ書いたことがないです。チャレンジしてみようかなあ。




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